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garçon aux yeux noirs

今、頭をどこかでぶつけてきたかの様に
考えが変わったことに気付いた。

生きるのは辛いのが当然で
なにも救いがないと嘆くばかりの私が
毎日幸せを噛み締めている。

あの黒い瞳の少年との出会いから
私は少しずつ変わっていった。

彼は美しい少年で、
そんな彼に対し私はなんとも言えない
崇高なものを感じ
特別な感情を抱くようになった。

それは恋愛という好意ではなく
母性から生じた祈りの感覚に近い

美しいのは見た目だけ話ではなく
内面から滲み出るなにかが
私を惹きつけ
困っていたら助けたいと思わせるのだ。

黒い瞳の少年との出会いは
私の心を折った老害たちに
奪われ汚された時間を取り戻し
精神を健全にした。

私は人間だったんだ。
家族を思う心さえ取り戻し
版画家であった事も思い出した。

すべて失っていたんだ。
失っていたことを思い出せた。

一年前の地獄めぐりで、
作品を生み出す情熱は
皆無に等しい状態まで
精神的に追い込まれていた。

黒い瞳の少年の
美しさの前では無力であり
美しさに抗う事はできない

黒い瞳の少年は汚泥を啜る苦しみを
忘れさせてくれたのだ。

感謝しかない。

幸せを感じ、安堵の中、眠れるようになった。
ありがとう。

私のは誰かになにかを与えられるようになれるのだろうか。

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