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鴎外「奈良五十首」を読む

先日、奈良のまちあるきツアーに参加した。
明治時代の観光案内図にしたがって、東大寺三月堂から大仏殿を経由して、興福寺を目指すコースで、大変面白かった。
コースには国立奈良博物館も含まれていて、その途中で教えてもらったのが「鴎外の門」と呼ばれる木造の門(門だけがぽつんと敷地の端っこに設置されている)。

森鴎外は、帝国博物館の総長であったときに、年に一度 正倉院の虫干しに立ち会うために奈良に来ていた。そのときに滞在した官舎の門なので「鴎外の門」(無理やりじゃないか?)
滞在時、雨が降ると虫干しは中止になるので、そんなときに鴎外は精力的に、奈良をあちこち見て回ったらしい。雨の日ばっかりご苦労なことで…そうして詠まれたがのが「奈良五十首」
ツアーで解説してくださった先生によると、鴎外の目を通した奈良は、随分ロマンチックに描かれいるそう。それでおすすめしてくれた本が表題の本。すごく気になる。面白そう。
鴎外の奈良に来ていたことは、何故か知っていた(私は歴史に弱い)。なんでだろうなと思ったら、頭に「森鴎外=たまごかけごはん」の式が浮かんできた。そうそう、娘の森茉莉さんのエッセーで読んだんだった!。
「正倉院の御物(よく宝物と書いてあるが、宝物にはちがいないが、あれは御物というらしい)の虫干しのために、奈良へ行って人々が御物を干すのを傍にいて監督していたようだった。その時、どなたかのお家に泊めていただいていたのだが、生卵御飯がどうしてもたべたくて、町へ出て卵を買い、袂に入れて来て、御飯にかけた。その泊めて下さった家の人は、家で出すお菜が気に入らないのだろうか、と思われたのではないだろうか。生卵御飯は、私も大好きで継承している。」(森茉莉『貧乏サヴァラン』ちくま文庫)
生卵御飯も食べたくなってしまった。森茉莉さんの描く父鴎外は、とてもチャーミングだ。