高松にて
高松にいる。友人の和田靜香さんがここに2週間滞在すると聞いて会いに来た。和田さんは9月に出した「時給はいつも最低賃金これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた」(左右社)が発売前から重版の連続、売れに売れている時の人。本の中で和田さんと対話を重ねている小川淳也さんの香川一区での衆議院選挙を取材して選挙日記を書くことになったとのこと。
高松と聞いてわたしの旅心がむむっと反応した。ここへは7年間毎年ライブのために来ていたからだ。最後のライブは2019年。なんとなく食い気味に「じゃ会いに行くねー」と応えてしまった。それから、あわただしくホテルを予約したりして特急やくもと快速マリンライナーを乗り継いで高松までやってきた。
市内に到着したのは5時ごろ。久しぶりの電車の長旅に疲れて、そのままホテルに入ってゆっくりしようかなと思っていたら和田さんから連絡入る。瓦町の駅のところで、小川淳也さんが演説をするから見にこないかと。今日は応援に蓮舫さんもくるよって。5時半からだよって。なんか絶妙すぎるタイミングだ。急いでホテルにチェックインして、部屋に荷物を投げ出して瓦町の駅へ向かった。
やくもに乗っている間も、いや、こちらに来てからも、そして、瓦町の駅前で小川淳也さんの演説を聞いているときも、不思議な感覚だった。何やってるんだろう、わたしは。meは一体何しに高松へ?
サインをする和田さん。
和田靜香さんとはちょうどわたしが事務所をやめてフリーランスになった頃に知り合ったので、かれこれ六年くらいのお付き合いだが、最初は相撲観戦の仲間だった。相撲について対談したり、音楽ライターとしてはCDのレビューを書いてもらったこともある。わたしが上京する折に時々お茶したり、ご飯を食べたりする仲でもある。
和田さんは伝える人だ。しずか、という名前なのに静かじゃない。いつもわーわーわーわー声をあげている。自分のことだけじゃない。間違ったことは許さない。世の中で弾かれる人を見捨てない。本当に優しい人だ。
和田さんはこの一年はこの本にかかりきりだった。この本を書くために彼女がどれだけ苦労して、勉強したかを知っている。巻末の参考文献の並びを見てびびる。これ全部読んだんだなあって。あとで聞いたら3ヶ月くらいで読んだと言っていた。えらいことだ。わたしなら知恵熱が出るだろう。
とにかく、そんなにまでがんばって書いた本が売れて、わたしはなんだか自分のことみたいに嬉しい。和田さんに会ってねぎらいたかった。ほんとにがんばったねって。今は会いたいときに会いたい人に会いに行かなきゃ、というわけでここまで来てよかった。うどんや寿司を食べながらつもる話もできた。
島根でも上映がありました。
小川淳也さんの映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」を見て、小川さんてすごい人だと思った。今時こんな人がいるのだなあと思うくらい純で、まっすぐな人だった。東大、官僚から政治家へってエリート中のエリートですよね。対話の初め「何がわからないかもわかりません」と手ぶらで出かけて言った和田さんに対する小川さんの対応の仕方も素晴らしい。
でも、そんなすごいエリートの小川さんは実は和田さんに会えてよかったと思う。和田さんと対話して、和田さんがくぐり抜けてきた経験に触れることができてよかったんじゃないかなって思う。決してあの本は、何かを知っている人が、知らない人に教える本ではない。どちらも対等で、互いの知識を共有して対話をする本だ。政治って多分そういうことなんだろうな。なんて、わたしがえらそうに言うことでもないか。すみません。とにかく、小川淳也ってどんな人なんだろう、そんな好奇心で高松までやってきた。
和田さんの本の中で、特に印象的だったのはP217。小川さんが「社会が変わるときには初めに詩(うた)来たるって言うんだってね」というくだり。初めに詩がきて、それから音楽と芸術がきて、その後に設計と技術がきて、最後に建物が立つって建築家の専門家が言っていたというところ。
この頃わたしのまわりでは「詩」という言葉が飛び交っている。今はやっぱり世界が変わる時なんだろうな。
一週間に一度くらいの頻度で記事をアップできればと思っています。どうぞよろしくお願いします。