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SXSWとSlush Tokyo両方行って感じるイノベーション系イベントの特徴と違い、好きなところ

イノベーション系のイベントとして名前が挙がることが多い「SXSW (サウスバイサウスウェスト)」と「Slush Tokyo」。Slush Tokyoは今年からSlush→BARKと主催が変わり、BARKATIONというイベントが2月19-20日開催される予定でしたが、先日急遽中止を発表しました

担当プロジェクトの関係で2017と2018はSXSWへ、2019はSlush Tokyoへ行くチャンスをいただいた。現場で体験できたことは両方貴重な経験だと思っているので、個人的に感じたことをまとめます。

SXSW基本情報

開催地はアメリカのテキサス州オースティン。元々は音楽イベントとしてスタートしましたが、現在は音楽だけでなく映画、インタラクティブ(テクノロジー)といった多分野にわたる総合的なイベントに。

公式サイトの「History」のページによると、「SXSW remains a tool for creative people to develop their careers by bringing together people from around the globe to meet, learn and share ideas.」((1987年のイベントスタート以来)SXSWは世界中から様々な人々を結びつけ、学び合い、アイデアを共有する機会を作ることでクリエイティブな人々のキャリア開発を後押しするツールであり続けてきた)とあります。SXSWらしさをよく表した一文だと思います。

今年の開催時期は2020年3月13日-22日、チケット価格は$1145 - $1475*(*1月13日時点での価格、「後5日で上がるよ!」というアラート出てます。)

2018年のSXSWではインタラクティブを含む「Conference」部門の参加者は75,000人に上りました。(https://edition.cnn.com/2013/09/13/us/south-by-southwest-fast-facts/index.html)

Slush Tokyo (BARK)基本情報

元々の開催地はフィンランドのヘルシンキ。世界中からアントレプレナーや投資家、学生などが集まる、世界最大級のスタートアップイベント。東京では2015年から開催されており、国内においてアクセスできる大型スタートアップのイベントとしては貴重な場。今年から日本独自のイニシアティブBARKが引き継いで2月19-20日の開催と予告されていましたが、上記のように中止が発表されました。

参加者は6000人程度とのこと。(出典:https://sogyotecho.jp/slush-tokyo2019/)

ビジネスを生むための精密な仕組み& 洗練されたスマートさが特徴的なSlush Tokyo

1)「ビジネスを生み出す」「行動を促すための徹底的な仕組み
 最もSlushらしさを感じさせると感じた写真はこの写真です。

「COMFORT ZONE ENDS HERE コンフォートゾーンはここまでだ」というブース入り口のパネル。つまり、この先(=Slush Tokyo)は本気でビジネスを生んで世界を変える覚悟ができているのか?ということが問われる空間だという演出。これが非常にSlushっぽいなと思いました。
 新しいビジネスの誕生を加速させるように考え抜かれた仕組み、ステージでは常にピッチが行われ、メンターからのアドバイスが行われ、VC、スタートアップ、そして学生などの若者がお互いに出会ってビジネスが生まれることが期待されている。メインステージではイノベーション、テクノロジー界の先達が若者をCheer Upするメッセージを常に発信している。なんというか、「イノベーションの効率の良さ」を感じさせられます。

2)洗練されたSlushの世界観が議論を促進される
Slushで印象的だったのが、会場を一歩入ると基調色のブラック、白い文字のロゴ、印象的な照明でクラブや音楽フェスのような雰囲気。一歩会場に入ると一気にSlush Tokyoの世界に引き込まれる。この雰囲気づくり、統一された世界観づくりが徹底されていると感じました。

会場のあちこちアート作品が飾られていることも印象的。

デザイナーの友人と会場で話していて気付かされたこと。彼女は「会場の照明を暗くしているのは、洗練された雰囲気のためだけではなく、内にこもった雰囲気を作り出すことで、人と人の距離が縮まり、参加者同士の議論がより促進されるように意図されているのではないか?」と指摘していました。主催者側の意図はわかりませんが、自分はなるほどと感じました。

3)運営が若い
Slush Tokyoは400人のボランティアスタッフが中心となって開催されています。そのほとんどは学生。会場で行き交うボランティアの皆さんはとても溌剌として、「若さ」というSlush Tokyoのアイデンティティを示しているようでした。

都市全体で社会に対する新しいアイデアや考えを歓迎するSXSW

1)町全体のお祭り
SXSWはどこかのコンベンションセンターで行われているイベントではなく、テキサス州Austinの街全体がSXSWになり、街全体で「大人の文化祭」をしているイメージ。街のメインストリートにもSXSWの旗が翻ります。旗だけでなく、それぞれの店舗もところどころSXSWに参加する企業やグループのブースになっています。(あまりのお祭り騒ぎに、タクシードライバーの人は「人が増えてもううんざりだよ!商売になりゃしないよ!」と言っていたりもしましたが・・・)

街を歩いているとそこかしこに企業やスタートアップのブースやイベントスペースが。


2)未完成なアイデアがそこかしこに並ぶ「ニューカンファレンス」

SXSWのことを「トレードショーではない、ニューカンファレンス」と指したのはインフォバーンのの小林弘人氏。

この記事の中で小林氏は、日本企業はまだアイデアが未完成だから日本企業は参加を尻込みするが、皆コンセプトだけでアイデアを持って行って勝負している、それが従来のトレードショーとの違いだと語っています。

これは自分のSXSW体験でも強く印象に残ったこと。私がSXSWのコンベンションセンター会った中で一番未完成だと思ったあるチームは「おばあちゃんの秘伝のレシピが再現できるようなキッチンがあれば素晴らしいと思うの」というコンセプトだけをひっさげてSXSWに乗り込んでいました。そのチームの人は来場者に対して上記のコンセプトを話、来場者がそれに対して感想を話す、そしてその会話の中で生まれたキーワードをチームの人はただひたすらメモっていくというやり方でアイデアを広げて行っていた様子が印象的に残っています。

3. 「ビジネスを生む」にとらわれないWelcomingなゆるい雰囲気
Slushと比較するとより感じるのが、SXSWの「ゆるさ」。雑多な街の中で夜は酔っ払いが街を練り歩き、謎の服を着た一団が道路を突然占拠したり、僧侶の一団がいきなりテラスで坐禅を組み出したりする。(実話)

ただゆるいだけではなく、この「ゆるさ」がwelcomingな雰囲気を作り出しているような気もしています。作り込まれた洗練さのあるSlushとはそこが顕著な違いです。

また、「ビジネスを生む」ということだけにとらわれないのもSXSWの特徴の一つかと思います。もちろん、ここで一発当ててビジネスを一気にメジャーにする、という目的を持ってきている人もいると思うのですが、そうではない人もWelcomeされている感じ。ビジネスにする、しないではなく「自分は社会に対してどういうインパクトを残したいのか」「社会のどこに課題意識を持っているのか」ということだけが共通点で、それについてどんなに青い理想を描いても「そうか、素晴らしいじゃないか」と言ってもらえそうな雰囲気、それが魅力だと思います。

個人的な好み:SXSWが好き

個人的な好みでどちらが好きか、と聞かれたら、自分は迷わずSXSWと答えるかなと。その理由は、上でもあげた「Welcomingな雰囲気」「ゆるさ」が、変なプレッシャーをかけることなく「自分にも何かできることがあるんじゃないか」「社会に対して何かアクションを取れるんじゃないか」と思わせてくれるから。壮大な理想を描いたり、世界を一変させるようなアイデアをもっていたりはしなくとも、足元の一歩を上がっていくことを「そうか、素晴らしいじゃないか」と言って背中を押してくれそうな。あの街の雰囲気に触れたい、そういう素敵な空間が作られていることが最大の魅力だなと感じています。

今年は残念ながら現地に行けないのですが、どんな出会いが生まれるのか・・・。とても楽しみです。

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