見出し画像

逡巡のための風景07/せつない気持ちをどうすれば

展覧会のハイライトは搬入期間に終わってしまう。
2017年に福知山で企画した展覧会で、私はそのことに気づいてしまった。
「展示期間中ずっと搬入し続ければいいんですよ」と丸山さんに言われたのが1年前。そっかあ、そんな単純なことだったのかあ。

「山山アートセンターをつくる」Yama Yama Art Center In Progressには完成がない。私やそのほかいろんな人がただ生きていて、人生の途中にいて、歩いている途中に、周囲の人たちとの関係の中にアートの場が立ち上が(ったり立ち上がらなかったりす)る。

さて、そうは言っても一応の「搬入期間」が終わった。山奥と京都芸術センターを往復した4日間。京都芸術センターを訪れるいろんな人とのやりとりがあり、さまざまなドラマがあった。途中福知山では子どもたちの保育参観日もありつつ(保護者会を早く終わらせて京都に向かいたい一心で手を挙げて役員を引き受けてしまったりもしつつ)、ひたすら手をペンキだらけにして1階から3階まで走り回る。最終日ようやく作業も追い込みという17:30、夫が保育園に子どもたちを迎えに行ってくれる。そろそろ片付けて終電に乗らなきゃという22:00、私のスマホは「そろそろ就寝時間です」と鳴る。現実が私を呼んでいる・・・。山奥と京都芸術センターがいろんな意味で遠すぎて、「ずっと搬入し続けるの無理じゃん!」って思う。

「展示期間」が始まり、昨日・今日は会場から遠く離れた自宅に待機しています。昨日は朝から車のエンジンがかからず、おとなりのIさんSさん夫妻に相当ご迷惑をおかけしながら子どもたちを保育園に送りJAFを呼び夫に電話し車の販売店に行き・・・していたら一日終わりました。(けっきょくカギのせいだったの。カギって苦手なのよ。カギって。)今日はなんだかちょっと春っぽい気候で、でも薪ストーブとコタツのW仕様でぬくぬくぐったり放心している私は今、ここに何を記すべき/記さないべきなのかとまどっている。とまどい続けて35年、今日もまたとまどってる、ってだけでふつうですが。

「アートってなんだっけ」って感じの今がここにあり、「アートをめがけて」たくさんの人が往来する京都芸術センターがあり、ふたつの世界のギャップに胸がしめつけられてしまう。

今回の展示のテーマの根底には「距離と温度差」がある。
「距離と温度差」。
山奥と京都との、暮らしとアートとの、そして、自分と他者との。

私よりひと足先に現地入りしてひと足先に丹後に帰っていった大道具担当の丸山さん。完璧なタイミングで私をホッとさせる言葉をかけてくれたキュレーターの青木さんと芸術センタースタッフの平野さん(自分よりきちんとした人が自分より年下だとしても何も驚くことがないくらい、自分は歳をとりつつあるんだな、と、しみじみと思う)。綾部から駆けつけてくれた陶芸家の球体アイ家族、信楽焼のたぬき夫妻、せんちゃんが段ボールでつくったたくさんのサメ。ベビーカーを押してやって来てくれた美術家の笠間弥路さんと子どもたち。自転車に乗ってひゅるりとやって来てそこらじゅうにひょうたんを設置してくれた、スズキキヨシ師匠。入れ替わり立ち替わりひたすら布を割いて三つ編みしていってくれた、名前すら知らなかったり知っていたりのボランティアの皆さん。

愛しい愛しい皆さんが、束の間奇跡のように集まり、そして散り散りになっていく。ガッチリ絆メンバーFOREVERでは決してないのだ、入れ替わり立ち替わり、それぞれ暮らしのリズムの中で出たり入ったりする、行ったり来たりする、それが大事なのだ。大事なのだと頭でわかりつつ、「距離と温度差」を思うとせつなくて胸がしめつけられる。勝手な話だね。

>>>

展覧会『逡巡のための風景』

http://www.kac.or.jp/events/24956/

2019年2月19日 (火) - 2019年3月31日 (日) 10:00-20:00
会場:京都芸術センター 
出展:イシワタマリ、大見新村プロジェクト、八幡亜樹
ゲストキュレーター:青木彬
特別企画ー Swing観光案内所「他人ごと面してんじゃねーよ」

>>>

『山山アートセンターをつくる』
絵・文・監修:イシワタマリ
大道具:丸山桂/ たぬき夫妻の修理:球体アイ/ ひょうたん師匠:スズキキヨシ

Special Thanks to
秋田千利、由良匠、岸本まひろ、水田ウタコ、水田ハル、水田アサ、平田一季、笠間弥路、きょうじょうむすひ、青木彬、平野春菜、「ひょうたん王国みたけ」地区在住のAさん・Hさん、今は老人ホームにいるNさんとご家族、宮津の白石さん、京丹後のKさん、福知山のKさん、府中こども園の皆さん、マ・ルートの皆さん、インドCOVEDAの皆さん、インドDeer Park Instituteの皆さん、京都芸術センターボランティアの皆さん

>>>

会期中、福知山新町商店街シンマチサイト(元さいとう家具店)でも関連企画がございます。

『山山アートセンターをつくる実験ー福知山まちなか編ー』
2019年3月1日(金) - 17日 (日) 11:00-18:00

山山アートセンターは、世界中の「山」をたよりに、 さまざまな人が力を持ち寄ってとにかく生きようとするプロジェクトです。野望は、アートに軸足を置きつつ「よくよく考えてみると実は福祉」というさりげない施設をつくること。
「シンマチサイト」としてシャッターをふたたび開いた「元さいとう家具店(福知山新町商店街)」が、このたび期間限定「仮設・山山アートセンター」となります。

会場:福知山新町商店街シンマチサイト
(元さいとう家具店/京都府福知山市下新3/福知山駅より徒歩13分)
主催:シンマチサイト実行委員会/助成:京都府

諸々のスケジュールはこちらから!!!!!

↓↓↓

https://calendar.google.com/calendar/embed?src=yamayama.art%40gmail.com&ctz=Asia%2FTokyo



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?