保守政党もトランプの軍門には降らない

writer : NATE SILVER

元記事:http://fivethirtyeight.com/features/dont-assume-conservatives-will-rally-behind-trump/

以下和訳

もしもドナルド・トランプが大統領候補指名を受ければ、我々がかつて立てた共和党についての仮説がほとんど無効になってしまいます。おそらく共和党員が一番懸念していることは、彼が根っからの保守派というわけでもなく、それほど当選可能性が高いわけでもないのに党の指名候補になり得るということでしょう。トランプは党上層部からほとんど支持を受けることなく(最近ではクリス・クリスティーのような例外もあるようですが)勝利するはずです。トランプは共和党の元候補たち、ミット・ロムニー、ジョン・マケイン、ジョージWブッシュといった人たちをさほど敬意も示さず攻撃するでしょう。もしもトランプが候補になれば、共和党の弱体化、墓場に片足を突っ込んでさえいるかもしれないこと、迫り来るその脅威にもかかわらずトランプを抑える計画にうまく手が回っていないことを暗に示してしまいます。

党主流派の再編成が、平均して約40年に1回、アメリカでは確かに起こっています。最後にあったのは、南北民主党のニューディール連合解体のときです。このときは、1968年、72年、80年と時期にばらつきがありました。本丸が動き出すまでに些細な動きもありました。ときには選挙が再編の予兆のようにもはたらきながら、実際にはそうならないということもありました。しかし今回、私たちはまさにその真っ只中にあります。今年の共和党候補指名を「いつもの政治」感覚で一つにまとめることはほとんど不可能です。

再編は水面下で進行中です。これはかなり大規模な実験になるでしょう。大統領選挙はすでにちょっとした問題に膝まで浸かっています。その理由の一つに、私たちも含めた多くの人々が早いうちからトランプの当選可能性に否定的とは限らないからです。しかし、政界再編期に選挙があることはかなり珍しい事態です。古い体制の秩序、およそ1980年から2012年に至るアメリカの政党政治体制が新しい時代には当てはまらないのかもしれません。しかし、これは伝統的な知恵とアメリカの政治様式に関する戦略見本に関して重要な選挙となるでしょう。

だからといって必ずしも、将来が真っ暗というわけではありません。一つには、長期的な投票状況については当然考慮に入れるべきですが、この票数は最初から今までのところ、かなり正確です。そして古い規則のいくつかは依然として使うことができます。例えば、ペンシルヴァニアとオハイオの投票が似ているという予測はおそらく妥当です。

それでも、何かしらの仮定を立てるのであれば気をつけるべきことがあります。例えば、その党がそのそれぞれの党の候補者にへりくだるという仮定はあまり信頼できないものでしょう。実際に、最近の選挙は党の方針とほとんど交わることがありません。例えば、彼は完全に保守派というわけではないということに基づいて批判しているにもかかわらず、93%の共和党員は、2012年にロムニーを支持しました。2008年11月、ヒラリー・クリントンとの長い戦いの後で約89%の民主党員がバラク・オバマを支持しました。

しかし、私たちは新しい時代に突入してしまったかもしれません。それはより大規模にアメリカの歴史を描きなおそうとしています。時折、ほんの少しだけ党派を超えての投票がされているようです。その割合は以下の通りです。1952年からの選挙で、片方の党の投票者が自分たちの党の大統領候補に敵対して投票した割合(例えば、民主党が共和党や他の第3党に投票する場合)を示しています。ここにはたくさんの魅力的な政治史が現れています。しかし、一つ見えてくるのは、揉めた選挙ほど重要であるということです。

<自分の所属政党ではない党に投票した党員の割合>

選挙年 民主党 共和党(詳しい図は原文リンク参照)

例えば、1972年を見てみましょう。民主党員の3分の1がジョージ・マクガバンではなくリチャード・ニクソンに投票しました。マクガバンは党内の投票では約4分の1しか獲得しなかったにもかかわらず民主党の候補を勝ち取りました。

例外もあります。1976年、党内でロナルド・レーガンが苦戦していたにもかかわらず、ジェラルド・フォードに対して共和党員は比較的一枚岩におさまっています。そして、党が二つに割れてしまっていることは、一つも選びとるべきものがないのに比べれば大した問題ではないという意見もありますが、2008年にはオバマに際してかなり高いレベルでしっかり団結していました。

しかし全体として、党内の選挙期間中での党の結束具合は11月の結果に関するより信頼出来る伝統的な予測方法のひとつです。これは共和党にとってトランプ、マルコ・ルビオ、テッド・クルーズ、ジョン・ケーシックの誰を選ぶにしてもしこりが残り続ける問題です。かなりの数の共和党員が各々腹をたてるでしょう。

だからといって必ずしも共和党が負けるということではありません。私は、デービッド・プロフのトランプが出てくる総選挙はかなり予測のし難いものであり、トランプは地滑り的に負けることもあるし、かろうじて勝つこともあるという評価に同意します。「しかしもし、私が反トランプの地滑りに賭けないとすれば、またその正反対の可能性にも賭けないでしょう。大統領選挙はかなり僅差になるという予測それ自体は、過去の実例のわずかな不確定性に基づいています。2000年以降の4回の選挙のうち、3回はかなり僅差でしたが、1952年から1996年の間のほとんどはそうではありませんでした。そこで、トランプが候補に上がったことでかなりの議論を呼ぶかもしれません。1968年から1980年にあった、もっとも最近の政党再編では、かなり競り合った選挙(1968、1976)とちょっとした騒ぎ(1972、1980)をもたらしました。

結局、投票者の行いが重要なのです。また、共和党の上層部がトランプに対してどのように振る舞うのかというのを見ることも同様に重要です。今週、Twitterでは #NeverTrump  というハッシュタグの裏で多くの活動が行われました。様々な保守層の識者と指導部が11月にトランプを支持しなくて済むようにと祈っています。ルビオ自身はトランプと真っ向から敵対するのかについて疑問を持っていますが、彼のTwitterアカウントもこのハッシュタグを利用しています。

#NeverTrump  の活動に参加している人たちが実際にトランプ支持にスイッチするということはかなりありうることでしょう。民主党候補指名を受ける可能性の高いクリントンはかなり賛否両論の人物です。一部のアンチ・トランプ保守の人たちはトランプのことをこの二人ならまだマシな方だと結論付けています。その他の人も選挙の魔力に魅せられてしまいます。選挙の最中にトランプが自分をどのようにコントロールし、誰と選挙活動を行うかによって一部の人は安心するかもしれません。

もしもこの国がトランプに完全降伏するならそれもまた同じくらい驚くべきことでしょう。その代わりに、共和党上層部に多少の抵抗を期待するかもしれません。今回の選挙の教訓の一つは、保守に属する人たちよりもMovement Consevativesにウケの悪そうな状況であることです。下品で群れたがる共和党の投票者たちは必ずしもみんな自分の主張を持っているわけではないし、一部の人がそうなることを拒む中で、なにかしらの党内の派閥に吸収されるかもしれません。彼らはトランプの政治観以上にその人格について気にしています。

しかし、Movement Conservativesの層というのはあって、彼らはソーシャルメディアに莫大な影響力を持っており、ラジオやテレビその他のメディアで政治の話をしています。そして、Movement Conservativesの立場で考えれば、トランプというのはほぼ間違いなく最悪の選択肢です。トランプは自分の属する保守勢力を率いて、共和党を予想もできないようなナショナリズム、ポピュリズム、大きな政府とトランプ主義の共同体に作り変えるでしょう。

こうした保守傾向の立場なら、11月にトランプが敗北することを望んでいるのが自然です。トランプがとりわけ大差で敗れれば、彼の知名度や政治生命はおそらく信頼されなくなるでしょう。彼が大統領候補になるなんておかしなことなのです。他に例のないブラック・スワン状態などというのは先回りして封じてしまうべきです。2020年にはまた挑戦する機会がやってくるでしょう。今回トランプが大統領になれたのはクリントンに対してかなり割のいい勝負が期待できたからです。彼女は全然人気がないにもかかわらず、より人気のないトランプのおかげで四度目の正直として民主党候補の座につくでしょう。

しかし、トランプが11月に勝利すれば、共和党の会合本部をトランプタワーの頂上に移設した方がいいかもしれません。共和党の再編は水面下で進行中です

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