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恩返し

若い頃の自分は自身の足で立って勝手に生きている…などといきがっていた。兎に角トンがっていたし何事も白か黒かをはっきりさせたかった。特に仕事においては誰にも負けたくなかったし他人が「1」やっているなら自分は「10」やればいいとがむしゃらに働いてきた。
それは家族を持っても変わることなく結構いい年までそんな感覚で生きてきた。

そんな気持ちに変化が訪れたのは2度目の結婚が破綻した時だと思う。
相手は悪魔の病と言われる「境界性人格障害」だった。大袈裟じゃなく毎日が戦争のようだった。仕事に疲れ果て帰宅しても夜中に起こされる。仕事中も「直ぐに帰ってきて」と電話が掛かってくる。最後は自殺未遂で警察沙汰になり閉鎖病棟入りした。
自分は意志が強く決めたことは必ずやり遂げる…と思っていた。でも最後に辿り着いた結論は”人は神にはなれない”ということだった。人間は病ひとつどうすることもできない弱く儚い生き物。だからこそ寄り添いあい助け合って共生していく。

今、振り返ると如何に自分はこの世の中に”生かされてきた”のかがわかる。社会、人、環境など全ての物事は共生して生きている。そんな至極当たり前のことすら若い頃には理解できていなかった。

会社人生を終えて”死”というものを昔よりずっと身近に感じる中、考えることがある。
自分のできる範囲でいいから恩返しをしていきたい。恩返し…などと言うと烏滸がましいが、ボランティアをはじめるとかそういう類のことではなく日常の自分の行動範囲内でのこと。もし誰かができないことを自分にやることができるのであれば一緒にやってみたいと思う。

畢竟、人は救い救われ生きていく。


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