【物語】部屋にて #1

 「…1812…1813…1814…1815…」
 佐々木が甘夏の果肉を数える声が部屋に響く。真っ白い部屋だ。窓はなく、あるのはテーブルとコンビニおにぎりのごみ(PULL2と書かれているほう)のみである。
 俺はおもむろにAirPods Proの音が出る部分のわずかなくぼみにバニラエッセンスを注ぎ、そこにいたおじいさんの耳にはめ、関ジャニ∞の『無責任ヒーロー』を流した。

『オイラ伝説の無責任ヒーロー』

 その歌詞を聞いた途端、おじいさんは涙を流しながら消火器を自分の口の中に噴射し、絶命した。その翌日、ワクワクさんの家の軒先でハトが9個の巣を作ったという。

 「…2756…2757…2758…2759…」
 27歳の俺は、泥団子をピカピカにすることにハマっていた。
 この部屋に閉じ込められて何日がたっただろうか、俺は製作途中だった泥団子のことばかりが気になってしょうがなかった。HIKAKINに依頼され作っていたその泥団子は今までで一番の出来だった。俺の泥団子が納品されないHIKAKIN TVはどうなっているだろうか。
 そもそも、俺はなぜこの部屋に閉じ込められたのか。何度思い出そうとしても記憶がない。しかし、閉じ込められる前の佐々木と俺の行動に共通する部分がある。それは、”ちくわをみじん切りにしていた”という点だ。
 佐々木とは面識はなかった。この部屋で俺が目を覚ました時、彼はすでに甘夏の果肉を数えていた。俺が閉じ込められた原因を探ろうと、彼と話す中で分かったことだ。
 考えてもきりがない、すっげー眠くなったので、俺はゆっくりと目を閉じた。

続く

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