見出し画像

【マリンセス解説Part.2】海晶乙女構築概論【遊戯王マスターデュエル】

 はじめましての方ははじめまして、2回目の方はお久しぶりです。ToByと申します。
 本記事では、遊戯王マスターデュエル(以下MD)に於いて2022年2月からマリンセスを使い続けてきた私なりのマリンセス解説を行っていきます。
 大変長らく更新が止まっておりませんでしたが、まさかまさかの第2回です。今回はマリンセスデッキを組む際の基本的な情報、オススメの枚数配分などについてご紹介していきます。


海晶乙女デッキの構築理念

 まずは、「マリンセスを組む時は何を意識するの?」というところについて触れようと思います。とりあえずこの項だけ見てもらえればマリンセスというデッキの強みがわかるはず。
 さて、マリンセスというデッキの強み、それは圧倒的なまでの自由枠の広さ及び、自由枠のカードと初動になるカードでデッキのほとんどが構成されていることです。それぞれについて軽く解説します。

・自由枠の広さ

 マリンセスというテーマの動き、その強みを出来るだけ引き出し、かつテーマカードの枚数を絞り、しかし継戦能力や冗長性を担保する……そのバランスを考えて組んでいくと、メインデッキのテーマカードは17〜19枚に落ち着くというのが個人的な結論です。つまり


残りの21〜23枚は全て自由枠です!


 とはいえ、実際にはテーマの構造上《増殖するG》が非常に重いため、これを止められる《灰流うらら》や《墓穴の指名者》、《抹殺の指名者》及び《抹殺の指名者》で指名するための《増殖するG》辺りまでは最大枚数を採用することになるはずです。
 この辺りを加味すると、自由枠は-9されて12〜14枚と言うべきかも知れません。

 え、Gうらら指名者まで採用した上で12〜14枚?
 はい、Gうらら指名者を採用しても12〜14枠余ります。
 ある程度遊戯王に親しんでいる方ならば、この異常さを理解してもらえるんじゃないかと思います。とにかくバカみたいに自由枠がある。コレがマリンセスの強みのひとつです。

・引いて困るカードの少なさ

 詳しくは各カードの解説の項でお話ししますが、一般に採用されるマリンセステーマカード17〜19枚のうち、12〜13枚は1枚で初動になれます。残りのテーマカードも、1枚を除いて2枚以上の初動に絡めます。
 つまり、初動に関われないテーマカードはたった1枚なんです。

 そして、残りは自由枠です。
 基本的に自由枠には手札誘発や汎用のパワーカードの類が優先して採用されることを考えると、先攻後攻を問わず、初手に引きたくないカードは理論上40枚のデッキ中たった1枚ということになります。
 もちろん、実際には同名被りなどもあるためそう上手くはいきませんが……。

 ともかく、このまとまりの良さ、無駄な部分が少なくどこを引いても一定のパフォーマンスが期待できる、という特性もまたマリンセスの強みです。

 逆に言うならば、この豊富な自由枠と、どこを引いてもいいというデッキの特性を活かせるように自由枠を組めるかどうか、これがマリンセスデッキを組むにあたって大切なポイントになります。
 具体的な考え方は最後に軽く触れることにしますが、簡単にまとめるとすると
・できるだけ環境に合わせた腐りにくいカードを採用する
・手札に引いた際に扱いに困るカードの採用を極力減らす
この辺りを意識して採用カードを選べば、"強いマリンセスデッキ"を組みやすいと思います。

 さて、マリンセスというデッキの強みをご紹介したところで、各カードの話に移ります。

テーマカード紹介ーメインモンスター編ー

・《海晶乙女ブルータン》

 最強の初動です。迷わず3枚。

 採用されるマリンセスカードのほぼ全てが初動に絡めるということについては先述しましたが、更にそのうちの多くのカードは(同種被りを除き)このカードの②効果で捲れた場合にも展開に絡めます。《海晶乙女ブルータン》を含むn枚初動はほぼ全てn+1枚初動に化ける可能性があるわけですね。うーん強い。
 
 ①効果で墓地に落とすマリンセスモンスターの選択は腕の出やすいポイント。慣れてきた方は、是非一度状況ごとの最適な落とし先を考察してみて頂きたいところ。意外と間違ったカードを選んでいることがあります。

 ②効果には他にも、《海晶乙女シーエンジェル》の効果にチェーンすることで、サーチ効果を《灰流うらら》から守る役割もあります。

 とにかくこのカードにアクセスできているかどうかで出力が大きく変わります。初手に引けたらハッピー。

・《海晶乙女シーホース》

 ブルータンの次に強い1枚初動と言っていいでしょう。このカードも特に迷うことなく3枚採用していいです。
 コスト不要、チェーンブロックも作らないSS持ち。やってることはほぼスプライトですね。アド稼ぎも妨害もしないけど。

 自己SS持ち四天王の一角です。《海晶乙女ブルータン》の②効果で捲れて嬉しいカードでもあるため、減らす理由はありません。

 とにかく①のSS効果が優秀で1枚を何度も使い回しがちなこともあり、このカード自身の②効果を有効に使える機会は少なめ。上手く使えた方はマリンセス使いを名乗れるかも……?

・《海晶乙女スプリンガール》

 シーホースと並び、かなり強い初動になれるカード。こちらも3枚確定でいいでしょう。
 墓地コストこそ要求されますが、マリンセスモンスターで唯一場の状態を問わずに自己SSできるカードです。貴重な着地狩り耐性を得られる革命的下級モンスターですね。

 また、自己SS四天王最強候補のカードでもあります。シーホースより優っている点としては、先述の場の状態を問わない点と、なによりそのレベル。ランク4エクシーズに繋ぎやすく、上振れ展開をより強固なものにしてくれます。餅返して。

 ②効果も優秀で、墓地にマリンセスモンスターが落ちて展開が伸びることもありますし、何より《海晶乙女ブルータン》同様、《海晶乙女シーエンジェル》のサーチ効果にチェーンさせることで《灰流うらら》から守ることができます。

・《海晶乙女パスカルス》

 2枚以上の初動が前提ではありますが、簡単に盤面を+1できる優秀な上振れ札。もちろんマリンセス下級なので1枚からでも最低限の動きは担保されています。
 《増殖するG》に弱いのは玉に瑕。ランク4エクシーズなどでカバーしてあげるといいでしょう。

 ①の効果だけ見れば1〜2枚の採用でも十分なカードですが、個人的にこのカード最大の強みは②の墓地効果にこそあります。1ターン目にこのカードを墓地に用意できていると、
・返しのターンに墓地の《海晶乙女の潜逅》を回収し展開を伸ばす
・相手ターンに妨害として使用した《海晶乙女波動》を回収し、こちらの展開に対する妨害を《海晶乙女波動》の耐性付与で弾く
などなど、動きの柔軟性やリソースの保持に非常に役立ちます。

 ①効果で初動の補強を、②効果で継戦能力の補強をしてくれる頼もしいカード。1枚でも動けるようになった今、出来る限り3枚採用したいところです。

・《海晶乙女スリーピーメイデン》

 自己SS四天王の一角。コスト不要で便利ですが、レベル5なため1枚初動になれないほか、マリンセスリンク1の素材にもなれない点には要注意。

 このカードの優秀さは、自己SSはもちろん②の墓地効果。一見アドバンテージに繋がらない装備効果ですが、この効果があるおかげで《海晶乙女の闘海》が用意できていない状況でも《海晶乙女アクア・アルゴノート》の魔法罠無効効果を準備できます。
 これを有効に使うことで、《海晶乙女ブルータン》1枚から装備付き《海晶乙女アクア・アルゴノート》+《海晶乙女波動》という盤面を作ることができます。
 このカードを採用しないと、《海晶乙女アクア・アルゴノート》の代わりに《海晶乙女グレート・バブル・リーフ》が立つことになります。1ドローも決して悪くはありませんが、魔法罠無効という妨害を確定に立てることができる旨味に対しては見劣りする印象。

 繰り返しになりますが1枚初動になれず、《海晶乙女ブルータン》の①でアクセスすればいいため1枚採用が板。

 Part.1の記事でも紹介したのですが、《海晶乙女ブルータン》の①で墓地に送るカードはとりあえずこの娘がオススメ。
 《海晶乙女シーホース》や《海晶乙女スプリンガール》は3枚採用するカードであるため、《海晶乙女ブルータン》の①で墓地に送ったあと②効果で同種を捲ってしまい一手損をするという事態が起こり得ます。
 その点このカードは1枚採用でいいため被りは起こりませんし、《海晶乙女シーホース》《海晶乙女スプリンガール》のどちらが捲れても当たりになります。お得ですね。

・《海晶乙女マンダリン》

 自己SS四天王、最後の1枚。このカードのみ自力で墓地からSS可能というアイデンティティを持ちます。

 墓地からSSできるというのは展開上かなり優秀で、《海晶乙女スプリンガール》の②効果で墓地に落ちたり、《海晶乙女コーラルトライアングル》などの手札コストにしたりしても、条件さえ整えばそのまま自力で盤面を伸ばせます。非常に偉い。

 一方で、1枚初動としては絶妙に使い勝手が悪く、《海晶乙女波動》のサーチをマストとするとどうしてもこのカードのSS条件を満たせません(自己SS後は除外されてしまうため、《海晶乙女コーラルトライアングル》のコストにこのカードを使う場合《海晶乙女波動》のサーチが成立するまで事実上自己SSができない)。そのため、展開としては《海晶乙女パスカルス》などと同じく最弱展開となります。

 自己SS効果こそ優秀なものの、他に効果を持たず、初動としても最低限の性能しかありません。よってこのカードの採用は1枚に絞り、自由枠により多く枚数を充てたいところ。人によっては不採用も視野に入るかも知れません(先述の17〜19というテーマカード枚数のうち、17枚のパターンはこのカードの不採用を想定)。

・その他海晶乙女たち

 正直なところ、真剣に勝ちを目指す構築を組むにあたって、この3枚が採用されることはほぼないと言っていいでしょう。

 《海晶乙女クラウンテイル》は能動的なSS手段のないレベル5の時点で相当苦しい上、効果も受け身でアドバンテージを稼げるわけでもなく、この中でも更に一段苦しい印象。デザインは結構好きなんだけどな……。

 《海晶乙女バシランリマ》はこの中で最も採用圏に近いカードです。理由はふたつ。
 ひとつは、レベルが4。エクシーズ展開に絡めます。偉い。
 もうひとつは、破壊の肩代わり効果。こちら、自分の効果による破壊にも対応しており、また一度の破壊効果であれば複数のモンスターを守れるテキストであるため《激流葬》と相性抜群。《激流葬》及び《海竜神の激昂》と一緒に採用してみても面白いかも。
 しかしながら、このカードも初動としては最低ライン。《激流葬》も2023年10月現在そこまで積極的に採用したいカードでもないという印象のため、採用するとしても若干エンジョイ寄りの構築になるかなあ、と言ったところ。海晶乙女罠カードがもっと粒揃いなら①が腐り果てることもなかったかもしれないのに……。

 最後に《海晶乙女シースター》。マリンセス唯一のレベル2ということで、マリンセスとスプライトを繋ぐことができるカード。現状繋がったところで何が起きるわけでもない。
 一応《海晶乙女シースター》ならではの強みがあり、それは対《エルシャドール・ミドラーシュ》性能。このカードを素材に《海晶乙女ブルースラッグ》をリンク召喚し回収、効果で《海晶乙女ブルースラッグ》の攻撃力を800上げることでちょうど2300に。《エルシャドール・ミドラーシュ》を戦闘破壊しロックを抜けることができます。《エルシャドール・ミドラーシュ》単騎の盤面が流行ったらワンチャンあるかも!?
 いやいや、9期じゃあるまいし。

テーマカード紹介ー魔法編ー

・《海晶乙女闘海》

 マリンセスといえばコレというイメージのある方もいるかも。マリンセスをマリンセスたらしめているカードの1枚でしょう。

 打点の大幅補助、《海晶乙女コーラルアネモネ》を介したリソースの確保、《海晶乙女アクア・アルゴノート》の魔法罠無効の準備などなど、見た目の印象以上に仕事してくれる我らが本拠。

 ②の耐性付与も優秀の一言。詳しくは《海晶乙女クリスタルハート》の項で紹介します。

 このカードが要だと言うのなら、2枚、3枚採用したい、なんて言う人もいるかも知れません。しかしながら、一度《海晶乙女アクア・アルゴノート》に装備をつけてしまえば、後の仕事は打点補助とリソース確保だけという捉え方もできます。耐性付与は《海晶乙女波動》でも可能、というかそちらが主です。
 当然1枚で初動になれるはずもありません。マリンセス下級や《海晶乙女の潜航》と合わせて2枚初動にはなれますが、その点でも《海晶乙女の潜航》単体でも展開に貢献できますが、このカードは《海晶乙女の潜航》が無いと展開には貢献できません。つまり《海晶乙女シーエンジェル》のサーチ効果を妨害された場合に展開を続行できないという点で《海晶乙女の潜航》に一歩遅れます。
 2枚以上引いても意味がないですし、除去への恐れをグッと堪えて採用は1枚にとどめ、自由枠を増やしましょう。

・《海晶乙女の潜逅》

 マリンセス唯一の展開魔法です。《海晶乙女シーエンジェル》のサーチ先にこのカードが追加されたことで、全てのマリンセス下級が1枚初動として振る舞うことが可能になりました。神とさせてください。

 蘇生効果でも十分に強力なカードですが、特筆すべきは《海晶乙女の闘海》が場にある場合のみ使えるリクルート効果でしょう。《海晶乙女ブルータン》以外で唯一、デッキ内の任意のマリンセスモンスターに触れる手段で、このカードの存在で《海晶乙女の闘海》及びそれをサーチしておくプレイングの重要性が更に上がりました。

 《海晶乙女パスカルス》の項で触れたように、場や手札に依存せず墓地から回収できるリソースとしての一面も持ち、墓地に《海晶乙女パスカルス》とこのカードを揃えておけるとリソースに厚みが出ます。

 総じて非常に優秀な上振れ札で、2〜3枚採用すべきでしょう。
 しかし、《海晶乙女シーエンジェル》で必要に応じてサーチできること、同名ターン1がしっかりついていること、当然ながら1枚では初動にならないことを加味すると2枚で止めておくのが無難かもしれません。一応、"マリンセスカード17〜19枚"の19枚パターンはこのカードの3枚目採用を想定しています。

テーマカード紹介ー罠編ー

・《海晶乙女波動》

 マリンセスの最強カードです。このカードがあるからマリンセスは戦える。

 シンプルに、展開さえ通せれば《無限泡影》より緩い条件で手札から発動できる《無限泡影》です。この時点でもう強いですね。オマケとして、効果処理時に自分フィールドにいるモンスター全てに1ターンの完全耐性を付与します。え???
 このオマケ効果、"全て"というテキストもまた強く、耐性付与の対象はマリンセスモンスターに限りません。テーマ外のモンスターを添えて盤面を作った場合、テーマ外モンスターも全て守ります。完全耐性で。最早オマケが本体。
 また、相手の場に効果モンスターが存在する限り自分のターンにも発動が可能で、これによって《原始生命態ニビル》などの強力な妨害を防ぎつつ展開を通す、なんてことにも使えます。やりたい放題か。

 意外と勘違いされがちな点として、このカードの発動条件があります。

 まず、このカードの発動には海晶乙女リンクモンスターが必要ですが、これはリンク1でも構いません。《増殖するG》などで動けないけどこのカードは手札にあるような場合、《海晶乙女ブルースラッグ》を召喚しておくだけでこのカードを妨害に使用できるようになります。ただし、この場合通常の罠カードと同様にあらかじめ伏せておく必要があります。

 次に耐性付与効果。こちらはリンク2以上の海晶乙女モンスターが必要。つまり、《海晶乙女コーラルアネモネ》や《海晶乙女クリスタルハート》で条件を満たせるわけです。この場合もあらかじめ伏せておく必要があるためなかなか活用する機会はありませんが、覚えておくべきでしょう。

 そして、リンク3以上の海晶乙女モンスターがいる場合、みんな大好き手札から発動可能な状態になるわけです。

 普段はリンク3以上のモンスターを維持し、手札に持っておくことで除去などから守るべきカードですが、"リンク3以上の海晶乙女モンスターを用意できないと使えないカードではない"という点は重要ですね。
 
 ここまでこのカードの強さ、便利さを語ってきましたが、一方で
・相手の先攻展開は止められない
・こちらの手札事故や妨害で海晶乙女リンクモンスターを用意できない場合に何もできない
・相手の除去によって海晶乙女リンクモンスターが場にいない状態に陥ると何もできない
・優秀な妨害ではあるものの、汎用手札誘発である《無限泡影》と同種の妨害能力である
など、必ずしも完全無欠のカードではないという話もしなければなりません。
 最強のカードなら3枚採用したいという気持ちもわかりますが、個人的には採用は1枚に留めることを強く推奨します。少し詳しく説明します。

 まず、このカードにはサーチ手段が存在します。後ほどご紹介しますが、《海晶乙女コーラルトライアングル》の効果によって、展開の中でこのカードを確定でサーチすることが可能なのです。わざわざ2枚、3枚と採用し素引きの確率を上げるまでもなく、手札に用意する手段は確立されているわけですね。

 更にこのカード、《海晶乙女パスカルス》で回収可能と紹介した他、《海晶乙女コーラルアネモネ》の②効果、《海晶乙女マーブルドロック》の①効果でも回収し使い回すことが可能。理論上1枚だけで無限に使い続けられるわけです。

 さて、本記事において既に述べた通り、マリンセスというデッキの強みとしてテーマカードと汎用・誘発のみでほぼデッキを構成している、という点があります。これがどういうことかというと、このカードの枚数を減らした場合、その分の枠に採用されるカードもまた相応のカードパワーや妨害能力を持つカードである、ということです。
 しばしば「名称ターン1がついていないから複数枚あればあるだけ妨害になれるため複数枚積むべき」という論が見られますが、実はその2枚目以降の《海晶乙女波動》を不採用にしても妨害数が減るわけではなく、他の手札誘発などの妨害能力を持つ汎用カードと入れ替わるだけでしかない、という場合が大いにあるわけです。
 更に言えば、それらの汎用的なカードたちは基本的に海晶乙女モンスターの存在に発動の可否を左右されず、後攻を引いた場合の働きなどにおいてはこのカードを凌ぐ場合もあるでしょう。

 以上のことから、"増やすメリットに乏しく、減らすデメリットもほぼ無い"ということがわかっていただけたでしょうか。一部の限られた状況を除けば、このカードの採用枚数は1枚でいいと言えると思います。

・その他のテーマ罠

 どれも不採用で問題ないです。
 《海晶乙女波動》の紹介に熱が入りすぎてしまった分、ここで帳尻を合わせていきましょう。

 強いて言うならば《海晶乙女環流》はこの中では見どころがありますが、やはりファンカードの域を出ません。残念ながらMDのランク戦などで使用するデッキにわざわざ入れる理由はないでしょう。

メインデッキまとめ

 メインデッキに採用できるモンスター、魔法、罠のテーマカードについて一通り見てきました。ここまでのカードと推奨採用枚数をまとめてみるとこんな感じ。

《海晶乙女マンダリン》1枚、《海晶乙女の潜逅》2枚の18枚パターン。個人的に最も基本的な枚数配分だと思います。

 残り22枚の自由枠を埋めたいところですが、その前に一度EXデッキの話に移ろうと思います。

テーマカード紹介ーEXモンスター編ー

・《海晶乙女ブルースラッグ》

 マリンセスといえばのリンク1モンスター。
 シンプルな効果ながら、1枚が2枚になるはちゃめちゃリンクモンスターです。もし水属性縛りがなかったら散々悪用されていたことでしょう。
 1枚が2枚になるとは言いますが、このカードだけでは1枚初動になれる下級は限られるため、枠の問題も考えると採用枚数は2枚で十分でしょう。

 次に紹介する《海晶乙女シーエンジェル》にも共通する注意点ですが、2体とも「1ターンに1度しかリンク召喚できない」という制約がついていることには注意。

・《海晶乙女シーエンジェル》

 かつては《海晶乙女の闘海》しかサーチ先が存在せず、「まあオマケみたいなもんだよね」という評価だったのが、《海晶乙女の潜逅》が追加されたことにより超有能リンク1へと化けた可能性のクリオネ。
 《海晶乙女の潜逅》の項でも触れましたが、このカードと《海晶乙女の潜逅》の2枚の存在により全ての下級マリンセスが1枚初動として成立しています。
 《海晶乙女ブルースラッグ》と共にマリンセスを1枚初動テーマたらしめているリンクモンスター。3枚……は積む必要性が薄いため、こちらも2枚採用が妥当でしょう。

 このカードで《海晶乙女の闘海》と《海晶乙女の潜逅》のどちらをサーチするのかの正確な判断はマリンセスのひとつのキモとなるポイントだと思います。基本的には《海晶乙女の潜逅》無しでもリンク4まで届くなら《海晶乙女の闘海》、届かないなら《海晶乙女の潜逅》というところから始めるとわかりやすいんじゃないでしょうか。

・《海晶乙女コーラルアネモネ》

 マリンセスの中核を担う最強リンク2モンスターです。

 ①効果はわかりやすい蘇生効果ですが、条件は攻撃力1500以下であることと水属性であることのみで、マリンセスモンスターじゃなかろうがリンクモンスターだろうが蘇生可能。図ったように(というか恐らくちゃんと意図的に)攻撃力が1500の《海晶乙女コーラルトライアングル》を蘇生できたり、《豪雨の結界像》のような凶悪な効果を持つモンスターを蘇生できたりします。

 ①の効果が注目され、水属性汎用としての出張もままあるこのカードですが、ことマリンセスデッキにおいては②が超強力。この効果こそがマリンセスデッキの根幹を担っていると言っても過言ではないかもしれません。
 効果は単に墓地のマリンセスカードを回収するだけのものですが、条件をよく読むと「モンスターゾーンから」ではなく「フィールドから墓地に送られた場合」。つまり魔法罠ゾーンから墓地に送られても回収効果が起動します。これによって《海晶乙女の闘海》が、テキストにはそんなこと全く書かれていないにも関わらず、盤面を突破された場合に再展開用のリソースを確保することができる1枚に変貌します。
 回収の対象がマリンセスカード指定な点も優秀で、《海晶乙女波動》を回収し使い回したり、《ハーピィの羽根箒》などで同時に破壊された《海晶乙女の闘海》を回収したりできます。だからこそこれらのカードを無理に複数枚採用する必要がなくなる、ということまで考えると、本当にマリンセスを支える大黒柱のような1枚です。
 このカードは3枚欲しい場面もしばしばありますが、やはり枠を考えると2枚に止めておくのがベストかと。もし慣れないうちに不足を感じるようなら、補助輪感覚で3枚目を足してもいいと思います。

・《海晶乙女クリスタルハート》

 単体でテキストを読むと大したことはないカードですが、このカードの真価は《海晶乙女の闘海》と組み合わせることで発揮されます。

おさらい

 《海晶乙女の闘海》の②、このカードを素材に使いEXモンスターゾーンに存在するリンクモンスターは完全耐性を得る。このために採用するモンスターであると言っていいでしょう。ちなみに例によって耐性を付与する先はマリンセスモンスターである必要がありません。後述しますが悪さができます。
 なお、一応このカード単体でもEXモンスターゾーンに存在する限りモンスター効果限定とはいえ完全耐性を持ち、戦闘破壊とダメージを防ぐ効果も持っているため、最悪このカードを立てて1ターン凌ぐ、なんてことも可能。流石に滅多に起こらない事象ではありますが。

 さて、このカードを素材として得る耐性の使い途としてはおおよそ3通りあります。

 ひとつ目はわかりやすく、最終盤面のリンク4モンスターに耐性を付与するというもの。《海晶乙女波動》でも完全耐性を付与できるという話をしましたが、こちらでの耐性付与は
・相手の場に効果モンスターが存在する必要がない
・ターンを跨いで耐性が続く
・《海晶乙女波動》を耐性付与のために使わされることが無くなる
といった利点があります。リンク値が余ったら付与しておいて損はないです。

 ふたつ目は、《海晶乙女コーラルトライアングル》のサーチ効果への妨害を弾くというもの。
 MDでは相手への効果使用確認の演出によって相手の手札に誘発があるかどうかの判別ができる場合があり、「どうも《灰流うらら》や《無限泡影》のようなカードがありそうだが、《海晶乙女コーラルトライアングル》の効果まで温存しているようだ」と気付けることがあります。
 そのようなケースでかつリンク値が5以上稼げる場合、リンク4モンスターではなく《海晶乙女コーラルトライアングル》に耐性を付与することで確実に《海晶乙女波動》をサーチすることができます。これができると玄人っぽさが出る気がします。

 みっつ目、後手捲りで使うというもの。
 例えば《海晶乙女の闘海》+水属性モンスター3体が用意できる場合、

2体でEXモンスターゾーンにこのカードをリンク召喚

このカードともう1体で《海晶乙女コーラルアネモネ》をリンク召喚し、効果でこのカードを蘇生

2体で《世海龍ジーランティス》をリンク召喚

という手順で、相手の妨害を受ける範囲を最小限に止めつつ、完全耐性の《世海龍ジーランティス》による全除外まで繋げることも可能。相手の妨害の種類によっては水属性モンスター3体の着地を許した時点で防ぐ術がない、なんてことも。

 このように《海晶乙女の闘海》とのコンボが強力なカードではありますが、単体では展開に寄与する効果を持たないため1枚採用すれば十分。しかし不採用と1枚採用とではできることの幅が大きく広がるカードです。

・《海晶乙女コーラルトライアングル》

 マリンセスに革命をもたらした最強リンク3モンスター。遊戯王界広しと言えど、このカード以上のクオリティの新規を貰ったテーマはそう多くないと思います。そのくらい強い。

 まずはなんと言っても①効果。水属性モンスターをコストに《海晶乙女波動》をサーチする効果です。実質他に罠カードは存在しないため。サーチ先が最強であるなら、この効果ももちろん最強。先述の耐性付与なども駆使して極力この効果を通しましょう。

 ②効果、初見で全員二度見するでお馴染み。墓地効果で墓地からリンク3相当の水属性リンクモンスターを好きな組み合わせで蘇生します。効果を無効にしたりもしません。そのため《海晶乙女コーラルアネモネ》とリンク1モンスターを蘇生すると、《海晶乙女コーラルアネモネ》の効果でさらにリンク値が伸びます。ここまでの動きのコストは墓地のこのカードを除外するだけ。0枚がなんか凄いことに!
 この②効果があるため、《ドロール&ロックバード》適用下であったり、《灰流うらら》などの存在が予想できるものの耐性付与まで展開が伸びなかったりする場合でも必ずこのカードを経由することを強く、強く推奨します。このカードが墓地にあるか無いかで3ターン目のパワーが天と地ほど変わります。絶対にこのカードを経由する癖をつけてください。

 また、このカードのみターン中一度でも水属性以外のモンスターを特殊召喚していた場合は効果が使えなくなるタイプの制約を持ちます。
 この制約故に、現在のマリンセスに水属性以外のモンスターの採用は敬遠される傾向にあります。しかし、それを引き換えにしてでもお釣りが来るくらいこのカードは最強です。

 最強カードではありますが、2枚使うカードではなく、最悪《海晶乙女グレート・バブル・リーフ》の効果で使い回しも効くため1枚でいいでしょう。これに関しては仮に不足を感じても安易に2枚目を採用したりはせず、1枚で戦えるよう練習した方が近道だと思います。

・《海晶乙女マーブルドロック》

 もしかするとこのモンスター初めて見たという方もいるかもしれない。でも実は使いこなせると非常に優秀。そんないぶし銀なリンク3。

 ①効果はシンプルな回収効果。しかしながらその他の回収手段は《海晶乙女コーラルアネモネ》の墓地効果と、《海晶乙女パスカルス》の魔法罠回収のみで、特にマリンセスモンスターの回収をしたい場合には非常にありがたい同ターン2枚目の回収手段になります。また《海晶乙女コーラルアネモネ》の効果と違い特にアクションを起こす必要がなく、コストの要求もなく回収効果を起動できるため、維持できればできるだけアドバンテージを生み出せるという点で長期戦でも優秀です。

 ②効果はコスト要求ありの戦闘破壊及びダメージ耐性付与。守る対象を選ばず、ダメージも通さないため生存確率がグッと高まる優秀な効果です。【御巫】のような反射ダメージもキッチリ防いでくれる安心感もグッド。
 またこの効果、お互いのモンスターが戦闘破壊されず、自分だけダメージを受けないというちょっと変わった効果をしています。そのため所謂自爆特攻を意図する攻撃に対して相手が一方的にダメージを受けるだけという状態にでき、【ヴァリアンツ】などが安易に召喚してしまった《フォッシルダイナ・パキケファロ》のようなモンスターを飼い殺してロックを掛ける、なんていうテクいプレイングも可能。この仕様は覚えておきたいところです。

 使用感としては3体目のリンク4モンスターに近いものがあります。不採用はあり得ませんが2枚は必要ないカード。

・《海晶乙女アクア・アルゴノート》

 現代マリンセス不動のエースです。待望の妨害効果とピーキーながら除去効果を併せ持つ、リンク4に恥じないスペック。

 ①は攻撃誘導効果。忘れられがちですがいい仕事をします。エクシーズモンスターなどで盤面を強化した場合にも先に打点の低いエクシーズモンスターを攻撃して突破されることを防げますし、③効果で特殊召喚した攻撃力の低いリンクモンスターが的にされることもありません。

 ②はコストが重いものの万能除去。モンスターも魔法罠も対象にできますし、表裏も問いません。自分フィールドの水属性モンスターをバウンスする点も、手札から自力でSSできるマリンセスモンスターを用いることで軽減したり、次のターンの初動を回収しつつ除去を飛ばしたりなど工夫次第で見た目の印象よりは軽いデメリットにできます。

 ③はマリンセスモンスターを装備している必要があるものの、魔法罠を無効にできる妨害効果。基本的に《海晶乙女の闘海》か《海晶乙女スリーピーメイデン》とのコンボで妨害を構えることになるでしょう。
 相手ターンにしか使えないものの魔法罠ならなんでも無効にできるほか、効果を無効にするため《烙印融合》などのような発動を無効にされた場合もう一度発動できるタイプのカードに強いという利点があります。
 欠点としてはやはり自分ターンには使えないこと、無効にはするものの破壊はできないため永続魔法罠やフィールド魔法、装備魔法などは少し苦手な点が挙げられるでしょう。特に永続魔法罠は強力な効果を持つものが増えてきており、他のカードで対処を考える必要があります。

 《海晶乙女の闘海》か《海晶乙女スリーピーメイデン》が用意できるなら迷わずこのカードを召喚していいと言えるパワーカードですが、2枚目が欲しいという場面はそこまで多くなく、いざとなれば各種回収効果で墓地からEXデッキに戻すことも可能であるため、基本的に1枚採用でいいカードでしょう。

・《海晶乙女グレート・バブル・リーフ》

 《海晶乙女アクア・アルゴノート》の追加までエースを張っていたリンク4モンスター。現在は3ターン目以降の打点作成や、《海晶乙女の闘海》《海晶乙女スリーピーメイデン》が用意できない場合の妥協展開として用いられるカードです。

 ①はタイミングが遅いものの持続的にアドバンテージを稼げるドロー効果。自由枠に手札誘発を多く積みやすい性質上1ドローの価値も決して馬鹿にならず、《海晶乙女コーラルトライアングル》でサーチした《海晶乙女波動》と合わせて妥協展開としては十分なパワーを持ちます。
 しかしながら、結局のところランダムな1ドローでしかない上にタイミングも相手ターンに入ってからと遅く、有効なカードが引けたらラッキーレベルの効果。確実に妨害数が増やせる《海晶乙女アクア・アルゴノート》より優先すべき場面は極めて少ないです。

 ②は打点が青天井で上昇する効果。①効果のコストで除外を行うため、基本的に相手ターンは3200以上の攻撃力で構えられるものと思っていいでしょう。
 注意点としては強制効果であること。流行りの【クシャトリラ】などの効果を誘発してしまう点は覚えておく必要があります。

 ③は除外されたマリンセスモンスターを帰還させる効果。マリンセスモンスターであれば他の条件は無く効果を無効にしたりもしないため、先に召喚して除去された《海晶乙女アクア・アルゴノート》をなんらかの手段で除外して帰還させ、《海晶乙女スリーピーメイデン》と合わせて再度妨害を用意するなんてことも可能。

 2枚目のリンク4モンスターという色が濃いカードなので、採用は1枚で十分。とはいえ不採用はあり得ませんね。
 繰り返しになりますが、相手ターンを迎え撃つ最終盤面としては《海晶乙女アクア・アルゴノート》の方が優れるため、あくまでも《海晶乙女アクア・アルゴノート》に装備を用意できない場合の妥協点として理解しましょう。

ちょっとディープなこぼれ話
 最近OCG(紙の遊戯王)のマリンセスデッキで《海晶乙女グレート・バブル・リーフ》を2枚採用し、特定の初手から1ターン目に2体並べる展開を採用した構築が見られます。
 しかしながら、これは2023年10月現在OCG環境に特に展開力の高いデッキが多いなどの環境要因と、二本先取のマッチ戦と呼ばれるルールが主流であるというルール的要因があっての構築であり、現時点でMDの環境、一発勝負のシングル戦ルールにおいてEXデッキの枠を消費して行うほどのメリットは無いと考えています。
 詳しく語るとそれだけで記事が一本書けてしまいかねないので割愛しますが、MDでマリンセスを使うなら《海晶乙女グレート・バブル・リーフ》は1枚で良いと思います。

・《海晶乙女ワンダーハート》

 元祖リンク4モンスターですが、現状性能的には特に採用する必要性のないカードです。アニメではエースとして活躍したカードであるため愛故に使いたいという方もいるかと思いますが、残念ながらカジュアル寄りの構築になるかなぁというところ。本記事はガチ路線なので、ここはバッサリ不採用と断言します。

 ちなみに、かつてMD環境でも明確な理由を以てこのカードが採用されていた時期があったのですが……本筋から離れた昔話になってしまうため、それはまた機会があればということで。

テーマカードまとめ

 これにて全テーマカードを一通り紹介し終えました。各カード採用不採用から推奨枚数までまとめましたので、ここで一旦まとめを。

 基本的にマリンセスで勝ちを狙うなら、テーマカードについてはこの通りの枚数で採用してもらえれば間違いないかなと思います。
 さて、残りは概ね自由枠ですから、「皆さんの手で適切なカードを採用してね」で終わってもいいのかもしれませんが、それも不親切だろうということでテーマ外のカードについても軽く触れていこうと思います。いかんせん枠が豊富すぎる上、候補も膨大なため細かく丁寧にやろうとするとそれだけでn万字使うことになるため、本当に軽くやります。御了承をば。

テーマ外カード紹介ー必須カード編ー

・《増殖するG》、《灰流うらら》、《墓穴の指名者》、《抹殺の指名者》

 流石にお馴染みの面々だと思うので画像省略。
 《増殖するG》及び相手から使われた同カードを弾くことができるカード達です。
 マリンセスは性質上《増殖するG》が非常に重く、逆に手札誘発の採用枚数が多くなりがちな都合で自分の使う《増殖するG》も強いため、これらのカードは最大枚数の採用を確定させてしまっていいでしょう。

・《世海龍ジーランティス》

 汎用リンク4モンスターですが、極めてマリンセスと相性のいい効果を持ちます。

 ②効果ですが、一度除外したモンスターは自分のモンスターも相手のモンスターも全て、自分がそれぞれのフィールドに特殊召喚し直すという処理になっています。これによって何が起こるかと言うと、各種マリンセスカードによって自分に"このターン水属性モンスターしか特殊召喚できない"制約が付いている場合、相手の水属性以外のモンスターは除外されたままになります。あまりにも衝撃的な裁定であるため、聞いたことがある人も少なくないのではないでしょうか。
 つまり、事実上マリンセスでは「水属性以外のモンスターを全て除外する」効果になります。どう考えても強い。

 ③効果もマリンセスには貴重な破壊による除去です。魔法罠も破壊できる上に対象も取らず、2枚以上の除去が可能と至れり尽くせり。マリンセスリンクモンスターも全体的にこのカードと相互リンクしやすいマーカーをしており、相性抜群です。

 総じてあまりにも相性が良く、そもそもこのカード自身のパワーが高いこともあって、このカードの存在がマリンセスを使う理由のひとつになり得ます。マリンセスを組むなら必ず1枚採用してください。

テーマ外カード紹介ー準必須カード編ー

・《スプラッシュ・メイジ》

 水属性、サイバース族、攻撃力1500以下のリンク2モンスター。名前にマリンセスと付いていないだけのマリンセスモンスター。

 リンク値を2から3に増やせる貴重な手段です。《海晶乙女波動》を手札から発動できるようになるリンク3のラインはマリンセスにとって非常に重要であり、そこへの到達を助けてくれるこのカードがあるかないかで妨害への耐性や手数が変わってきます。

 一方でリンク素材がサイバース族限定であったり、効果使用後にサイバース族モンスターしか召喚できなくなるため《世海龍ジーランティス》やランク4エクシーズとの併用が難しい点、マリンセス名称を持たないため《海晶乙女コーラルトライアングル》の素材にならない点などデメリットも多め。

 1枚採用しておくと便利な場面がある反面、使わない試合も多いカード。基本的に1枚採用をオススメしますが、無いなら無いでもデッキは成立します。

・各種ランク4エクシーズモンスター

 主に採用候補に上がるのはこの3枚でしょう。

 《No.4 猛毒刺胞ステルス・クラーゲン》は水属性ランク4の中で最も汎用的な妨害効果を備えるモンスター。
 デメリットはエクシーズ素材を取り除く効果を持たない点で、素材にしたレベル4マリンセスモンスターの再利用に一手間必要になります。
 とはいえ除去効果が不足しがちなマリンセスの事情も相まって、この中でも頭ひとつ抜けて採用しやすいカードでしょう。ほぼ確定枠と言っていいかもしれません。

 《No.41 泥睡魔獣バグースカ》は水属性ではないため相性自体は良くないですが、相手の《増殖するG》に対する止まりどころとして有力なモンスター。
 《海晶乙女パスカルス》+レベル4マリンセスモンスターなどの限られた手札からしか召喚できないため決して優先度が高いモンスターではありませんが、それでも《増殖するG》に対抗しうる貴重な手段であることから十分採用を検討できます。

 《深淵に潜むもの》は水属性の妨害効果持ち。《No.4 猛毒刺胞ステルス・クラーゲン》と比較すると、効果的な相手が限られる代わりにその相手には絶大な拘束力を発揮する0か100かという感覚の効果。
 【ティアラメンツ】が流行した環境では非常に重宝しましたが、2023年10月現在は少々鳴りを潜めており、仮想敵の減少から《No.41 泥睡魔獣バグースカ》と激しい枠争いを繰り広げています。

自由枠について考える

 マリンセスデッキに採用されることの多いカードは概ね紹介し終えたため、以下は残りの自由枠をどう使うかについて、私の考え方を軽く紹介していこうと思います。

・採用カードの判断基準

 おさらいですが、マリンセスの強みは自由枠の多さと引いて困るカードの少なさ。この2点を活かすことを意識して採用カードを選定します。主に考える基準は

1.先攻後攻どちらでも一定の役割を果たせること

2.手札コストを要求されないこと

3.そのカード単体で役割を果たせること

4.上記全てを無視してでも採用していいと思えるだけのパワーを持っているカード

順番に解説します。

1.先攻後攻どちらでも一定の役割を果たせること

 遊戯王には、大まかに分けて先攻で強いデザインのカードと後攻で強いデザインのカード、そして一概にどちらとも言えないカードのみっつが存在します。
 マリンセスデッキでは極力どのカードを引いても困らないと言えるデッキを目指すわけですから、先攻で引いても困る後攻札、後攻で引いても困る先攻札の採用は最小限にとどめることを意識します。

 例えば、「魔法罠を除去できるカードが欲しい」と思ったとします。よく採用されるのは《ハーピィの羽根箒》や《ライトニング・ストーム》などでしょう。これらは後攻で相手の魔法罠を一掃する場面では強力ですが、通常魔法故に先攻で引いた場合は最短でも次の自分のターンが来るまで何も役目を持てないカードになってしまいます。
 マリンセスにおいてはこれを良しとしません。それならば、除去できる枚数は減りますが、速攻魔法であり相手ターンに使用するチャンスがある《コズミック・サイクロン》のようなカードを採用するのが望ましいです。

2.手札コストを要求されないこと

 どのカードを引いても困らないデッキを目指すということは、手札から捨ててもいいカードが少ないということです。
 例えば先程例に挙げた《ハーピィの羽根箒》を先攻で引いていた場合、そのカードには役目がないため手札コストとして捨ててしまっても困りません。しかしマリンセスではそういったカードの採用を最小限にすることを目指すわけですから、必然まだ仕事があるカードを手札コストとして捨てなくてはならないケースが頻発します。これでは構築に一貫性がありません。
 また、マリンセスのテーマカードにも墓地に送られたことで直接仕事を果たせるカードは無く、さらに下級モンスターは全て初動としての役割を持てるためコストに充てたくはありません。

 具体例をひとつ挙げるならば、《サイバネット・マイニング》でしょう。レベル4以下のサイバース族モンスターをサーチできる魔法カードで、サイバース族デッキにはよく採用されるカードです。
 しかし、マリンセスデッキでは採用される下級モンスター13枚が全て最低限の初動になれ、初動として最も強い《海晶乙女ブルータン》も役割のある手札1枚を捨ててまでサーチしたいほどずば抜けて強力というわけではありません。
 《灰流うらら》1枚で止まってしまうリスクも加味すると、マリンセスにおいては積極的に採用する価値の低いカードと言えます。
 (一応、2枚目のマンダリンやバシランリマなどの弱初動を採用することで初動枚数を増やすよりは効果的なこともあります)

3.そのカード単体で役割を果たせること

 言い換えるなら「他のカードとのコンボ前提のカードは極力採用しないこと」です。

 例えば《オメガの裁き》という罠カードがあります。自分の魔法罠ゾーンに存在するモンスターカード1枚とフィールドのカード2枚を破壊するという効果を持っており、《海晶乙女闘海》などの効果で装備カード扱いのマリンセスモンスターを用意できるマリンセスの除去手段として一見好相性です。
 しかし、《オメガの裁き》を発動するには《海晶乙女闘海》を絡めた展開を成立させることが必須で、初動が弱く《海晶乙女闘海》をサーチできなかったり、そもそも初動を引けず動けなかったりした場合、《オメガの裁き》は何の役にも立ちません。

 このように、「〇〇と一緒に引けたら強い」「△△まで展開できれば強い」というようなカードは、仮に強そうに見えても、その条件を達成できない場合に役割を果たせないカードであるという落とし穴がある点には注意が必要です。

4.上記全てを無視してでも採用していいと思えるだけのパワーを持っているカード

 これは具体例があるというよりは、考え方の話です。ここまで3点の条件をしっかり満たすカードだけで40枚のデッキを構築することももちろん可能ですが、時にそれだけでは対処できないデッキが一定の流行をすることもあります。

 あくまでも例えですが、おおよそ10戦して3回当たるデッキタイプがあったとしましょう。そのデッキはマリンセスとしては苦手なデッキタイプで、テーマ内のギミックと汎用性の高いカードのみではどうしても勝率が5割を下回るとします。
 仮にそのデッキに対して発動できれば必ず勝てるカードがあるとしたら? そのカードについては、もし他のデッキタイプへの役割が薄く、更に手札コストを要求されるようなカードであったとしても採用を検討すべきかもしれません。

 もちろん、実際には必ず勝てるなんていう都合のいいカードは存在しませんから、あくまでも例えです。しかし、そのカード単体のパワーや流行っているデッキ、環境でのマリンセスの立ち位置などを加味して、時には少し尖ったカードを採用してみるべき時もあるかもしれない、という話です。
 可能性を頭ごなしに否定せず、様々なカードの採用を検討しよう、という話ですね。私の提案した条件が必ずしも正しいとは言い切れないのですし。

おわりに

 非常に長々と解説してしまいました。まずはここまでお付き合い頂きありがとうございます。そしてお疲れ様でした。

 マリンセスは非常に魅力的なテーマだと思っているのですが、残念なことに環境レベルで使い続け考察しているプレイヤーが非常に少ないテーマでもあります。
 それ故に研究の進みが決して速くなく、また視点も固定されがちです。本記事の内容も多くのリソースが注ぎ込まれ洗練された結果とは言い切れないところがあり、視点が偏っていないとは断言できません。

 しかし、昨年2月からマリンセスを使い続け、直近で2023年9月にもマリンセスを使ってマスター1到達を果たす程度にはマリンセスデッキを使い込んでいる私の書き得る限りを詰め込んだつもりです。参考にして頂けると幸いです。

 意見、質問、感想はもちろん、ミスのご指摘や内容への反論、第3回はこんな内容が読みたい、という提案もお待ちしております。
 
 それでは、第3回でまたお会いしましょう。いつになるやら。

スペシャルサンクス

 本記事を書くにあたって、一部画像の用意をグプタさん(twitter.com/gupta)にご協力いただきました。
 グプタさんは【EXW】というチームに所属し、マスターデュエル界隈を盛り上げるべく活動しています。上記リンクから是非チェックしてください。
 彼は様々なデッキを使いこなすオールラウンダーですが、マリンセスを研究する同士でもあります。しばしばマリンセスについての情報発信もあるため、彼のフォローも是非。

 また、グプタさんの運営する、主にサイバース族テーマ使いの交流を目的とした、【サイバネット・マイニング】というdiscordサーバーがあります。マリンセスをはじめとした各種サイバース族テーマについての質問や雑談、構築相談ができるはずですので気になった方は参加してみてください。
 https://discord.gg/CARw8Ajz


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?