severing
この人は、本当は、心の底では、私を憎んでいるに違いない
という思いが、私から離れてくれない。
すべての人に対して、程度の差はあれ、こんな思いを抱えている。
この思いが私を解き放ってくれない。
どんな人が目の前に現れようと、その人がどれだけ私を愛してくれようと、
私はきっと、心から信じることができない。
信じることができないのは私の方。
その人の言葉に、その奥に隠された意味に、
私に見せない表情に、笑顔の奥に秘められた意図に、
私はいつも、それを探している。
私を傷つけるための刃。
私を裏切る悪意。
心のない、嘘の、見せかけの愛。
一転して憎しみに変わる優しさ。
そんなものが、いつかきっと、現れるのだと、そして私を傷つけるのだと、心の底で、信じている。
どんなに愛されたくても、
どんなに愛したくても、
信じて、委ね、安心したくても、
この人は絶対にどこへも行かないと、信じて、毎日を楽しく穏やかに生きたいと切望しても、
この思いが私の中から出ていかない限り、私は幸せを感じることはできないのだろう。
子供の頃から、本当は私のことを嫌いなのに違いない、と思いながら生きてきた。
私を誰よりも愛するべきだった人物。
本当は私のことが嫌いに違いない。
話していても、冗談を言い合っていても、いつもその思いは隣り合わせにあった。
きっとあの人はその通りだったのだろう。
あの人は、本当は、心の底では、私を憎んでいたのだろう。
誰も愛することのできない人だから。
すべての人を憎んでいる人だからーー自分の母親も。姉弟も。その子供たちも。夫も。自分の子供たちも。その子供も。彼女に反するすべての人を。そしておそらく、彼女自身をーー
連鎖を私で止めるのだと心に誓った子供の頃。
まだ解き放たれていないものがある。
次から次へと現れる。
大敵は私の心。私が知らぬ間に信じてきたこと。自分でも知らぬ間に、それが真実だと思い込んできたこと。
どうか私を解き放ってください。
心から信じられるように。
私にとって刃のように感じるものを見たとしても、それがすべてじゃないと思えるように。
そっちがほんの一部分の方で、他のほとんどの部分は違うのだと。
誰にだってそういう部分はあるのだと。
だからといって私を憎んでいるわけではないのだと。
暖かい春の日の、花の咲き乱れる緑の丘のような、それだけの世界なんて存在しないのだと。
誰もが傷を抱えていて、
その傷を守るために誰かを傷つける。
地球はそんな場所なのだと。
だから強くあれ。
人の心の痛みを私に向けられても、弱々とその刃を体にめり込ませないように。
それはあなたの傷で、私を脅かすことはできないと、すっくと立ったまま、強くいられるように。
人は、皆ひとり。
心の中に強さを持てば、誰が私に対してどんなことを思おうが、たとえ内心では憎んでいようが、影響されはしない。
その憎しみは、その人自身の傷であり、その人自身の痛みであり、苦しみであり、
私の価値を奪うものではない。
きっとこの人は、心の底では、私を嫌っているに違いない、
と思うことは、これからもあるだろう。
そしてそれは、おそらく、事実だろう。
世の中で出会ううちの、半分はそういう人かもしれない。
だけど、その人たちの抱える憎しみに、私は自分の価値を決めさせない。
世の中の半分の人は、私を憎みはしないと信じる。
私は、私を嫌う人のことばかりを見てきた。
私を心の底では憎む人ばかりを見てきた。
私の心の傷が、彼らの心の傷と呼び合っていた。
連鎖を断ち切る。
私は母から受け継いだ憎しみの連鎖を断ち切る。
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