リアル脱出ゲームが全体戦からチーム、個人戦になる本当の理由―またはあんたがたが現在本来の意味で成り立っていない理由―
前回の振り返りらこちらから
前回の記事において私は下記のように発言しました。
一般的に普及した「リアル脱出ゲーム」を考えた時には、参加者は完全に主体であると言い切っていいのではないでしょうか。
この場合の「一般的に普及した」というリアル脱出ゲームは、いわゆる「ホール型」または「ルーム型」と言われるものです。(スタジアム型?あんまりないしほぼ周遊じゃん)
はてさて、普及する前のリアル脱出ゲームの形をご存知でしょうか?
※下記にリンクを貼るブログは私が2009年に書いた内容です。本当は恥ずかしいのですが、必要なので掲載します。うるさいだまれ。また、下記ブログを隅から隅まで読むと「終わらない学級会」「ある飛行機」「マジックショー1」あたりの致命的なネタバレがあります。文句言われても私は知らないので自衛してください。
図工室に閉じ込められた見知らぬ男女(約)22人で力をあわせて脱出ゲームがスタートしました。
私が最初に見たリアル脱出ゲームの形は「見知らぬ男女」「22名」が全員協力して閉ざされた空間から脱出を図るものでした。
もちろん、イベントは1時間程度(程度)しかありません。なんか自己紹介を事前にしたようなしなかったような気がしますが、現実は小説と違うので1回の自己紹介で普通の人間20人を個別の「〇〇さん」と認識することはできません。
ある種名無しである見知らぬ参加者と協力し、ただし要所要所(例えば謎を解いた瞬間、例えば宝箱を開けた瞬間)に名無しが「謎を解いたすげーやつ」「宝箱を開けたカッケーやつ」になります。
この構造は冷静に考えるとかなり参加者側のコスパが悪く、その後リアル脱出ゲームは「一人一人が謎に触れる密度を増やす」(だっけ?)という目的により6人チーム戦になったり、任意の1~〇名でのチーム戦になったりします。
これは言い換えれば、イベントが、「イベント全体として俯瞰した時に成り立つもの(≒参加者が客体としてイベントを構成する何者かにさせられる)」から「イベントを主体として参加するもの」への大きな転換を果たしたということが出来るでしょう。
◆VIPPERのあんたがたに挑戦したかった
上記に記載した通り、ある種名無しである見知らぬ参加者と協力するゲームと「全体戦の謎解きイベント」を表現したときに、まさにそのものの遊びがあることに思い当たります。あれです、「VIPPERのあんたがたに挑戦します」です。
2005年にはじまった2ちゃんねるVIP板の遊びで、スレ上で暗号を解き明かすと場所が特定でき、その特定した場所にいくと8桁の英数字が書かれたガムテープが見つかり、その英数字はセブンイレブンのネットプリントの番号で、ネプリを出すとまた暗号……というのを繰り返して遊ぶ遊びです。
2ちゃんねるは、ご存知の通り基本的に「名無し」で書き込みをする特定掲示板です。名前を付けて書き込みをすることもありますが、当時のVIPの空気では「コテハン(固定ハンドルネーム)は〇ね」と言われるのがオチです。
つまり、あんたがたは名無したちが勝手にワイワイ謎を解き合い、解けた人間(甜菜=天才と呼ばれる)、実際に現地でガムテープを発見した人間(勇者)が突然何者かになる仕組みをしているわけです。
また、2ちゃんねるのスレッドの形をしているため、参加者は文字を書き込んであんたがたに参加することになります。文字を書き込みスレッド上に反映されたとき、あなたが書いた文字は誰か自身ではなく書き込まれた文章として客体化されます。参加者(あんたがた)たちが書き込んだ文字が、スレッドというある種の物語(1冊の小説のような……実際に残るのはdatログだけですが)を作り上げるとすら言うことが出来ます。
「リアル謎解きゲーム」群と違って、参加者が参加した物語が、そうした見えるモノとして残るのというのも、めちゃくちゃ面白体験です。
※「リアル謎解き」の文脈でも参加者参加者が参加した物語がそうした見えるモノとして残る構成は思い当たります。これは純粋にストーリーを冊子にして配る、では不足しており「参加者が参加したことにより変化した物語」が配布される必要があります。これを純粋に大謎だけに組み込んだものがアッ、タイトルを挙げるとネタバレになってしまう!察してくれ!!!
客体として参加する構成であったイベントを、主体として参加するのみ(のみと言い切らなくても中心が主体としての参加)へ移行することにより、もちろん「参加して遊んでたのしい~!」気持ちは大きくなるでしょう。客体化され物語化された参加者、という考え方をしたときに、もちろんそれはある種の楽しさの減少につながります。
◆まとめ
老害は匿名性が好き
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補足:
・Togetterなどでまとえめているひとはえらい
・リアル脱出ゲームが本当に楽しかったのは参加時ではなく、ネタバレ解禁後のmixiやブログでの参加記を探し読んでまわり全体像を脳内で再構成するときだった
・ネタバレブログ(と私は読んでいましたが、参加記ですね)という存在によるイベントの再生