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地震と活字

 夜、作業中に地鳴りを感じた。あぁ来るな、と思う。ある程度経験すると、大きな地震がくるかどうか事前に分かるようになる。来た。思ったより大きい。両足をしっかり床につけ、両手で机につかまる。そのまま辺りを見回して、倒れてきたり落下しそうなものが無いか確認する。問題ない。だんだん揺れが強くなる。おさまらない。どうなるのか。心拍数が上がる。感覚が冴える。アドレナリンが放出されて、危険に対応できるよう体が準備されていく。本能が叩き起こされる。こうなると、この後しばらく眠れない。ようやく揺れがピークを過ぎて、おさまる。リビングに降りる足が震えている。

 ほっとしてソファーに腰を下ろした瞬間、地鳴りがして、また揺れる。携帯やタブレットから、警報音と「地震です」という機械音声が時間差で繰り返される。この音だけでパニックになってもおかしくない。不安が煽られる。今度は更に強い。これはまずい。こっちが本番だったか。命の危険を感じて、体が強張る。壊れるのではないかというくらい、家ごと揺さぶられた。

 揺られながら、あの活字の棚を思った。今回こそ、捨てられてしまうだろうか。

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