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上右下左下中下上ABAB

上手と下手がわからない。上手は客席から見て右、下手は左。ただそれだけなのだが覚えられない。演劇部に入ってから早5年経つのだが覚えられない。演劇部を引退したので忘れてしまったとかではなく、一度も覚えた瞬間がない。
西高東低みたいに教えてくれればいいのだが、いかんせん「上右下左」である。KONAMIコマンドの一部のようだ。覚えられるわけがない。「じょううげさ」。「う」が2回連続するだけで日本語として劣悪である。「うげさ」も気持ち悪い。口に出して読みたくない日本語である。

「下中下上」を思い出す。下中下上とは、中高時代の行きの電車でイチャイチャしていた高校生カップルのことだ。軽蔑の意味を込めて「下の中」と「下の上」カップル、略して下中下上と呼ぶ様になった。どっちがどっちだったかは覚えていない。
客観的に見て、見ていられないカップルだった。駅の柱に寄り添う、顔が近すぎる終電間際のカップルのようだった。朝7時台にそれをできる胆力は誉めざるをえない。
ある日から下中下上の共通の友人も同じ電車に乗っていた。共通のとは言ったものの、下中下上の彼女のほうと仲が良いであろう女子高生だった。思えばこのコトの重大性に気づかなかった自分はどれほど鈍かったのだろうと思う。確実に下中下上(特に女)は朝のハートフルラブラブタイムに飽きてしまったのである。男のほうはやきもきしていただろう。自分にも人生経験を積んだ今ならわかる。なぜ彼女と2人きりの時間を彼女と彼女の友達に遮られなければならないのか、と苛立っていたに違いない。ドラマ版ラブホの上野さんシーズン1を全て見た自分になら手にとるようにわかる。男は意外とその状態でも耐えていたのだが、ある日下中下上は忽然とあの電車あの車両からハケてしまった。それ以降はその男の方をたまに見かける程度だった。

そういえば下中下上は進行方向左から電車を下りていた。下は左。これで上手と下手が覚えられそうだ。

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