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生涯の伴侶 タンノイ・レクタンギュラーGRF①

皆さんこんにちは。
ヴィンテージオーディオとの出会いから20年がかりでやっと手に入れたコーナーカンタベリーまでのストーリーを書いてきましたが、実は昨年、コーナーカンタベリーは2セット(オリジナル、ユートピア製)ともに売却しました。
ずっとヨメさんの部屋に置かせてもらっていましたがなにせ邪魔だし、貴重な文化遺産を鳴らさずに置物にしておくのは忍びなくなったのです。
おいおい、あんなに熱く語っていたくせに売ったんかい!…と突っ込みを入れられても仕方ないのですが、年齢とともに趣味嗜好も変化しますので…。温かい目で今回の記事をお読みいただければ幸甚です。


・嗜好の変化
オリジナルのコーナーカンタベリーを聴きはじめ約7年、ユートピア製の国産エンクロージャーを含めるとかれこれ30年もの間、Moniter RED 12を聴き続けてきたことになる。毎日あーでもないこーでもないとセッティングに勤しみ自分の中では満足のいく音になったと思っている。
しかし、人間30年もすると聴くものに変化も生じる。
昔は小編成のジャズ、またはクラシックだとソナタを中心に聞いていた。オーケストラ入りとなると協奏曲ばかり。ところが年が嵩むにつれ交響曲に心を惹かれるようになってきた。そうするとソナタや小編成、ジャズを上手く鳴らしてくれていたコーナーカンタベリーではどうしても物足りなさを感じてしまう。
しかし、若い頃に札幌音蔵でコーナー型のGRFもさんざん聴かせてもらったが自分にはブーミーで全くピンとこなかった。

・はじめてレクタンギュラーGRFを聴く
そんな折、オーディオの師匠として尊敬の念を抱いていた…その名もGRFさんがイギリスからレクタンギュラーGRFを輸入された。GRFさんはコーナー型のGRFをデジタルアンプで鳴らされている界隈ではかなりの有名人。あの方が惚れ込むくらいなのだからさぞいいのだろう…と無意識に思っていた。そして時を置かずしてとある場所でレクタンギュラーGRFを聴く機会に恵まれた。聴いたのは古いバックハウスのベートーベンピアノ協奏曲5番だ。

・タンノイ最後の名機 Monter GOLD 15"
その音は圧倒的に柔らかくどこまでも自然。実はMoniter REDはSILVERやGOLDと比較すると、スタジオモニター寄りの音でどうかすると高域が耳をつんざくように鳴る。しかしMoniter GOLD入りのレクタンギュラーGRFは決してそういうヒステリックな音は出さない。純粋に家庭で音楽好きが聴くための鳴り方をしてくれる。Moniter GOLDはタンノイの長い歴史の中で工場消失前の最後の名機だと思う。
もう一つは12インチ(30cm)と15インチ(38cm)の違い。当然だが15インチの方が低域は良く出る。

・レクタンギュラーGRFのエンクロージャー構造
そしてもう一つの大きい要因はエンクロージャーだ。
レクタンギュラーGRFは五角形のコーナー型ではなく箱型(レクタンギュラー)のスピーカーだ。
コーナー型時代のタンノイのように積極的にハコを鳴らす手法ではなく、厚みのある合板のエンクロージャーの中にバックロードホーンを入れ子式にした強固な作りだ。叩いてみてもコーナーカンタベリーとは違いびくともしない。
アメリカ向けの通称アメリカタンノイが同様の形のエンクロージャーで売られていた。しかし材質も違えばチューニングも異なる。

サランネットを外した状態
15'(38cm)のMoniter GOLD
コーナー型のGRFやオートグラフと同じユニットだが
エンクロージャーの違いで性格はだいぶ異なる

音場については前後左右の自然な広がりの中にちゃんと”床に据えられたピアノ”が鳴っている様子が見える。それはもうコーナー型とは全く違った音楽鑑賞のための音場表現だった。その瞬間、あれ程恋焦がれて20年掛かりで手にしたコーナーカンタベリーの音が色褪せて見えてしまった。そして暫くは帰宅しても鳴らす気になれずぼーっと過ごした。


レクタンギュラーGRFが我が家へ
そして2016年の夏、例のGRFさんが増えすぎた機材を整理するため、あのレクタンギュラーGRFを手放されるという。
ぼくはすぐさま連絡を取り是非、引き取りたい!と申し出た。
ぼくが如何にレクタンギュラーGRFを気に入っているかはGRFさん(名前がややこしい)はよくご存じだったので、格安で譲っていただけることになった。
大切に運びたかったので当初はピアノ運送業者などに依頼しようと思っていたが、GRFさんからカローラクラスのバンで充分いける…と言われ、レンタカーで長野県の別荘まで引き取りに行った。

・QUAD ESL
到着後にレクタンギュラーGRFとQUADの平面スピーカーESLをQUADの44+405Ⅱで聴かせていただいた。

平面スピーカーの名機
QUAD ESL
まるで電気ストーブのような姿
QUAD 44 プリアンプ
QUAD 405Ⅱ パワーアンプ

さすがは尊敬するGRFさん!それはもう家庭で音楽を鑑賞するシステムの理想形のひとつだった。自宅にいつでもオーケストラを呼んで演奏してもらえるレベルだ。まるでコンサートホールの後方席で聴いているよう。

そしてその後、男性二人がかりでもかなり重量のあるレクタンギュラーGRFをレンタカーに慎重に積み込み自宅へと向かった。
…つづく

#TANNOY #GRF #タンノイ #ヴィンテージオーディオ

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