悲しくてやりきれない
おおたか静流さんが逝ってしまった。
亡くなったのは9月5日の朝だったという。わたしが知ったのは翌6日の朝、ツイッターで。公式発表ではない。音楽関係者の追悼のつぶやきが少しずつ拡散されていた。
動揺のあまり2日ほど何もできず静流さんのCDを聴きながら泣いてばかりいた。いや、何もできずというのは違う。ちゃんと仕事にも行ったし、ご飯も食べるし、友人や家族とは普通に話した。でも一人になると泣いた。泣き過ぎて頭が痛い。目も腫れている。
静流さんとの初共演は2017年2月下北沢のbarレディージェーンの大木雄高さん企画の「八月のフロッタージュ」という音楽舞台で。本番の前日、初めて顔を合わせてリハーサルをした。ピアノと歌のASUくんも一緒だった。
静流さんの歌を目の前で聞いて、びっくりした。なんと言ったらいいのか。空気がびりびり震えるようで、うまく言えないけどCDと同じ声だと思った。
一方わたしの歌を聞いて静流さんの目はキラリン!と光った。
「ミックスね」
ミックスの意味はわからなかったけど、静流さんが嬉しそうだったのでつられて「はい」と言った。あとでこっそり調べて、ミックスボイスのことを知る。裏声と地声を混ぜた声の意味だ。わたしってミックスボイスなのか。そう思って聞くと静流さんもASUくんもミックスボイスの達人である。
出会ってから5年ほどしか経っていないけれどそれなりに濃いお付き合いをさせてもらった。「八月のフロッタージュ」は再演をし、スクールMARIKOのゲストで松江にも来てもらった。互いのライブに飛び入りをしたこともあった。プライベートではご飯を食べに行ったり、友達のライブを聴きに行ったりした。レーベルを立ち上げた時のアルバムには帯のコメントをいただいた。
一番尊敬して信頼している歌手だった。
大きなステージでも小さな場所でも変わらず毎日歌っている人だった。働き過ぎなんじゃないですかと言ったら、毎日歌わないと緊張するのと答えた。本当はスタジオ育ちだからステージより、録音仕事のほうが安心するそうだ。なにしろ、静流さんはCM曲を600曲くらい歌っているんだからな!
2018年に「にほんごであそぼ」の収録があるから出雲で前泊するよと連絡をくれた。居酒屋でちょこっと会いましょうと約束して、マリノと出かけた。静流さんは日本酒を飲んだ。
帰り道、星が綺麗だった。静流さんが何か歌おうよって言って、三人でゆっくり歩きながら「おぼろ月夜」を歌った。静流さんのハモリは完璧でやっぱりCDと同じ声だった。
どうぞ安らかに。
一週間に一度くらいの頻度で記事をアップできればと思っています。どうぞよろしくお願いします。