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JAPAN⇄CANADA 1-8

バレエにご挨拶に行った夜は、幼馴染のあっぴーがいたことでとても心が救われました。

あっぴーは私が物心がつく前からの幼馴染で、お姉さんのような存在です。あっぴーには妹がいて、その妹ちーちゃんも私にとって大切なお姉さんです。2人の母親と私の両親が職場が同じで友達になり、そこから家族ぐるみでの付き合いが始まったそうです。しかも、私の両親の結婚パーティーを計画したのがあっぴーとちーちゃんの母親なんだとか。家も近所でいつもお互いの家を行き来するような関係でした。小さい頃、お風呂に一緒に入った写真も残っているほどです。あっぴーとちーちゃんは小さい頃からバレエを習っていました。3歳の時なのでほとんど覚えていませんが、発表会を見に行って習いたいと思った私は体験レッスンに行き、そして2人の後を追うように同じバレエスタジオに通いはじめたのです。中学校に上がるとクラスも上がり、電車でレッスンに通うようになりました。その時も、3人で一緒に乗ってスタジオに通っていました。

それぞれが高校や大学に進学しても、お家に遊びにいけば夜ご飯を一緒に食べるような生活をずっと送っていました。ただ、あっぴーが一人暮らしを始めて、ちーちゃんが大学のために長崎に引っ越し、私も部活で家にいる時間が減ったので次第に会う機会も減っていきました。重ねて、引っ越しのこともあったので、2人や2人の親に会ってもなんとなく複雑な気持ちで過ごすようになっていきました。この時私は、こうやって人間は疎遠になっていくんだなぁと、どことなく思うようになっていました。

そんな時にやってきたのが、あのバレエのご挨拶での出来事です。久しぶりに会ってじっくりあっぴーと話して、とっても心が落ち着きました。このまま一緒にいたいって気持ちが込み上げたのを覚えています。

ここから私の記憶が若干曖昧です。この日の夜だったと思うのですが、近所のこれまた幼馴染家族が近所の人を呼んでさよなら(またね)バーベキューパーティーを開いたのです。私はあまり気が向きませんでした。まみーからは引っ越しのことを気にせずに楽しみなさいと言われてはいましたが、やっぱり行きたくない気持ちの方が勝っていました。私がバレエのご挨拶から帰ってきた時にはもうバーベキューは始まっていて家族みんなお呼ばれされたお家に向かっていました。私もそこのおうちの前でおろしてもらって、バーベキューに参加する予定でした。が、私を見たみんなが一斉に声をかけてくれたのが逆にプレッシャーと不安になって急に泣きそうになりました。必死に涙を堪えてまみーを見つけ、荷物を家に持って行くのに家の鍵を借りました。とりあえずまみーも私と一緒に家に帰り、バーベキューに来るかどうかの最終確認を取りあいましたが、とうとう我慢の限界がきて涙が出てきてしまいました。私はやっぱり引っ越しが怖かったんです。ここでバーベキューへ行くと本当に引っ越すことになるし、みんなも自然と引っ越しの話題を出しただろうし、それが本当に怖かったんです。ただ、挨拶なしに家に籠るのは許してもらえず、とりあえず近所のみんなに挨拶だけでもと言われ再び近所の家に向かいました。

着いた時、確か丁度あっぴーのお母さんが帰るところに出くわしたような、いないような。とにかくあっぴーのお母さんに
「辛かったら家に来てご飯食べる?今からご飯作るとこやから」
と誘われました。ついでに家に帰りたくなかったらお泊りしていいよとも言われました。最初は行かなくて大丈夫と断ったのですが、いっときして、やっぱり行きたいと思いました。気持ちを落ち着かせたかったし、あっぴーと、そしてあっぴーのお母さんに甘えたかったという風に思ったのです。再びまみーと家に帰り着替えなどをかばんにまとめてお泊りをしに向かいました。付いて家のチャイムを鳴らしてお邪魔して、夜ご飯を頂きました。なんだか久々にちゃんとしたご飯を食べたような気がして心が和みました。そしていっぱいお話をしました。お風呂も借りて、布団も借りて、みんなでテレビを観ながらゆっくりしました。こんな落ち着いた気持ちでいるのは久しぶりだな。って思ったのを覚えています。確か、ちーちゃんにも電話して、お話しした気がします。

この日の夜、客室であっぴーと布団を横に並べて寝ました。十数年振りにお泊りをして、一緒に寝てなんだかワクワクもしたことを覚えています。あっぴー達は私の現状と状況を知っていたのですが、それを踏まえた上で引っ越しの話とそうじゃない話と交えながら、温かな雰囲気を作ってくれていました。そしてそんな中で一晩過ごせたことがとても新鮮でもあり、懐かしくもありました。今思えば、この日の夜がなかったら幼馴染と頼れる大人のありがたさを再認識できてなかったような気がします。

人生において頼れる存在、甘えられる存在がいることって幸せだなって思います。このことに気づくのはまだ先のことなんですがね。

PS.家を行ったり来たりして大変じゃない?って思った方もいるかもしれませんが、それぞれの家は徒歩2、3分圏内です。お泊まりしても次の日すぐ家に帰れる距離なのです。

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