短夜や 光陰の矢の 加速して プールなら バイクで行くか 昼下がり ベラ釣の 黄色き丸き 浮き沈む
夏の夕 馬車の通りし 路いずこ 草刈りや 鹿たちの待つ 午後三時 焼茄子の 舌の様なる 重みかな
大の字に なりて消え入る 夏野かな 香水の 名知らず君の 名も知らず 海臨む 空地取り巻く 葎かな
夏の雨 大きな川を 抱きおり 土用波 二年二組の 雑魚寝かな 長崎の 平和な港 花火かな
七月や 嘘つきと行く ピアノバー 一瞬の 速さに賭ける 蜥蜴かな 風通す 西日も通す 網戸かな
あかみどり きいろ濃いまま かき氷 白百合や 会釈すらせず 去りし眉 梅雨晴れや 正夢に会ふ 通学路
ハンカチに 汗吸いとらす 大路かな 舟虫や 誰の合図で 皆駆ける
緑の川 白鷺一羽 移りけり 蚊遣火の にほひ残りし 四畳半 切れ長の 目を伏せ過ぐる 日傘かな
炎天や 南紀の駅の 土埃 土曜日の 正午けだるし 冷やそうめん
夏服や 一人で渡る 大通り 空蝉や 乾いた風の 通り道 入梅や 青い入江の かくれんぼ
キヤンデイの 棒立ち並ぶ 金魚墓地 梅雨明けや 静かな街に 渡る橋
首傾げ 何たくらむや 鴉の子 雨の日の 噴水止める 人もなく 夏の雨 倉庫の横を 渡し船
虹立つや 仕事帰りの 石畳 サルビアや 四十九日の 馬鹿騒ぎ 入梅や 書架を見上ぐる 細きあご
夏の山 目覚まし止めて 寝る正午 ただ一つ 冷蔵庫の隅 麦茶かな 弟の 竿新しく 山女釣り
憂きことの サラサラ流れ 走り梅雨 色恋の なきよき広き ビアホール 栗の花 月曜もよき 一日よ
終わらない 話の途中 若楓 すれちがふ 夕の香りの 浴衣かな 夕凪や 誰も滑らぬ 滑り台