若者こそ新型コロナウイルスワクチンを打った方が良い
マーガレットこどもクリニックの院長の田中です。
新型コロナウイルスワクチンの接種開始がいよいよいよ春に開始になりそうです。
ワイドショーは連日ワクチンを取り上げてますね。
副反応の問題で接種をためらわれている人もいるでしょう。
自分は若くて健康だから、かかっても大丈夫。ワクチンは打たなくて良いと思っている人もいるでしょう。
今回のワクチンは12歳未満は対象ではありませんが(適応年齢が12歳以上に引き下げられました)、
私が患者さんの保護者から
「私は打った方がいいでしょうか」
と聞かれたら、
「絶対に打った方が良い」
と答えます。
少なくとも私は順番が来たら早々に打ちます。
その理由を3つ記します。
1.自分を守るため
今回のワクチンの有効性は、毎年の季節のインフルエンザワクチンよりも高いことが報告されています。
新型コロナウイルスは、インフルエンザよりも致死率が高く、そして何より社会的な影響が圧倒的高いことは皆さんもご存知のとおりです。
インフルエンザワクチンの有効性は60%に対して、新型コロナウイルスワクチンの有効性は90%と報告されています。
そんなインフルエンザより大変な病気を、インフルエンザワクチンより高い確率で重症化を防ぐことができます。
では、それと引き換えに起こる副反応はどうでしょうか?
先に接種を済ませている
を見ると、通常のインフルエンザワクチンよりは接種後の痛みや発熱、頭痛、だるさといった反応は強いようです。副反応は接種後3日以内に出て、通常1-2日で収まることが多いと報告されています。はずせない仕事や大事な用事がない時期に予定した方が良さそうです。
痛みなどの反応への個人差はもちろんあります。そのため接種をためらわれる方もいるのも分かります。新しいワクチンに対する恐怖もあるでしょう。
2.目の前の大切な人を守るため
それでも接種をした方が良いという理由は、自分を介して、大事な誰かにうつす危険があるから。
今回の新型コロナウイルスのやっかいなところは、かかっても無症状もしくは軽症で済むことが少なくないこと。
このため、私のような医療関係者は知らず知らずのうちに、誰かに媒介してしまうのではないかという恐怖を常に抱えています。
高齢者の介護をされているご家族や、介護施設の方はなおのことその心配が強いと思います。
自分がワクチンを接種することで、大切な人にうつす可能性を減らすことかできます。
3.社会全体で命を守るため
ワクチンには、個体に対する免疫増強と集団免疫という意味があります。
接種率が高くなると、免疫を持つ人が増えて、ウイルスは人から人にうつることができにくくなります。
この結果、社会での流行というものが減ります。
ワクチンは少なからず副反応があるため、今まさに体調が悪い人や、持病で免疫不全がある人などはワクチン接種ができないことがあります。
一番ワクチンを必要とする人たちが、ワクチンを使うことができません。
ほとんどの人がワクチンを接種すれば自分自身も、こうしたワクチンを打てない人もかかる可能性がずっと減ります。
今回の新型コロナウイルスワクチンがどれくらいの接種率で集団免疫ができるかなどはまだはっきりとはわかっていません。しかし、少なくとも罹患者が減ってくれば医療への負荷は減ります。
若者は、新型コロナにかかっても重症化しにくいため、ワクチンを打たなくてもいいんじゃないかなと思ってもおかしくはありません。
でも、このコロナの社会的な影響を一番に受けている人たちの中に、間違いなく若者、大学生が入ります。
最近、私は「渋谷をつなげる30人」という集まりで大学生と知り合う機会を得ました。
彼らはほとんどの授業がオンラインで開催され、友達や先輩後輩と会う機会は極端に減っています。
今年の1年生は友達や先輩とのつながりを作る機会さえ持てずに過ごしている人もいます。
我が家には、小学生がいますが、今も学校は普通にあり、学校を通じて友達や先生とのつながりを持てています。
社会人の私たちは多くの我慢を強いられてますし、生活面で大変な困難に直面されている方も多くいます。
しかし、人とのつながりという面では、すでに持っている土台が、大学生や若者よりはあります。オンラインで旧友とも会えます。
大学生は勉強ももちろん大事ですが、人と出会い、多様な価値観と出会い、ぶつかり、視野を広げることも、この時期にこそ得られる学びです。
その大切な学びの機会が失われています。
私は彼らの生の声を聞き、ショックを受けました。大人として、なんとか彼らの力になりたい。
大学生をはじめとする若者は、ワクチンを打って、自分が感染から身を守れた実感は得られないかもしれない。
むしろ、打った時の痛みや、だるさの思い出だけが残るかもしれない。
それでも、接種する人が増えて、罹患者が減り、そして医療体制を守ることができ、重症化しやすい人たちを守ることができれば、この制限だらけの毎日が少しは緩和されるかもしれません。
ワクチンの効果だけで、感染予防がすぐに必要なくなるわけではありませんが、それでも、巡り巡って、大学生がキャンバスに通えることにつながるかもしれない。
ワクチンの効果を最大限に高めるためには、多くの人が接種することが大事です。
接種の順番は医療者、高齢者、高齢者以外で基礎疾患を有する方や高齢者施設等で従事されている方、それ以外の方と指定されています。健康な若い人に順番が来るのは、まだ先になりますが、順番が来たら、ワクチン接種ができる健康な人こそ接種をしましょう。
自分だけではなく、あなたの大切な人も、そして、社会全体も守ることにつながります。
その恩恵はきっと、みんなのところに戻ります。
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