見出し画像

2023年 読んでよかった本

今年は多くの本を読んだので、そのなかで特に印象に残ったり役に立ったりした本を感想とともにあげてみます。


理工書・技術書・ビジネス書など

工学系のための最適設計法 / 北山哲士

最適設計の本です。最適設計とは、主に形状や構造に関する設計問題を最適化問題として定式化して解くことで解を得る手法のことです。この本の前半は最適設計に必要な最適化理論に関する基礎知識の解説、後半はいくつかの実問題を通じた最適設計の解説となっています。これまでにもいくつかの最適設計、トポロジー最適化に関する書籍が存在していましたが、この本は実例が多く実践的で良かったです。

アジャイルに困ったときに読む本 / 渡会健

この本で好きなところは、必ずしもすべてのプロジェクトにアジャイルを適用すべきではないと言っているところです。アジャイル関連の本や記事のなかには、すべてのプロジェクトはアジャイルで進めるべき!などといった強い主張がみられます。この本では必ずしもすべてのプロジェクトにアジャイルを適用する必要はなく、差分開発やバージョンアップのような仕様が固まっており、変更の可能性が低いプロジェクトではウォーターフォール的に一気に進めたほうが良い、といった趣旨のことが述べられています。この点が気に入ったのであげました。もちろん、アジャイルに関する内容も良かったです。

正しい検図 / 中山聡史

メカ系の検図について、開発フェーズごと、実施者ごとに役割を明確にして解説しています。成果物のチェックといえばコードレビュー関連の書籍はいくつかありますが、物理的な大きさを持つものの検図の本はあまり見たことがなかった(探したことがなかった)ので、なかなか興味深かったです。電気系の検図の本があれば読みたいですね。

システムを作らせる技術 / 白川克, 濵本佳史

副題に"エンジニアではないあなたへ"とありますが、エンジニアでも役に立ちます。この本では特に、社内で使う大きなITシステムを外部のITベンダーに発注して構築することをテーマとして、その円滑な進め方を順番に説明しています。最近は製品開発を外部に依頼することも多くなり、その進め方にも応用できると思いました。また、社内の有力者をどのようにその気にさせるかも使えそうです。

「技術書」の読書術 / IPUSIRON, 増井敏克

この本は、タイトル以上の内容が詰まっています。「読書術」もいくつか提示されており、自分にあった方法を見つけられるかもしれません。私はこの本を読むまでは、技術書や理工書は極力隅々まで理解する精読をしたほうが良いと思っており、多くても年に3冊程度をこなすくらいでした。この本を読んで、理工書や技術書へ軽く向き合えるようになり、さくさくと読めるようになりました。来年は紹介されている読書法のひとつである一点突破読書法を試してみようと思い、本を選定しています。

文芸など

むらさきのスカートの女 / 今村夏子

芥川賞受賞作品で、今年やっと読むことができました。今村夏子さんの作品は他も含めてかなり平易な文体で書かれていますが、話の組み立て方というか進み方というか視点というか、あとからそういうことかと思わせる瞬間があります。この本はその構図を楽しむ作品だと感じました。

手のひらの京 / 綿矢りさ

綿矢版細雪とも呼ばれるこの作品。私はずっと関東に住んでいるので本当にそうなのかはわかりませんが、きっとこれが京都の雰囲気なんだろうと思います。綿矢りささんの作品の好きなところは心理描写・心情描写ですね。おそらくまだ名前がついていない、文字にされていない心情や様子の描写を読みたくてページをめくっている感があります。文体も好きです。

道化師の蝶 / 円城塔

これも芥川賞受賞作品です。大学のときに買っていままで読まずにいましたが、ついに今年読みました。最初の印象は難しい。少なくとも読んでいる最中は?が浮かび、最後の章あたりで視界がひらけてきた感覚です。これも視点や構図がおもしろい作品です。全体を通してあることの話をしてますが、各章で視点が切り替わります。新しい作品だと思います。

一私小説書きの日乗 / 西村賢太

なにかで紹介されていたかなにかで知ったこの作品。毎日の様子が淡々と書かれている。印象としては、すぐ喧嘩する人だな、夜中にそんなに食べることができるのか、といったところ。私が気に入ったのは、芥川賞受賞後の生活の様子、とくに受賞による変化の様子がわかるところです。きっと大きく変わったのは執筆依頼やインタビュー、テレビ出演が増えたことのようですが、本人視点でどのような生活を送っていたのかがわかるのがおもしろいです。

刺さる小説の技術 / 三宅香帆

自分の中では、技術書の読み方が『「技術書」の読書術』であれば、こちらは小説の読み方に相当すると思っています。小説に登場するよくあるシーンを様々な作品を例にあげて解説しています。タイトルこそ書き手側へ向けた内容に見えますが、読む側への内容に感じました。なるほど、小説はこういう視点で読むと面白いかも!といった具合に、読み方が変わるかもしれません。

以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?