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縄文人像に着装する衣装制作の記録

国立歴史民俗博物館「先史・古代」コーナーに展示された縄文衣服復元の根拠


国立歴史民俗博物館(歴博)総合展示第一展示室「先史・古代」の2019年のリニューアルに向け、2013年に依頼された縄文人像に着装する衣装は、2005年に国立科学博物館(科博)で開催された「縄文vs弥生」展で私が考案した衣装に似た系統にするということでした。その衣装は、ポスターや図録表紙のヴィジュアル用から始まったため、人々に印象強く伝達することに重点を置き、黒い皮に赤い縄で飾り付けたワンピースの形にし、文様表現、素材は縄文期のものに合わせるように作成しました。文献を参考に構成していくと、現代のファッションや風俗に通じる要素が含まれていることに興味を抱きました。
2007年科博の日本館設立に際し、人体模型設置でも縄文時代と弥生時代の衣装を担当しましたが、こちらでは、一般庶民の日常に重点を置き、縄文では繊維品の中で特徴的な麻を使用した編布(あんぎん)を素材として使用しました。編布復元は土浦の古代織物研究会へ依頼しました。 今回の復元では、2007年の経験も加味し、縄文時代の手法をさらに掘り下げるという視点で取り組みました。全て青森県の縄文後期遺跡から得たイメージを基本にし、亀ヶ岡遺跡出土「遮光器土偶」などを参考にしました。人体像の形状により、なるべく肌は露出しないということでしたので、季節は真夏を避けた装いです。土偶の胸元の文様表現や弥生時代の出土生地片に見られる縫製でわかった形状などを参考にした貫頭衣の上着。土偶が着用している上着からズボンを履いているような模様がみえます。また古縣遺跡出土土偶などにも、パンツ状の表現や、手甲や脚絆のような表現もほどこされています。
それらを参考に編布のズボンを履き、その上に現在も少数民族の女性が着用しているような、巻スカートを着せました。それは男女問わず防寒や局部防備をし、また着脱、縫製が安易に出来るため、着装していたのではないかと考えたからです。
腰蓑の皮版といえるでしょうか。編布や皮で腕や膝をサポーターのように巻きます。靴も鹿皮です。寒い時期は内側に毛皮をあてたと考えられます。


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