a picture book

賞味期限。食べ物以外にもあるとは知らなかった。

切れたのかもしれない。あっという間だった。

あっという間に始まって、あっという間に終わってるのかもしれない。

ずっと続くと思っていた。

ずっと続くと何の疑いもなく思えたあの頃が懐かしい。

なぜそんなことを思えたのだろう。

たった一言で全てが輝いて見えることがあるなら

たった一言で全てが暗転するのも想像できたはずなのに。


思えば、目の前のことを大事にできない人間が、もっと遠い存在を大事に扱えるなんておこがましかったのかもしれない。

それでも何の疑いもなく信じられたあの日が愛しい

それでも私は身近なありがとうに息を込めることができない。


なんてことはないのだ。普通の人が見たら何も変わってない私の部屋には確かに穴が空いていた。ぽっかりと空いていた。

その穴がバレないのはいいことなのかもしれないけど

笑いながら片頬で誰にも言えない穴を隠し通すのはたいへんだった。

誰が見ても穴のない部屋の穴を抱えながら

笑顔を振りまくのは私をすり減らした


もうここにはいない大切さを、私はいつになったら忘れられるのだろう。

儚さに気付けなかった私は、いつもなら照らされていた

真っ暗な画面に映る自分から目を背けた。

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