性の平等。パトリシア・アークウェット、キャリアをかけたスピーチ
原文:http://variety.com/2016/scene/vpage/jennifer-lawrence-patricia-arquette-equal-pay-women-dinner-for-equality-1201716149/
writer:David S Cohen
献身的な活動家でもある女優のパトリシア・アークウェットは、必ずしも人目につくわけではない場所で草の根の活動を続けてきましたが、彼女の努力の効果は彼女に最大の足枷を課すというかたちで結実したかもしれません。
2015年にアカデミー助演女優賞を受賞し、彼女は表彰台の上で女性に平等な報酬と権利を要求するスピーチを行いました。オスカー受賞者の政治的なメッセージの籠ったスピーチはさほど目新しいものではありません。しかし、彼女の20秒間の抗議の声は、それまでの授賞式の壇上での感謝や抗弁には前例のないほど世間に影響を及ぼしたようです。
アークウェットを駆り立てる性の平等は、それが本当の意味で成し遂げられるまで抗議の声が止まないでしょう。このときのスピーチの衝撃は、仲良しの仲間で開催される「Dinner for Equality(平等のための夕食会)」の中心議題でした。この会はアークウェットとセールスフォースのCEOマーク・ベニオフによって火曜日の夜にロサンゼルスのハンコック・パーク地区にある個人邸宅で開催さています。
招待客たちの集まる席でアークゥエットはVriety誌に向かい、自分が今、オスカーで行った挑戦的な行為の代償を腹ていると思っていると語りました。そのせいで彼女はすでに2つの出演案件を逃したようです。「別にいいんです」と彼女は言います。「でもこれは俳優活動に関するだけのこと、俳優としての私にだけ関することというのではありません。こういうことは誰にとってもフェアな事態ではありません。私は本当に公正な機会と可能性を持ちあわせていて、あらゆる人種や性別を平等に扱うような国にこのまま住み続けたいと思っています。」
アークウェットがそのような犠牲に得心している理由のひとつは、彼女のオスカー壇上でのスピーチが持つ影響というのは予測可能なものだったからです。夕食会に招かれた人たちによれば、アークウェットの主張は2016年に発行されるカリフォルニア州の男女平等給与法案通過を助けました。これはアメリカで最も成立困難な平等法案と呼ばれていたものです。議会の席で給与の不平等を見直し改善するにいたるまで議会で議論が白熱しました。
この昨年の進展によってアークウェットとベニオフは自分たちの活動に世界中を巻き込むよう触発しました。娯楽、政治、ビジネスそして政治活動まで火曜日の夕食会に巻き込んだのです。女優のジェニファー・ローレンスが、実業家のイーロン・マスク、女優のリース・ウィザースプーンらとともに夕食会に参列したのです。リリー・トムリン、マリサ・トメイ、マリア・ベロ、ミンカ・ケリー、ジェームズ・ヴァン・ダー・ビークといったハリウッドのスターたちがこの会には参列しています。インディア・アリーやスティービー・ワンダーといった音楽界のスターもここには参加します。二人は会の最後にちょっとしたショウを披露するようです。
ビジネス業界からは、ファーマーズ保険グループのジェフ・デイリー、カイザー・パーマネント(健康維持機構形態の保険会社)のバーナード・タイソン、ブローロバンドTVのシェヘラザード・ラファティ、インテルのブライアン・クルザニッチ。政界からは上院議員ハンナ・ベス・ジャクソン。Equal Rights Advocatesのエクゼクティブ・ディレクターであるカマラ・ロペスやノーリーン・ファレルといった活動家。Feminist Majority Foundationのエグゼクティブ・ディレクターであるキャサリン・スピラーや、EPA連合の総裁であるジェシカ・ニューワースも参加しています。
こうした影響力のある人たちがこのイベントには参加しています。主催者側はこの状態を続けていきたいと思っています。彼らはオンラインに飾らないエッセイ形式の活動大綱を載せました。「こういうことすべてを公の場で話すような人間というのはちょっと奇妙ですよね。その話の矛先がすぐに自分に向くわけですから。」と彼女は言います。「このエッセイを載せたとき、私にはたくさんの支持者がいました。でも、ケンタッキーに住んでいた共和党員でもある私の親族は、私のキャリアの致命傷になるとも言いました。」
ジェニファー・ローレンスは、自分たちがポスト・フェミニストの時代に住んでいるという考えから脱却することが極めて重要だと言います。「そんな言葉、誰が思いついたんでしょうね。私たちのやってることに最悪の効果を及ぼす言葉です。フェミニズムが終わったというのは本当のことじゃないんですから。」
集まった人たちにジャクソン議員はこう言った。オスカーでのアークウェットのスピーチを見て、彼女はすぐに自分のスタッフを集めこう話したという。州議会に平等給与法案を明日にでも導入しなければならない、と。その後、ジャクソン議員はアークウェットの会合に参加し法案可決への支持を呼びかけました。
平等給与法案関連の活動には多くの支持が集まりました。そして議員や党を巻き込み、圧倒的な力で10月には可決にこぎつけました。アークウェットのスピーチから約7ヶ月後のことです。
ジャクソンはVariety誌にカリフォルニア商業会館は部分的に法案を支持しました。彼らにとって女性の給与不平等は経済的な問題だったからです。「その不平等に関して、私たち女性には390億ドルというお金がかかっていました」とジャクソンは言います「もしもそのお金が手に入れば、女性の所得がその分増えるのです。それは経済の推進力となるでしょう。その効果は商品やサービスの面に影響を及ぼすはずです。ビジネス業界はここから起こる事態に興味を注がれるでしょう。」
法案可決への努力と並行して、セールスフォースの重役たちがベニオフと自社のCEOのもとに駆けつけ、当社の給与体系の審査を依頼しました。ベニオフはなんの問題もないと言いましたが、審査を受け入れました。「約6ヶ月かかりました。全部手作業だったので」セールスフォースの重役、副社長である、人事部の管理も任されているシンディー・ロビンスはそう語ります。「うちには2万人の従業員がいます。いくつか男性についても女性についても給与の不平等も見つかりました。その落差を埋めるには300万ドルかかりました。」
Equal Rights Advocatesのファレルはベニオフの行動を賞賛しています。「彼はこう言ったんだ。『僕が女性の平等をセールスフォース社内改革の最優先課題にしたらどうなると思う?』って。つまり彼は、パトリシアがハリウッドでやったことをビジネス業界でやろうとしたんだ。我々の支持者や労働者にはこういう新しいことができる影響力のある人物が必要なんだ。
ベニオフは夕食会でこう言いました。給与の不平等を調整することはCEOにとってなかなか難しいというのはわかっている。大きな不平等部分を修正すると、実際にそこで生じる必要経費と会社の指導部の仕事のバランスとをとらないといけない。しかし、彼は他の事業主たちもこの取り組みをすべきだと主張します。
ソニーのハッキング騒動は、有名人にも一般社員にも給与の不平等があることを明らかにしました。そのことがハリウッド自体のジェンダー問題に注目を集めさせました。しかし、アークウェットはこの問題がエンタメ業界に限ったものではないと主張します。
「あらゆる業界に通底しています」と彼女は言います。「私は自分がいる業界だけこうした不平等があるといった話をすることは好みません。事実ではないからです。」
ファレルはこう強調します。カリフォルニアの平等法案が進行中のときに、ソニーのハッキング騒動によって晒されることになった不平等の類は、現在そして将来起こりうる企業の問題を提起しました。彼女は、ハリウッドも含めて、こうした問題に際してあらゆる企業に適応可能な3つの対策を引き合いに出します。新しい給料体系を決めるのに、過去の履歴を信用しないこと(過去の給与体系は過去の差別を反映しているからです。)。給与額決定の尺度を透明化すること。
「私は、監査を受けるまでに、自分たちが性別によって差別を行っていることを自覚している経営者に会ったことがありません。」とファレルは言います。「自社の給与体系を監査して、現状に目を向けることは、ハリウッドも含め、あらゆる企業にとって重要なことです。」
スティービー・ワンダーも会合のその場で、メーカーに視覚に障害のある人でも扱える電子機器の製造を依頼しました。「実際、中身のないことばかり大きな声で言うという人はたくさんいます。そういう人との話はまったく時間の無駄です。はっきりしているのは、もしすぐにこのことに取り組まなければ、私は大統領に関してはほとんど信頼していないのですが、実現するまでにまた何年も何年も時間がかかってしまうということです。」
「だから、政治とか、誰が大統領であるかとか、民衆党とか共和党にこの問題を任せておくわけにはいかないんです。」と彼は付け加えます。「女性の権利に対する私たちの強い関心は、どう考えても正しいものであり、内容のないことをうだうだしゃべっているだけの人たちの口から出てくることよりも重視されなければいけません。」
アークウェット自身、自分のやりたいことをまだほとんどなにも成し遂げていないと思っています。彼女は平等な権利に関する憲法の改正を擁護しており、女性の経済的な役割の強調に尽力しています。
「私たちの国には何千万ものシングルマザーがいます。」とアークゥエットは言います。「そして、彼女たちは男性よりも給与が少ないせいで本当に苦難を強いられています。3300万の女性と子供たちが貧困に苦しんでいます。それもフルタイムの仕事を行っているのにかかわらずです。もし彼女たちが十分な給料を得られれば、貧困から抜け出せるでしょう。豊かにまではならないとしても、貧困ではなくなるのです。」
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