2023年3月15日の仮日記

今日の朝のことだけども、きまぐれで図書港に行ってみたら木のラックみたいなものがたくさんならんでいて、中をのぞいてみるとぎっしり本が詰まってた。
全部のラックがぎっしりだ。
書漁師の人が綴船 つづりせんからどんどん本を降ろして、でっかい箱に投げ込んで、そうすると円盤がついた機械みたいなのが本をどんどん送り出してラックの中に詰め込んでいく。おもしろくて私は熱心に見た。
あんまり人に話しかけたりはしないけど、書漁師の人と目があったので「おはようございます」とあいさつをした。そしたら書漁師の人が、一冊持ってってもいいぞ、と言うので、私はラックの中からウィルキー・コリンズの「月長石」を選んで書漁師に見せて、これもらいます、と言った。
「あんた、物語クジラを見たことはあるか」と書漁師が聞いてきた。そんな生き物は知らない生き物だったので、教えてもらうと、本の海洋にいる大きい紙魚かみうおらしい。
おいは見たことあんだよ、昔な。自慢さ、みんなに語って聞かせてるんだ」と漁師が言うので、私は話が長くなりそうな気配を察知して「ごめんなさい、今度聞かせてください。ゆっくりね」と言って図書港を立ち去ることにした。私はひどい人間だろうか。でも、あんまり興味がないのに話を聞くほうがひどいと私は思っているな。
月長石を右手につかんで、家に向かってとぼとぼ歩いていると、バレリーナがいた。バレリーナの手前にはカメラを持った人がいて、バレリーナを撮っている。バレリーナはレンガの壁に手をあててポーズを決めたりして、カメラマンは何枚も写真を撮る。
私はあんまり人に話しかけたりはしないんだけど、バレリーナと目があってしまったので「おはようございます」とあいさつをした。バレリーナは「おはよう」と言った。私はこのまま立ち去るのもなんだかもったいない気がして、何の撮影ですか、とバレリーナに聞いてみると、バレリーナは急に目を見開いて「バレリーナが足りないの。バレリーナを集めるために広告を打たなきゃ。バレリーナが足りなければ世界からバレエが減ってしまう」と答えた。私は何と言っていいか分からず「はあ」と言った。バレリーナは私の右手にある本を見て「それ月長石ね、私まだ読んだことないの」と言うので、読み終わったからあなたにあげますよ、と嘘を言ってバレリーナに手渡した。なんとなく月長石をもらってきたけど、ページも多くて長そうだし、自分が読むよりはバレリーナが読んだほうがよさそうかなと思った。
あんまり興味がないのに読んでも本がかわいそうだからね。終わり。

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