真夏の恋、もしくは茶色い煮物
ラジオを流しながら通勤先まで車でひた走る時期があった。四方を農家と山に囲まれた基線なので見通しがよく、田畑と山と、空と雲だけの景色。車の前をひらひら横切る蝶。運転席の窓から助手席の窓へ飛びぬける蜂。最高に気持ちが良かった。
「あれ、いい曲だなこれ」という音楽は、そういうとき不意に流れてくる。最初は、ただそう思って聴いている。しばらく聴いていると「このアーティストは誰だろう」と気になってくる。わたしは「紙とペンは果たして車内にあっただろうか」と思う。そうこうしているうちに、ラ