【前編】トビンの手相
トビンと俺の二人は、ある日コニーアイランドに行った。その日は二人で四ドル持ちあわせていたし、トビンには気晴らしが必要だった。というのも、トビンの愛しの彼女、ケイティ・マホーナーが、アイルランドはスリゴ州からアメリカに向けて三か月前に出発したのに、行方知れずなのだ。彼女自身の貯金二百ドルと、トビンが遺産として引き継いだ、シャーナー沼のほとりに建つ立派なコテージと養豚業を売ってつくった百ドルを持ったまま、彼女は消えてしまった。トビンに会いに出発した、と告げる手紙から、ケイティ・