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一期一会の乗務員⑯〜 一流の集まる街・銀座〜 サイボーグ・ホステス 2023年2月8日

昨年末にタクシー乗務員としてデビューした みやびと申します。作家志望の私はひたすら都内にタクシーを走らせ、空いた時間にコラムを書いています📝🚕💨

この『一期一会の乗務員』シリーズ、今までは素敵なお客さま✨を抜粋して書いてきました。

しかし、出逢ったお客さまは優しい方ばかりではありません。私は乗務毎に20〜30組のお客さまをお乗せしていますから… 難しいお客さま、大変なお客さまもいっぱいいらっしゃいますよね。

今回は、ちょっと困ったお客さまを書いてみます。

乗禁(=乗車禁止)時間を過ぎた、深夜2時頃。

銀座の街を走っていますと、派手な髪型と服装をしている女性3人の手が挙がり、タクシーにお乗せしました。

銀座で働く女性には見えず… たまたま遊びに来て、また違う街で飲み直すのかな?と思いました。

新宿の飲み屋さんの看板女性のような出立ちで、ギリ六本木なら居るかな?といった印象。銀座には珍しいタイプに見えました。

3人とも、タレントのヴァニラにそっくりです。あっ… イジってる!😳💋 とすぐ分かるお顔。もしかしたら身体も?😅

読者の皆さんがイメージしやすいよう、ヴァニラの写真をくっつけておきます。

1人が助手席に乗り込み、2人はやや離れて後部座席へ。私はお客さまに、いつも通りの営業定形文で声をかけました。

「ご乗車ありがとうございます、どちらまでお送りいたしますか?」

「あっ、住所いいですか?」

かしこまりました。そう答えて、助手席の女性に伺った住所をナビに設定。

「新宿ですので、内堀通りから新宿通りを行きますね」

この助手席にいるお客さまの承諾を得て、だいぶ慣れてきた新宿までの道を走り出しました。

内堀通りの難しい道を走っている時、後部座席で助手席側に座るお客さまから声をかけられました。

「すみません、どの道を行きますか?」

あの説明じゃ不十分だったかな?あまり詳しい通りの名前は、ナビを見ないと説明できないなぁ…

この道は車線変更が複雑で、どの車もビュンビュン飛ばしてきます。走行中なのは元より、集中して走らないと危ない道で余裕などありません。

「お待ちくださいね、信号待ちになったら確認いたします」

お客さまに、車線や道、運転の言い訳なんて不要です。ご質問に答えようとナビを確認しました。

「大久保通りを通って行ってもらえます?」

え、大久保通りって…

この新宿通りを越えた先、もっと向こうだよね?設定した住所から外れて、先に大久保通りを通るって、どういう事だろう?

この斜め後ろに居る後部座席の女性は、ナビの果ての道を指定しています。

「大久保通りを通る道か、再度お調べしますね」

また信号待ちになり、よく分からぬままナビを確認して、経路を細かく説明しました。

「…抜弁天を通って行こうと考えていますが、いかがでしょうか」

先ほどの新宿通りや靖国通りが銀座からの主な経路です。しかし、このお客さまからのご要望があります。新宿通りから靖国通りを抜けて、大久保通り。

つまり、このお客さまご指定の道を走るために、その中間にある有名な交差点の名前を伝えました。

すると… 今度は、後部座席で運転席側のお客さまから声をかけられました。

「抜弁天を通るなら、そこで止まってください」

「かしこまりました、お停めする場所をご指定くださいね」

ハッ? 結局、どこが目的地だったの?😡💢

ナビのルートとは全然違う、個別の道を行くように言ってくるのです。三者三様、めちゃくちゃなルートを指定してきます。それも『走っている最中に』『私に』😠💢

結局、抜弁天で1人だけ先に降車することとなりました。私の真後ろに座った女性です。

「ねぇー、〇〇ちゃん。お金貰った?」

抜弁天のヴァニラは、助手席のヴァニラに話しかけました。

「今日は貰ってないです!… でも、昨日は貰っているからぁ」

「じゃあ、支払いよろしくね」

話が終わるか終わらないかで、抜弁天へ到着。一緒に乗った女性達にほとんど話しかける事もなく、抜弁天のヴァニラは降りてゆきました。

「お先にー」

残ったのは2人、私は助手席に座るヴァニラに声をかけました。

「それでは、住所の場所までお送りいたしますね」

「はい、お願いします」

走り出してまた直ぐに… 後部座席助手席側、後ろのヴァニラが口を突っ込んできました。😬😬

「すみません、新宿のドンキを通ってもらえます?」

後ろのヴァニラが、またまたルート変更を指示してきます。行け、ではなく 通れとの指示。

新宿のドンキって… ドンキがいくつあるか知ってます?💢😠 と心で思っていても、声は穏やかに。

「申し訳ありません… 新宿のドンキを先に周りますと、目的地からかなり方向が変わってしまいます」

怒りは決して気づかせない。どうやってこの理不尽なヴァニラ達を送り届けるか?

「うまく回ってもらって良いですか?」

「先ほどおっしゃられた大久保通りも通ってゆくとなりますと、恐れ入りますが道のご案内をお願い出来ますか?」

「……………。」

そう応対すると、後ろのヴァニラは黙ってしまいました。

「どうなさいますか、方向は変わってしまいますけど、ドンキに向かいますか?」

どうやら、自分の目的地へ先に行けとは言えないようです。

「ご指定(ナビ設定した住所)の場所に向かいますね」

減速していたスピードを戻し、タクシーを走らせます。🚕💨

すると、今後は助手席のヴァニラから声がかかりました🔈✨

「信号を右に曲がってもらって… 2つ目の信号のところ、停めてもらえますか?」

ナビの目的地より、だいぶ手前😓恋人の家に寄るのか、飲み直すのか。

繁華街からそう遠くない道で降りる、と助手席のヴァニラが言い始めました。すると、後ろのヴァニラから…

「私、信号のところで降りるので停めてもらえますか?」

目的地よりも、手前で降りると言い出します。5メートルも無い場所じゃない… 一緒に降りれば良くない?

は、はい… 分かりました。と呆れながらも指示通り、車を停める返事をしました。

「ドンキ、すぐソコだから乗っていってください。運転手さん、そちらを先に…」

「歩いていくんで、そこでいいです💢」

なんのこっちゃ?とにかくお客さまの希望に従い、後ろのヴァニラを降ろしました。

助手席のヴァニラと2人になり… お話を伺いました。

「皆、お金払いたくないから先に降りようと必死でしたね〜😆」

どうやら、彼女達は銀座で働くホステス。昨日今日と送迎担当のドライバーが休みなので、所属する店からお金を預かり、タクシーを利用したそう🚕✨

「そうでしたか、お仕事お疲れ様です。ご利用ありがとうございます」

結局、ざっくばらんに話してくれるようになった助手席のヴァニラを、ご自宅まで送り届けることとなりました。

自宅を同僚に知られたくなかったのか、ただ単にイジワルしたかったのかは、分かりません😓

「ご乗車ありがとうございました、お忘れ物にご注意ください。おやすみなさい!」

ホステスさん同士… めちゃくちゃ仲の悪さが伝わってきたし、ワガママ放題、自己中で我が強くて、顔もサイボーグで凄かった😅

『新宿方面に行く〇〇ちゃん(助手席のヴァニラ)に便乗して乗っただけだから、支払いしなくても良いよね?』

そういう気持ちだったのでしょうか。

普段お乗せしているグループのお客さまは、目的地が異なる場合でも『俺出す、私払っておく』と率先してお支払いしてくださいます。

ましてや、タクシー乗務員の判断でワープして道を走らせるなんて事は… 出来ないし、今後もしないかな。笑

お客さまが降りた後。私は繁華街・新宿に頭を向けて、車を走らせました🚕💨
いくつものドンキを通り抜けながら。

つづく。

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