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ともちゃんと5つの種②

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突然のお父さんの「死」

ともちゃんは一晩にして
突然、一人ぼっちになってしまいました。

 
ともちゃんは悲しくて、悲しくて
何日も、何日も泣き続けました。

 
大好きだったお父さんが突然いなくなり
ともちゃんのお手伝いは
もう必要なくなってしまいました。

いつもお父さんが言ってくれた
「ありがとうなぁ」という言葉は
もう聞くことができなくなってしまいました。

お父さんのお仕事は
ともちゃんが一人で続けるには
あまりにも荷が重く

お父さんがいなくなったことで
そのまま終わりを告げました。

ずっと、ずっと、
永く続くと思っていたものは
一晩にしてあっけなく終わってしまい

 
ともちゃんは
「何もかもが、なくなってしまった…」と
そう思ったのです。

 
  
その後、ともちゃんは
お父さんと暮らした小さな家で
一人で過ごすことになりました。
 
 
朝も昼も夜も
ともちゃんは一人で過ごしました

 
ともちゃんが
朝に「おはよう」と言っても
夜に「おやすみ」と言っても
返ってくる返事はありません

毎日、一人分の食事を作り
一人で静かに食べました
もう「あったかいね、おいしいね」
という会話もありません

 
春になり、満開に咲く桜並木の中を
一人で歩きました。
何度も、何度も通った思い出の道を
一人でトボトボと歩き続けました。

毎年、楽しみにしていた春だったはずなのに
ともちゃんの心は暗く沈んでいました。

暑い夏の夜には
清らかな川にポワポワと幻想的な光を放ち
まるで天の川の中にいるかと思うほどに舞う蛍を
一人で眺めました。

「キレイ」と言っていたはずの蛍の光は
今のともちゃんには悲しげな光に見えました

秋が訪れた時には
鮮やかな黄色や赤に色付いていく森を見ながら
これから寒い、寒い冬がやってくるんだと
一人で冬支度をしました。

一枚、また一枚と
色付いた葉がハラハラと落ち
木々がどんどん細くなっていくのと一緒に
ともちゃんの心も細く、細くなっていきました。

そうして迎えた冬
シンシンと音もなく雪が舞い散る夜に
ともちゃんは一人毛布にうずくまって
暖炉の火をいつまでも、いつまでも見つめていました。

パチパチと音を立てながら燃える火を見つめながら、
ともちゃんは
 
「一人ぼっちは、さみしいよぉ…」

 
そう言って目から涙をポロポロと流しました。

 
前は色鮮やかに見えていたはずの季節や風景は
今のともちゃんには色の無い
モノクロの世界に見えていました。

 
「一人ぼっちは、さみしい
 一人ぼっちは、悲しい
 一人ぼっちは、辛い……」

 
ともちゃんの心の中は日に日に
「さみしい」という思いがいっぱいになっていきました。

そんなさみしさを抱えたまま
毎日を過ごしていたある日の夜

ともちゃんはぼんやりと
夜空を眺めていました。

それは、あの時のようにとても静かな夜で
雲一つない夜空に大きな満月だけがぽっかりと浮かび
光り輝いていました。

 
「お父さん、
 一人ぼっちは、さみしいよぉ
 もう、一人ぼっちは、いやだよぉ
 お友達が……一緒にいてくれるお友達が、
 ほしいよぉ……… 」

 
そう、ともちゃんがポツリと言った時
夜空にスッと一筋の光が流れました。

 
 
「あ…………」
 
 

ともちゃんはすぐにそれが何なのかが分かりました。

その後も、また夜空に一筋の光が流れ
その後も、その後も
夜空にいくつもの光がヒューイ、ヒューイと音を立てて
まっすぐな線を描いて流れました。

それを見たともちゃんは

胸の前で力強く両手を合わせ
両方のまぶたをギュッと閉じ
そして、大きな声で叫んだのです。

 
「お願いします!
 私に、お友達をください!!
 もう、一人ぼっちはイヤ!!
 
 私に、お友達をください!!!!!」

 
ともちゃんは流れ星に向かって
何度も、何度も、必死に祈りました。

夜空にはいつしかたくさんの星が流れ出し
それは光の束となって空全体を埋め尽くし

そして、その光の束は大きな光の玉となって
ともちゃんの目の前に現れました。

両目をつむっていたともちゃんも
目の前のまばゆい光に気付き
そっと目を開きました。

 
そこには
キラキラとした星を集めたような
まぶしくも、暖かな色の光があり
そして、その中にはうっすらと見える
人の姿がありました。

 
ともちゃんが驚いた顔をしてその人を見つめていると
その光に包まれた人がこう言いました。

 
 
「お前の願いを叶えにきたよ…」と

 
 
つづく
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