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歳を取ると、色々と考える〈仔猫の里親募集のチラシを見て感じたこと〉

先日、ドラッグストアで買い物をして、袋に商品を入れていたら、目の前に貼られていたチラシがふと目に入った。

「猫の里親を募集中」とある。薄い赤茶色の縞模様の仔猫と白黒の仔猫たちが、どうやら里親を募集してもらっているようだ。

どちらも表情が素直で、すれた感じがなく、可愛らしい仔猫だった。

我が家には今年5歳になるお嬢様のマールがいるし、わたしの乏しい愛情は猫一匹を満たすのに十分な量だ。

だから、新しい家族を迎えるつもりはない。ただ、そのチラシが妙に気になった。

それは、但し書きに「猫の里親は60歳くらいまでの人」と書いてあった。

冷静に考えたら、猫の寿命も15年とか長いと20年にも及ぶ。だから、責任を持ってお世話する里親も健康で、すぐには死なない年齢の人となるのは分かる。

分かるけれど、わたしにとっての家族は猫のマールが最後なんや、と思うと、なんとなく落ち着かなかった。

もしも、わたしが先に死んだなら、猟は嬉々としてする癖に、ペットフード以外は決して口にしないマールは飢え死にする。

もしも、マールが先に死んだら、新たな心のパートナーを飼うことができないわたしは、やっぱり死んでしまうだろう。

猫や犬とはいえ生命だ。最後まで面倒をみる覚悟がないと、たとえペットとはいえ、飼うことは許されない。

そう思えば、人間の子どもを作るのは意外にハードルが低いように思える。

わたしの知り合いの男性は、今年58歳だが、来年の春にはパパになる。

奥さんは2まわり近く若いので、旦那さんはアウトでも、奥さんはセーフだ。なんて口にすると叩かれそうだ。人間の子どもと動物は違う!と。

たとえ実の親が養育不能に陥っても、公助で子供は育ててもらう権利がある。

確か、動物に関しても、自分の死後に面倒を依頼できるNPO団体とかがあった筈だ。

わたしも自分の健康に不安を覚えたら、早い段階で、マールの老後の世話をお願いできる人か団体を探すつもりだ。

ところで、少子高齢化社会。ボケた高齢者が増えてくるので、安心・安全な「お一人様の老後」を少しでも長く送ってもらうために、認知機能を維持し、同時に危機管理もできるテクノロジーの活用が始まっている。

これまでも、AI(人工知能)を搭載した高齢者向けのロボットがあった。人型ロボットとか犬のような動物型のロボットで、実際、入院してきた独居の患者さんが、大事そうに持ち込んできたことがある。

旧型のロボットだったので会話も単調だったけれど、それでも、話しかけると応えてくれるし、他愛もない会話を投げ掛けてくれた。

看護師や医者との会話は、目的がある会話で堅苦しい。病院だから患者さんの健康状態を知るために行う会話なので仕方がない。でも他愛もない会話のような、ユルさがない。

今よりもっと歳を取ったら、ロボット相手に会話がしたくなるのかな。今はマールがいるけれど、もしも独りになったら、ロボットでいいから話し掛けて欲しくなるのかな。

猫のマールは人間の言葉を発しない。会話は成立しない。

それでも彼女との暮らしは温かみがあって、他愛もない幸せに満ちている。

独居の希望する高齢者にペットの貸し出しをするなんて云ったら、動物愛護団体に叱られそうだ。でも、ひとりで暮らす高齢な人間も動物もまとめてケアしてもらえるみたいな、共生の社会があったらいいな。