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スパーズの財務諸表を他クラブと比較しよう(20-21版)

こんにちは!marieです。

W杯、日本は本戦出場を決め、ソンやベイルもすごかったですね~

ソニー、ケイン、ロリス、ベイル、オーリエ(?)…と、スパーズゆかりの選手たちが各国のキャプテンとして活躍している姿を見ると嬉しくなりますね。ソンなんてスパーズでは絶対キャプテンやらんでしょw

さて、1年前にも同名のタイトルで記事を書きました。

アーセナルが2月末に決算発表したことで今年度もほとんどのクラブが出揃いましたので、今年度分をやろうと思って書いております。

前年分(19-20シーズン)はこちらから↓

ちなみに今回のトップの写真は、試合中無駄に相手選手を威嚇するロメロに似てると思って設定しました。

スパーズの現状をおさらい

最初にスパーズの決算を振り返ります!

スパーズについては、決算発表時に財務レポートを読んで記事を上げております。(よかったら読んでね)

スパサポは、こと勝算が高い話題であることもあり経営の話が大好きだと思うので、あえて書く必要もないと思いますが、これまでの情報から私は以下のように理解しています。6個。

(この話大好きでいつも追ってるよ!という人は飛ばしてください)

①オーナー自体は大富豪であるが、オーナーの融資は一切なく、事業のみで必ずペイできる経営をめざす。ケチだみたいな話は相対的には正しい。選手の給与水準も、クラブ規模からすると低い。
②10年以上前にレヴィ会長が描いた中期計画は、設備投資(新スタやトレーニング施設、近隣街の開発など)やアカデミーの整備により、チームの成績になるべく左右されない収入源を作り、企業として成長させた上でCL常連のようなビッククラブになっていくこと。
③現状、新スタ設立までは成し遂げた。ただ、想定以上に早くCLに出られるようになったこと、よもや決勝まで行き、その後ガタガタと崩れ落ちていったのは当初の想定外だったと思われる。また、タイミング悪く新スタ開放とコロナが重なり、思うような収入を得られずに来ているのは不運。
④新スタ設立のための借入金があるので、負債(銀行からの借金)は世界中のフットボールクラブでも随一。ただ、2051年までの借入金なのでとんでもなく長い話であり、それはつまり継続性のある事業だと認められているという解釈もある。
⑤新スタ設立と共に移籍金にはギアを入れたイメージだが、最初の大きな投資チャレンジ(エンドンベレとロチェルソ)は失敗したと言わざるを得ない。その後はパラティチを招聘しイタリア方面を中心に少しずつ成果を出している。
⑥経営判断で、スーパーリーグ構想や上述の移籍ミスを行ったため、レヴィOUT、ENIC OUTの声もある。現実的にはレヴィが就任してからクラブの価値は大きく上がっており、時が来れば売却するのではという話も。

長くなってごめんなさい。愛があるからね。オタクは趣味の話が長いからね。

そんな中で、直近3年間のPL(損益計算書)をまとめたものを見てみましょう。

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※19年度:18-19シーズン(CL準優勝)、20年度:19-20シーズン(コロナ勃発)、21年度:20-21シーズン(コロナ影響直撃)

一般的な感想は、

20、21年度はマイナス多いなあ!でもコロナなんだから仕方ないんじゃないの?

19年度でさえ当年度利益が+69なのに、負債が直近で854なのやばい

の二択じゃないかなあと思います。コロナの件、実際その面は大きいし、なんていうか結論としては仕方ないです。

でもコロナだから仕方ないじゃん!と言い続けていても意味がないし、失ったお金は普通に失ってます。

普段どういうクラブたちと戦っているのか知るためにも、他のクラブと比較することで立ち位置への理解を深められたらなと思います!

科目ごとに比較

では、項目ごとに比較しましょう。

データはいつも通りSwissRambleさんのものを参照させていただいております。

上記のスレッドは、CL・EL・ECLの賞金についてのまとめ。

なんか私もうカンファレンスリーグって言葉を見るだけで笑ってしまうんだが…笑(ムラに負けてコロナでぬるっと不戦敗敗退したと思ったら何故か関係ないブレントフォードの監督にディスられて…なんだったんだ)

余談ですが、カンファレンスリーグで優勝したときの賞金が大体CLでベスト16行ったときの賞金と同じくらいです。


<補足:一部データの欠損について>

19年度や21年度のデータでパッとデータが見つからなかったもので、一部空欄にしているところがあります。21年度の方は計算でき次第更新します。すみません。

①売上高

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🐤売上高は、収益のこと。クラブの規模をダイレクトに表す数字です。

スパーズだけめっちゃ下がってるじゃないか!

21年度(20-21シーズン)はコロナ影響をもろに受けた年。スタジアム収入が大きいスパーズやユナイテッドほど影響を受けやすく、収入が下がった。

と言うでしょう。スパーズを擁護しようとすれば。

それも確かに大きな事実なのですが、そもそも本業のサッカーで成績が振るわず、サグレブにも負けて早々にELを敗退し…という影響があるのを見てぬふりはできません。リバプールやチェルシーは本業が好調で持ちこたえているというのもある。

サッカー関連での放映収入は、額的に「CLに出るか出ないか」でほぼ決まるのです。

とはいえ、スタジアム稼働による収入が戻れば19年度程度かそれ以上に戻るはずなので、絶対額としてはそこまで心配することはないと思われます。

そして、それよりブレントフォードを見てみると、プレミア上位といわゆるヨーヨークラブでは次元の違う戦いをしているということに驚かされます。

②当期純利益

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🐤当期純利益は、その名の通り1年間の最終的な利益。黒字とか赤字というのはこれのことを言います。

みんなコロナ影響で赤字の年です。苦しすぎないか?

前段で、エバートンが▲100以上の見込みで決算遅れと書きましたが、絶対額としては別に珍しくもないですね。みんな大赤字ですよ。

その中でシティは何やねんと思いますが、それにはコロナによって起きている事象を説明する必要があります。
(長いわりに制度のつまらない話なので…興味がない人は次の項目まで飛ばしてください)


コロナ影響によって、会計上、下記のことが全クラブに起こりました。
1)無観客試合によるMatchday収入の減(ほぼ消滅): 21年度のみ
2)試合延期によるBrordcasting収入の繰延: 20年度→21年度

スパーズの例で見てみましょう。

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1)は、上から2~4行目です。
Match Receiptsが、94.5→1.9に減っていることがわかりますね。20年度においては全収入の1/4くらいを占める収入源なわけで、これは壊滅的な打撃です。

2)は、5~8行目です。
Broadcastingが135.8→206.6に増えています。これは何かを頑張ったわけではなく、コロナによって2020年3~5月の試合が延期され、それに附随する放映権収入が翌年度計上になったためです。

Broadcasting収入は、各大会およびPL順位という成績のダイレクトな現れですので、

・19-20シーズン(CLでFW・WG全員ケガしてデレのワントップという絶望布陣でライプツィヒに挑み普通に負けた年)

よりも

・20-21シーズン(ELでザグレブに負けた年)

の方が、ベースとしてスパーズは落ちているはずです。ただ、この繰延によってなんか増えているように見えるというわけです。

さらに、スパーズは2020年3月時点で残念ながら既に欧州の大会を敗退していたため、2)の繰延影響はプレミアリーグだけですが、CLやELで勝ち進んでいたクラブは更にこの金額が増えています。

その前提でシティを見てみます。

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Match Day、Broadcastingはスパーズとまったく同傾向ですね。その中でポイントなのはそれぞれの構成比です。

シティはスパーズと比較して考えると、Match Day収入が少なくBroadcasting収入が多いという収入構造です。

それはシティが本業のサッカーがとても強く放映権収入を世界トップレベルで取っているからでもあるし、逆にその強さのわりに観客動員数やチケット代などで他クラブより収入が取れていないからでもあります。

というか逆で、スパーズが弱いくせにMatchDay収入たくさん稼ぐとも言ってもいいですね。


それぞれの1)、2)影響を並べてみると…
(スパーズシティだと極端だから真ん中のリバプールも入れてみる)

【スパーズ】※20→21年度差分
1)94.5→1.9(▲92.6)
2)135.8→206.6(+70.8)
合わせると▲21.8

【シティ】
1)41.7→0.7(▲41.0)
2)190.3→297.4(+107.1)
合わせると+66.1
※さらにここにはないもので、スポンサー・広告収入も増えている

【リバプール】
1)70.9→3.6(▲67.3)
2)201.6→266.1(+64.5)
合わせると▲2.8

他クラブはというと、こんな極端にマイナスになるのはスパーズくらいであり、アーセナルはリバプール、チェルシーはシティと構造が同傾向です。

つまり、スパーズ・アーセナル・リバプールのような、Matchday収入が収入全体のうち結構な割合を占めるクラブは、コロナによるMatchday収入消滅をBroadcasting収入繰延では補えず、マイナスになり

シティ・チェルシー・レスター・エバートンのような、Broadcasting収入がMatchday収入よりも特に多いクラブは、Matchday収入が消えても補うどころかむしろプラスになっている、ということです。

※ちなみにユナイテッドは、Matchday収入が消えたのもすごく痛いんだけどBroadcasting収入も大きいので、合計するとプラスになっています。すごーい。


以上が収入側で起こっていることでした。
費用側はクラブにもよりますが、そんなに変わっていません。観客がいる試合数が減ったために試合運営のためのコストが下がり、全体的にみんな微減しています。

ということで、コロナによるいろんな側面からの影響があり、21年度は特にサッカーの強さ・実績による収入だけで利益に差がつきやすい状況でした。

こういう市場だと今のスパーズは弱いんよ。(情けないことですがw)
やはりサッカーの強弱だけではなく、レヴィ会長などの経営手腕で他クラブに差をつけられて初めて、いわゆるBig6に仲間入りできるクラブだと私は思います。

21-22シーズンは元に戻ると思うので、はやくそうなってほしいものです。。

③EBITDA

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🐤EBITDA(いーびっとでぃーえー)は、ざっくり②から移籍金と設備投資、税金を除いたもの。これが取れていないと企業として自立していないため借金返済能力がなく、一般的には銀行の融資は受けにくいと言われます。

これのプラスマイナスに最も影響するのは選手の給与なので、いかに身の丈(収入)に合わない給与を払っているか、という遠回しな指標とも言えます。

これも先程の収入影響を受けていますので、21年度に関してはシティやチェルシーがプラスめに出ており、スパーズはマイナスめに出ている傾向はあります。

ただ、チェルシーは19年度とかも意外とプラスで逆に笑ってしまう。

全体に言えることとして、EBITDAがプラスなのに最終的に利益でマイナスになる年があるのは、主に選手の移籍金にお金をかけすぎor設備投資しまくりだからでしょう。

④移籍収支

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🐤今回は、Profit on Player Sales - Player Amortisation(当年度)で求めました。

みんな大好きなやつ!ただし帳簿上の当年度収支なので、あくまで参考値です。

ブレントフォード以外みんなマイナス。「買う側のクラブ」として振舞っていることがわかります。(チェルシーの20年度は補強禁止+アザールの移籍金が発生した年なのでプラス)

▲37でCL準優勝した18-19のスパーズは本当に神がかっています。
ただ、最近はリバプールとかエバートン並みには移籍にお金使うようになってきた感じです。アーセナルは意外ともう一段階高いかも。

⑤売上高に占める給与の割合

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🐤その名前の通り、給料÷売上高をした割合です。1万しか儲けてないのに従業員に2万払う会社とか普通なくない?

みんな大好きなやつその2!

スパーズ低いですね。年々増えているようにも見えますが、収入連動比率でもあるので、21年度は収入が下がった分率が上がっているというのもあります。

元々レスターとエバートンがとんでもないというイメージがあったので計算したら、ブレントフォードが意味わからないことになっていました。
ただ、チャンピオンシップのクラブをこの比較対象に入れるのは誤っているようです。(ブレントフォードは20-21シーズンにおいてはチャンピオンシップ)

チャンピオンシップのクラブは平均的に給与/売上高の割合にて100%を越えており、選手の売却でなんとか収支プラスにさせる戦いをしています。

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プレミアリーグに長くいるクラブとは全然違う業態の会社なのですね。

⑥減価償却(≒設備投資)

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🐤Depreciationを記載してます。主に有形固定資産(建物や設備)のことです。費用符号。

やっぱスパーズ抜けてるんだねというのを言いたかったです。次に高いのは意外にも?アーセナルなんですね。

みんながそれぞれ何に設備投資してて、何を作っているのかは気になるところです。ユナイテッドとエバートンはスタジアム作るんでしょ?負債仲間になってくれるのか?

(3/31更新)こちらに続きます

長くなってしまったので、各クラブの所感は続きで書きました!

今回は以上です!

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