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人生のどん底を救ってくれたのは、いつも韓国人男性だった。

今から約10年前。
エジプトのナイル川を見下ろすアパートで
私は泣いていた。

恋人だと思っていた人に裏切られて
でもまだギリギリ恋人ではなかったから
誰も悪くなくって
ただただ、私だけが惨めだったあの日の
その翌日だった。

日没後のアザーンが町中のスピーカーから流れ私はフローリングに寝そべって
天井でくるくる回る
シーリングファンを眺めていた。

思えば、私はあの夜すでに
暗示を受けていたように思う。

中学2年生の頃
五木寛之さんの『大河の一滴』を読んでから
人生哲学や自己啓発に夢中になった。
もちろん、あの〝引き寄せの法則〟
も信じていた。

だから、あの夜も一生懸命イメージして祈ったのだと思う、未来の白馬の王子様を。

強く願えば、現実として引き寄せられると。


今でもはっきり覚えている。
頭に浮かんだのは
なぜかそれまで全く接点のなかった
『韓国』という国の優しそうな男性だった。


カナダの街で私を救ってくれた韓国人男性


時を遡ると
生まれて初めて韓国人男性に出会ったのは
カナダでの語学留学だった。
オロオロする私に優しく声をかけ、街を案内してくれたり、授業の説明をしてくれた。

『帰国したら2年間兵役で軍隊へ行くんだ。その前に留学して広い世界を見てみたかった』

顔は覚えていないくらいの短い出会い。
でももしかしたら、このうっすらとした記憶が私の奥に眠っていて、あの夜の暗示に影響を与えたのかもしれない。

出会い系アプリで出会った韓国人男性

暗示を受けてから1年後
エジプトから帰国した私は結婚生活に耐えきれず家を飛び出し、田舎町のレオパレスに身一つで引っ越し、元旦那から隠れるように1人で生活することになる。

否定されることに疲れた孤独な私は
世界中の人からランダムにメールが届くというアプリを使うことで心の隙間を埋めていた。

話し相手が必要だった。

それも家族や友人ではなく
全くの赤の他人である必要があった。

私を知らない不特定多数の人と、チャットではなく、Emailでやりとりができるそのアプリは、とても都合がよかった。

もちろん、よくある出会い系であったのかもしれない。日本人女性目的の韓国人男性の利用が多かった。私もそれに気づいていたが、本当に赤の他人なら誰でも良かったから、そんなことはどうでもよかった。

そこで出会った韓国人男性が、話を聞いてくれただけでなく、離婚についての経緯を全肯定してくれた。
そしてさらには続く次の韓国人男性をも紹介してくれた。


『BTS』という7人の韓国人男性

彼が紹介してくれたのは、数年後に世界的なスターになる韓国人グループのBTSだった。

離婚後は自信喪失と将来の不安、両親への申し訳なさ、貯金のなさを嘆きながら毎日必死に生きていたから、私はただただ自分を保つ為に彼らの楽曲を聴き続けた。

離婚後に、いわゆるK-popアイドルに熱をあげる自分を惨めだと思った。

でもその一方で
ああ、私はまだ人生を諦めたくないんだな
と実感できた。

新しい世界を知りたい。
と思う私がまだここにいる。

まだ世界には好きになれるものがあった。

愛を失った私だけど
まだ何かを愛したいと思えている。

BTSがそんな風に感じさせてくれた。


プロポーズをしてくれた韓国人男性

2021年1月11日。
コロナ禍の成人の日。
私の隣には婚約者である韓国人男性がいる。

10年前、エジプトであの夜に暗示を受けた時
頭に思い浮かんだ韓国人男性は
きっと今、隣にいる彼ではないだろう。

いや、いま隣にいる彼でもあり
アプリで知り合った彼でもある。
BTSでもあって
カナダで道案内をしてくれた彼だったはずだ。

人生の辛い時期
家族や友人がそばで支えてくれる。

もしかしたら、詩の一節かもしれないし
好きな映画や歌に励まされるかもしれない。

けれど、それでも救われない程どん底にいる時私達はその喪失感や絶望を打ち消すくらいの
生きる欲望を感じる必要がある。

離婚してボロボロだった私には、背中を押してくれる追い風は必要なかった。

ただ
新しい風の香りを嗅ぎたかったのだ。

もっと生きていたくなるような
新しい季節の香りを。

なんだか恥ずかしいけれど、私にとっては
それが特定の人物ではなく
『韓国人男性』だった。

小さな点が繋がって
いつかの自分を救ってくれる。

だからこそ
今の私がある。

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