#61 春日希の人生初スウィング体験記~①基礎編~ 2019/12/22

2019年11/15~12/15、青山DDDクロスシアターで上演された『(愛おしき)僕の時代』(以下、愛ボク)が終演いたしました。

今回わたしはキャストではなく、スタッフの一員として【スウィング】という役割を務めました。

この経験は誰もが出来ることではなく、日本では未だ前例のない取り組みとなりました。

したがって、これからの愛ボクのため、日本のミュージカル界の発展のため、文章に残しておく責任がわたしにはあるのだ!という訳でこの度3編に分けてブログを書いてみます。

一個人の見解、意見ではありますがこれを読んで下さる皆様に何かしらの気づきやメリットがあればいいなと思います。

さて、初回は〜①基礎編〜!【スウィング】とは一体何者なのか、わたしが務めようと思ったワケ等、赤裸々に記させていただきます。

まず【スウィング】について簡単にお勉強タイム!

TDFのTheater Dictionaryで調べたものを勝手に翻訳させていただくと…

スウィングとは、作品(基本ミュージカル)において欠員が出た際に、アンサンブルの1役またはそれ以上を演じる役者のこと。
この熱心なプロ集団は本当に異なる数十の役を覚える。
毎公演彼らは舞台裏でスタンバイしており、病気や休暇、その他の理由で誰かが出演できない際にいつでも飛び込む。
時には、アンダースタディ(プリンシパルの代役)が主役になり、欠員が出たコーラス部分をスウィングが埋めることもある。


ブロードウェイ、ウェストエンドでは当たり前のシステムです。というのも週8回公演をロングランで実現する世界ですからね!


じゃあ日本ではどうなんだ?って、大きな舞台ではスウィングが起用されていることもありますよね。わたしの知っている方にもスウィング経験者は数人ですがいます。ただ、彼らに話を聞くと「大変だった話」がほとんどなんです。

「制作、スタッフ陣の理解度が低い」「キャストとの関係性が難しい」「給料が仕事の割に合わなすぎる」「実際あの稽古の状態で本番出ることになったら無理だったと思う」などなどこの他にもたくさんの問題点を聞きました。


そこで!日本のスウィングシステムを見直す必要があるぞ~と声をあげ、行動に移したのが西川大貴さんです。

大貴さん本人はスウィングの経験はなくても、稽古場代役を経験したり、スウィングがいる現場で実際に様々な問題を感じたりしてきたそうで…。
世界初演シングルキャストでロングラン公演ってことは現実的にスウィングがいないと厳しいぞ!ということで愛ボクには17人のキャストと3人のスウィングが起用されたのです。


ここで、愛ボク公式サイト上での【スウィング】について見てみましょう。

本来《スウィング》とは

キャストが急なアクシデントや故障などによって、本番に出演しないことが最善だと判断された場合、代わりに出演する俳優のことです。複数ポジションをいつでも演じられるように稽古しており、この存在によってキャストが無理せず身体を休めることができたり、公演中止となることを防ぐことができます。質の高い公演を継続するために、欠かせないポジションです。また、いつどの役を演じることになるか分からないため、スキルを持った俳優でないと務まらない役割でもあります。

(なんか最後の方は自分では言いにくいですね。笑)

次に、わたしがスウィングを務めようと思ったワケですが…

これあまり人に話してないけど隠しても仕方ないので。

即決!ではありませんでした。結構じっくり悩みました!

オーディションでそれはまぁ異なる役を色々と演じるチャンスをいただき、自分でも一体何役候補なのかよく分からない感じで、結果のメールが来た!と思ったら「本役キャストではなく、スウィングを…」という内容。

えっ!スウィングってあのブロードウェイとかでハイスペック俳優たちがやってるアレ!?えっ!そもそもこの作品にその枠があったの!?えっ!

という脳内困惑状態でした。笑

わたしはフリーランスなので、メンタルマネージャーの母と妹にすぐ連絡。(そういえばこの時マニラに出張中だった。)

困惑中のわたしに届いた返信は「役者じゃなくてスタッフ枠ってどうなの?」的な内容。

確かに。これってどういう意味なんだろう。どこまで割り切ってやるべき役割なんだろう。

はてなマークが次々と出てくる…。

そこでもらったボーカルコーチからの言葉、「楽しそうじゃん!作品の一番近くにいられるってことじゃん!」

これも確かに。全てを把握するって作品を中からも外からも見れるレアチャンス。

マニラから日本に帰る飛行機の中で、今抱えてる疑問点や不安を洗いざらいメールに書いて送りました。

すぐにご丁寧な返信をいただき、大貴さんからの本作品におけるスウィングの必要性とその熱い想いがこもったメッセージも受け取りました。

そして、これからの自分について考えた時、「わたしは板の上で死にたいのではなく、表現を通して平等な世界を構築したい。」

だったらこの経験が無駄になることはない。むしろプラスにしかならん!

考えすぎる超真面目な性格のせい?おかげ?で、しっかりと気持ちを整理した上でお返事をしました。

この時はまだ、幻のようなスウィングという存在に自分が果たしてなれるのか実感も自信もありませんでした。

一体いつになったら実感が湧くのだろうか…。

春日希、人生初のスウィングへの道を歩き始めたのでした。

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次回は~②稽古編~をお届けします!

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