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【最終回】「冬」と「レモン」を使って物語を創作(700字)

さまざまなジャンルの文章に、自分なりの赤ペンを入れていく企画です。マガジンの詳細については【はじめに】をお読みください。

2019年の1年間と決めて続けてきたこの企画、いよいよ最終回です。
何とか全17回、文章に向き合うことができました。お題に挑戦してくれたり、読んでくれたり、お付き合いくださった皆様、ありがとうございました!

最後のお題は、コチラです。

「冬」と「レモン」という言葉を使って、700字以内で物語をつくってください

なんと、ショートストーリーに挑戦です。
これまでは、自分の強みだったり、人生の最期に聴きたい曲だったり、わりと自分のことを書くお題が多かったのですが、「自分のことは書きづらい!」という意見が多かったので、最後はこんなお題にしてみました。
「冬」と「レモン」の2つのキーワードの選択に深い意味はありませんが、今の季節の冬と、何か色のあるものを入れたいと思って、レモンにしてみました。
レモンは、「Lemon」と書くとおそらく今の多くの人が米津玄師を思い浮かべ、「檸檬」だと梶井基次郎。レモンとすると汎用的にはなるけれど、私はなんとなくザ・テレビジョンの表紙を思い浮かべます(笑)。
書く人によっていろいろな使い方ができる面白い言葉!わくわく。
普段は取材した内容を文章にまとめているので、私はフィクションのプロではありませんが、面白い創作ストーリーがたくさん届いたので、一緒に読んでいければと思います。

最初は、久しぶりの登場、個性派のMちゃんのストーリーです。

「販促」

12月25日。毎年、スーパーやコンビニなどの店頭でクタクタのサンタの服を着て必死にチキンやホールケーキを売っている店員の姿を目撃する。
私(34)もその一人だ。5年連続、商店街に入っているパチンコ屋の店頭で、年甲斐もなくサンタ服の下にミニスカートと編みタイツを履かされ、販促商品を売らされている。
156cm82kgアラサー肥満女のこんな姿を誰が見たがるというのか。
寒い。真冬の空の下気持ち程度の電気ストーブが置かれているが、普段履き古した毛玉だらけのタイツの上にジーンズをはいている私にとって地獄のような時間だ。爆音とタバコ臭い中やる景品交換業務に戻りたい。
しかし、私がここに立つことが商店街では名物になっているらしい。
5年前のクリスマスイブ、スタッフ内のくじ引きではずれを引いてしまったことから始まる。自分のくじ運の無さに嫌気がさし、無表情でなんの宣伝もせずぼーっと店頭で立っていたところ、誰かに盗撮をされてSNSに流された。私のあまりにやる気のないさまとは逆に、気合の入った肉肉しい編みタイツとスカートとのギャップが「哀愁を感じる。」「クリスマスみんなが幸せだと限らないことを体現してくれている。」「なんか仏に見える。」などのコメントを残され、同時に拡散されてしまった。商店街でもすぐさま有名になってしまい、次の日私がでると人だかりが出来ていてなぜかお供えものを置かれるようになった。
今年もそうだ。私の目の前には販促商品よりもお供えものが多い。まるで事故現場のようだ。
籠いっぱいに敷き詰められたフルーツ盛りの中にあるゆずとレモン。今夜はこれをお風呂に浮かべて、静かに冷えきった身体を温めたい。

光景が目に浮かぶ、面白いストーリーですよね。とってもステキです。
ちょっとだけ、赤ペンを入れてみました。

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