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メルカトル図法の特徴とその驚くべき影響力

GIS芸人のいりやまです。

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メルカトル図法についてまとめました。



メルカトル図法とは

 地球を一部分ごとに平らな面に投影して、それら全体を合わせて一つの地図としたものがメルカトル図法です。この図法の特徴は、地球上の任意の場所での方角と地図との間の相関関係が一定であることです。

歴史的背景

 メルカトル図法は16世紀のフラマン地方(現在のベルギー北部)の地図製作者ジェラルドゥス・メルカトルにより考案されました。その時期は大航海時代と呼ばれ、ヨーロッパ諸国が新しい海路を開拓し、未開の大陸や貿易ルートを発見しようとする時代背景があります。これに伴い、海洋を航行するための正確な地図が求められ、そこからメルカトルがこの画期的な地図製作法を発案したのです。

はじめてメルカトル図法が公に紹介されたのは1569年のことであり、それは「地球上の全ての地方を確実に描ける」という大いなるプロジェクトの一部という形でした。以来、この図法は特に海図製作において広く使用されてきました。

メルカトル図法の定義

 具体的にメルカトル図法とは、地球上の任意の点を、その点での経線方向が地図上でも縦方向、緯線方向が横方向となるように、平面へと投影する地図製作法のことを指します。この結果、地図上では縦横の方向が経線、緯線方向に対応し、地球上のどの地点でも正確な方角を示すことができるのです。

ただし、この方法には欠点があります。それは、緯度が高い地域では地域が拡大され、赤道付近では収縮されるという、地球上の実際の大小関係が歪むという点です。

なぜメルカトル図法が開発されたのか

 メルカトル図法が開発された背景には、海上での正確な航行の必要性が大きく影響しています。当時、大航海時代という未知の大陸を開拓しようとする時代では、海上での地図による適切な航行が一つのキーポイントとなっていました。

メルカトル図法では、地図上の任意の経路が実際の進行方向と一致するため、船の進行方向を地図上に正確に描くことが可能となります。したがって、航行のための地図として、メルカトル図法は正確さを兼ね備えているといえるのです。

また、よく知られた欠点である地球の大きさの歪みは、海図にとってはそれほど重要な要素ではないため、航海のためにはメルカトル図法が非常に適していたと考えられます。そのため、海洋を航行するための地図として、メルカトル図法が開発されたと解釈することができるでしょう。


メルカトル図法の特徴

メルカトル図法とは、地球全体を一枚の平面地図に投影する技術の一つで、海図や航海図として広く用いられています。これは、その特性上、地図上での経緯線の交差角が実際の地球上と同じ直角とすることができるため、方向を保持することが可能なのです。一方で形状や面積の表現については違和感があることも特徴の一つとなっています。

全体像の描写

メルカトル図法が描く地球の全体像は、我々が想定する典型的な地球の形状とは異なり、一見して違和感を覚えるかもしれません。北極や南極に近づくほど、地図上ではますます面積が大きく描写されていきます。たとえば、赤道付近の国々と比較すれば、地図上のグリーンランドやロシアは極端に巨大に見えますが、実際の面積はそれほど大きくはありません。これは、メルカトル図法が方向を重視するため、赤道から極に向かって地図上の縦軸が伸びる特性が引き起こす現象なのです。

地図上の形状と面積の違和感

メルカトル図法による地図上の形状と面積には違和感が認められます。地図上では、実際の面積比とは異なり、赤道から遠い地域について面積が過大に評価され、赤道近くの地域の面積が過小に評価されるのです。例を挙げれば、実際にはアフリカ大陸はロシアよりも大きいですが、メルカトル図法ではロシアの方が大きく表示されます。これは、地上での直線航路が地図上でも直線として表現されるよう、角度を忠実に保つための一方で、地域の形状や面積が正確には表現されないからです。

経線と緯線の直角交差

経線と緯線の直角交差は、メルカトル図法のもう一つの大きな特徴です。地球は球体であり、その上の任意の地点で経線と緯線は直角で交差します。しかし、この性質を平面地図上で忠実に再現するのは難しく、その結果、一般的にはゆがんで描かれます。だが、メルカトル図法ではその問題を解決し、経線と緯線が地図上でも直角で交差するように表現されます。これにより、方向を保持するというメルカトル図法の主要な目的を達成し、具体的には航海での航路のプロットに役立っています。


航海におけるメルカトル図法の利点

航海のための地図作成に広く使用されているメルカトル図法。この図法にはたくさんの利点があり、その中でも特に航海における利用の価値を高めている点を今回は取り上げます。地球を二次元平面に投影するための一つの方法であるメルカトル図法、その一貫性と正確性は海洋探検家たちにとっての重要な道具となっています。

方角の一貫性

その最初の利点は方角の一貫性です。 メルカトル図法は、北を上にしたまま地球を平面に投影し、東西方向のスケールと南北方向のスケールが一致するようにデザインされています。この特性により、すべての点で方角が保持され、直線は一定の航行方向を示し続けます。この方角の一貫性は、船舶が目的地に進む際のデッドレックニング(推算航法)を容易にします。例えば、北に10度で進むという指示があれば、その方向に一定の進行を続けるだけで良いのです。これにより、位置の推定と航法がより簡単かつ確実になります。

航海図としての使用

さらに、航海図としての使用が可能というのもメルカトル図法の大きな利点です。航路や陸地、そして海洋の自然的要素を示すための効果的なツールとなるのです。これにより、船舶の現在位置や進行方向、そして目的地までの距離を簡単に確認することができます。加えて、自然的要素や地形の表示も明確であり、それらを考慮した航路設定を可能にします。そのため、何か問題が発生したときにも、すぐに対策を練ることが可能となります。

地図学におけるメルカトル図法の影響

メルカトル図法と聞けば地図学者でなくても、すぐにピンと来る人も多いでしょう。16世紀にベルギーの地図製作者であるゲラルドゥス・メルカトルによって導入されたこの図法は、北極や南極へ向かうほど大きさが拡大する特性を持っています。航海への影響は計り知れず、航海のシフトに大きく寄与しました。

地球の規模感の誤解

メルカトル図法が示す地球の規模感は、実際の大きさとは異なります。例えば、アフリカ大陸とグリーンランドを比べると、メルカトル図法ではグリーンランドの方が大きく見えますが、実際にはアフリカ大陸の方が大きいのです。これはメルカトル図法の特性によるもので、地図の上部や下部に位置する地域ほど大きく表示される傾向があります。このような性質が、地球の真の規模感に対する誤解を生む一方で、航海の安全性を高めるという大きな役割を果たしています。

文化的・政治的影響

地図とは、物理的な地理情報だけではなく文化や政治によっても大いに影響を受けるメディアであり、メルカトル図法も例外ではありません。誤った規模感は文化的な意識にも影響を与え、特定地域の優越や劣等感を生む場合もあるのです。その一方で、政治的な観点からすると、メルカトル図法は欧州中心の視点を補強し続ける力を持っていました。これらの文化的、政治的な影響は、地図学だけでなく、我々の社会に対する理解を深める上でも拾い上げられるべき点ではないでしょうか。

他の地図投影法との比較

メルカトル図法だけが地球の姿を描く方法ではありません。他の図法と比べてみても、その特異性、利点、欠点は明らかになります。モルワイデ図法やロビンソン図法などは地球の面積をより正確に表現でき、ピータース図法は南半球の大陸をより大きく表示するなど、各図法にはそれぞれ独特の特性や特徴があります。これらの図法の比較から、地図投影法がどのように地球を「再現」し、どのような視覚的影響を与えるかを理解することができます。


メルカトル図法の代替案

 航海時代の至るところで使用されてきたメルカトル図法ですが、一方でその歪みが指摘されてきました。その最大の問題点は、南北方向の距離が実際よりも長く、赤道と極軸の間の領域が過大評価されていることです。まさに、この地図がもたらす世界観は、ヨーロッパ中心の視点から生まれたものだったのかもしれません。そして先進的な地図製作者たちは、そんな典型的なヨーロッパ中心主義を排した新たな視覚表現を求め、替わりの図法を模索していきました。

ピータース図法

ピータース図法は、フレミッシュの司祭が開発した新たな地図の試みで、距離と面積の相関関係をより正確に表現するために開発されました。彼の考えはシンプルで、等式面積といわれるその特異な形状は、地球上のすべての地域が同じ面積を持っていることを示しています。

この図法は、国や大陸の相対的な面積を正確に示すことで、世界の見方を真に平和で公正なものへと変革するという彼の理想を象徴しています。しかし、その特異な形状が受け入れられず、広く普及するには至りませんでした。現代では、様々なメディアを通じて、その理想を広めていく試みが続けられています。

等面積図法

等面積図法は元々、地理学者たちが地球全体の地形の規模を正確に比較するために開発されました。南北方向の距離を適切に表現できるため、地表の面積が正確に比較できます。これにより、地球全体の地形や国家の規模を比較する際のバイアスを排除し、より正確な比較が可能となるのです。

しかし、等面積図法にもデメリットがあります。それは、形状が歪みやすいという問題です。地球の曲率をフラットな地図上で表現しようとすると、必然的に形状が歪むのが一般的です。等面積図法は面積を優先させるがゆえに形の歪みを許容せざるを得ません。

ゴールドハマー図法

ゴールドハマー図法は、地球表面全体の形状や面積を最大限に再現するために開発された丸い地図です。地球の球形を再現するため、距離も形状もほぼ正確に表現されており、視覚的な歪みも少ないというメリットがあります。

しかしこの図法の欠点は、一部の地域が見づらくなってしまう点です。特に、地球の極に近い地域は、地図の縁部分となるため、詳細が見づらくなります。しかし、南北方向の視覚的バランスを保てるゴールドハマー図法は、地球全体の視覚化を目指す際に有用であるといえるでしょう。


メルカトル図法の現代での使用

 世界を一覧できる地図として、哲学者であり同時に科学者であったメルカトルが発表したメルカトル図法は、その独特な投影法の具体性から多くの場面で利用されています。リアルタイムで地球全体を描写するための有効な手段とされ、今やその存在は、我々の日常生活や科学技術の発展を支える重要なツールとなりました。

Googleマップの採用

Googleマップは、今や私たちの生活に欠かせないツールとなり、様々な場面で役立てられています。メルカトル図法はその中で際立って使用されており、航海図としての信頼性を背景に世界全体をリアルに表示することができます。地球を平面に投影する際の誤差を最小限に抑えるため、この図法が導入されています。Googleマップは、私たちが目的地へのルートを繰り返し探し、それを改善するための重要なツールとなっています。ナビゲーションツールとして、メルカトル図法の重要性は計り知れません。

教育と科学研究における使用

 メルカトル図法は教育の舞台でも大活躍しています。地球科学や地理の授業では、この図法を利用して地球全体を総覧し、緯度や経度の理解を深めるために使用されています。さらに、気象学や天文学の分野でも役立てられ、科学研究の一助となっています。この図法を使うことで、地球上の特定の範囲を細かく観察し、地球全体の動向を予測することも可能になります。このようなメリットから、教育現場や科学研究の場では不可欠なツールとなっています。

持続的な批判とその影響

 しかし、メルカトル図法は持続的な批判を受けています。その最大の問題点は、地球の形状を正確に再現できないことです。具体的には、極地に近い地域の大きさが過大に描かれ、(特に南北方向の)地球の形状が歪むという問題があります。これは、特に後進国や途上国など地図上の位置が低緯度地区に位置する国々にとって大きな影響を及ぼすことがあります。このような問題は数々の批判を引き起こし、地図製作の際の留意点となっています。それでもなお、その利便性と可視性から、メルカトル図法は現代でも広く使用されているのです。


メルカトル図法の未来

500年以上にわたり、地図の投影法として世界中で使われ続けてきたメルカトル図法。しかし、時代とともにその役割は変化し始めています。テクノロジーの進歩を契機として、この古典的な図法は新たな可能性を秘めた未来へと進んでいます。進化するテクノロジーとともに、メルカトル図法もまた新たな段階へと進むでしょう。

デジタル化への移行

近年では、ソフトウェアやウェブ技術の発展に伴い、情報のデジタル化が進んでいます。これにより、メルカトル図法による地図も、紙の形状からデジタルの形状へとシフトしていきます。デジタル化により地図のアクセス性は高まり、また、情報の迅速な更新、詳細化、さらには個々のニーズに合わせた地図作成が可能となります。このようにデジタル化は、メルカトル図法の可能性を新たな次元へと拡大する一方で、その存在意義にも変革をもたらしています。

海上の航行技術の進歩とメルカトル図法の関係

航海術の進歩とメルカトル図法は密接に関連しています。彼の地図投影法は、海上での航行を容易にするために開発されたものです。一定のコースを維持することで目的地に向かうという、航海時の基本的な考え方を、地図上でも同様に表現することが可能となりました。現代では、GPSなどの先進技術が主流となっていますが、メルカトル図法はその基礎となる考え方を提供しています。航行技術が進化するにつれて、地図投影法もまたそのニーズに合わせて進化していきます。未来の海上航行も、メルカトル図法が存続し、進化し続けることにより、より簡単かつ安全になるでしょう。



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