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マルコスのPKはなぜ止められたのか〜12の成功と1の失敗〜

ご無沙汰してます、元GKマリサポのmarbleです。ついにJリーグが開幕しましたね!C大阪との試合で幕を開けたF・マリノスの2022シーズンですが、その試合でいきなり衝撃的な出来事が起こりました。

それは、マルコス・ジュニオールが、来日以来初めてPKを失敗したということです。

止められた瞬間の僕:「えええええ!!話が違うやんけ!!!!」
数秒後の僕:「なんで止められたんだろう?てかなんで今まで止められなかったんだろう?」

てことで、調べました。そしたら色々と面白いものが見えてきたので、共有したいと思います!!

それじゃLet's go

12本から見るマルコスのPK

キムジンヒョンにPKをストップされるまで、マルコスは3シーズンで12本のPKを蹴っています。この12本のPKの動画を全て見て、概要を表にまとめたのでご覧ください。

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まずは、マルコスのPKの蹴り方の話から。

映像を見る限り、マルコスがキックの直前まで相手GKの動きを見ている様子は見受けられません。また、表の一番右の列を見てもわかる通り、GKの逆を突く回数も多くありません。それらの事実から、マルコスはGKの動きを見てコースを決めるのではなく、初めからどこに蹴るか決めていると推測できます。

また、マルコスのキックフォームにも特徴を見つけました。

マルコスは、左に蹴るときも右に蹴るときも体の向きが同じです。もっというと、常に右に蹴るように見えるフォームで蹴ってます。

(注)この記事では、マルコスから見た「左」「右」で話を進めていきます。

選手がボールを蹴るとき、右に蹴るか左に蹴るかで体の向きが変わります。右利きの選手が右に蹴るとき、上半身は少し右を向きます。逆に左に蹴るときは、上半身はほぼ正面か少し左を向きます。そうでないと、人体構造的に蹴りにくくなって精度が落ちるからです。しかし、マルコスは、右に蹴ろうが左に蹴ろうが上半身を右に向けているんです。もちろん意図的に。よって、GKからすれば「右に蹴って来る!」と思うのです。

実際、表の「飛方向」を見てみると、1本目と2本目に対峙した前川とランゲラックは右に飛んでいるのがわかります。

3本目ではランゲラックは左に飛んでいて、マルコスは右に蹴ってます。同じ試合で2本というなかなか珍しい状況下で、「さっきは右飛んだから左飛ぼう」とか「2連続で左に蹴ってくるかも」とかいろいろ考えがちです。迷った結果左に飛んだのではないでしょうか。また、マルコスも「2連続同じコースはやめよう」と思ったのでしょう。

4本目の秋元との対戦では、体の向きでのフェイントに加えて、助走のフェイントもありました。

もう一人の僕:「あれ、でも秋元は騙されずに左に飛んでるよ?」

そうなんです。ただ、おそらくこれは偶然ではないです。

秋元が左に飛んだ理由は、「前川とランゲラック(1回目)で左下に蹴っている」という情報をアナリストからもらっているからだと思います。「コースの第一候補が左下であることは間違いなさそうだ」と湘南の陣営も気づいていたのでしょう。

そして実際マルコスは左に蹴ったわけです。。。

この4本目で、おそらく全てのチームが気づいたでしょう。

「マルコスは体の向きに関係なく左に蹴る」と。

なんとそれ以降、全GKが左に飛んでいます。

にもかかわらず、マルコスはその後たった3回しか右に蹴ってません。しかもそのうち2回は、手の内を知られている飯倉と対峙3度目のランゲラックです。ランダムに右に蹴ったのはvs六反だけ。

わけのわからない僕:「逆になんで六反のとき右に蹴ったんだよwww」

「この辺で一回右に蹴っとくか〜」くらいのテンションだったのかな...?

ただ、1回右を挟んだだけ。データは圧倒的に左下。ブローダーセンも波多野も左に飛んでますし、マルコスもしっかり左下に蹴ってます。笑

なのに、決めてるんですよ。

マルコスは、相手にコースを読まれていて、その上でゴールネットを揺らしてきました。

もう一人の僕:「なんでコースバレバレなのに決めれるの?」

気になりますよね。それはどうしてかと言いますと、、、


シュートがうますぎるからです。


いやこんだけ力説しといて結論それかよ!!!!!!!

すみません!!!でもそれだけじゃないんです!!!(焦)

GKが止められない理由はちゃんとあります。

では、想像してみてください。
『あなたは一人の選手です。試合中、味方がエリア内で倒れてPKを獲得しました。キッカーはあなた。味方からボールを受け取り、セットしました。』

はい、この状況。この瞬間に、無限の選択肢からコースを選ぶよりも、「このコースに蹴りなさい」と元から決められていた方が、迷いなく蹴れませんか?

しかも、そのコースは常日頃から練習している、何百回も蹴っているコースです。

だからマルコスはどんな時でも左下きわきわのコースに常に蹴り込めるわけです。
ルーティンとメンタルって、力を100%発揮するためにとっても大事。マルコスはそれを理解しているのでしょう。

そして極めつきに、マルコスは常に右に蹴るフォームで蹴ってるわけです。GKは、たとえ「ほぼ必ず左に蹴ってくる」とわかっていても、それに従うということは、相手のフォームを見た時の直感に反するということです。そう考えたら、vs六反で見せたたった1回の右って、GKからしたらとんでもなく嫌なんですよね〜。

なぜ止められたのか

そして迎えたキムジンヒョンとの対戦。マルコスは、この日も体の向きは右に蹴るフォーム。もちろんそんなことお構いなしに、キムジンヒョンは左に飛びます。

ここまでは今までと同じ。

でも、聞こえてきたのは、マルコスの放ったボールがネットを揺らす音ではなく、キムジンヒョンの手がボールを弾く音でした。

「今までと何が違ったのか」

結論としては、

「コースがいつもより甘かった」

これに尽きます。

映像を確認すると、腰の捻りがいつもより甘かった印象でした。いつもは地を這うような低いボールを左下の隅に蹴りますが、今回は少しだけ高く、少し内側に寄ってしまった。マルコスが左に蹴ることがわかっていれば、あのコースでは止められてしまいます。

では、"ただの"ミスなのでしょうか。そうではないと僕は思っています。

あの試合は、どんな試合だったか覚えていますか?

そう、開幕戦です。

「コンディションがまだ戻っていない」
「シーズン真っ只中と比べ、ルーティン化されるほどPKの練習をまだしていない」

挙げられる要因としては、こんなところでしょうか。特に、常に同じコースに蹴り込んでいるマルコスのPKでは、ルーティン化、機械化の重要性は非常に大きいでしょうから、それがまだ為されていない段階であったならば、ミスを引き起こす理由としては納得がいきます。

ミスした理由は完全に憶測ですので、あくまで参考程度に留めておいていただけると幸いです。

最後に

選手は人間です。ミスがないなんてことはありえません。でも、マルコスはまるで機械かのようにPKを決めてきました。今回、マルコスのPKを調べ上げて、今まで彼にそれができた理由がよく分かりました。

今後マルコスが左右均等に蹴るかというと、それはないんじゃないかと僕は思います。理由はここまで書いてきた内容が全てです。ただ、1シーズンに1本くらいはvs六反の時のような"牽制としての右"は使ってくるかもしれません。次の1本は、マルコスのプライドとしても、左下隅に完璧に決めてほしいなというのが僕の気持ちです。

長々と僕の研究と意見を読んでいただきありがとうございました。
また気になることがあれば書こうと思います。では。

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