オフに充実のトレーニング 打率3割達成し吉報掴む!
VOL31 捕手 矢野泰二郎(やの・たいじろう)背番号2 4年目
彼は昨年10月26日、チームメイト6人と共に松山市内のとあるホールでドラフト会議の行方をまんじりともせず見守っていた。彼にNPB球団から(指名に向けた)調査書が届いたのは初めてだった。だが、彼の名前が呼ばれることはなかった。「悔しかったです。でも、(指名されなかったことで)NPB入りにかける思いは強くなりました。だからこそオフにあれだけのトレーニングができたんだと思います。これまでで一番充実したオフでした」。
肉体改造・体質改善も
彼は昨秋以降、積極的に様々な手だてを講じた。その1つが体作りで、肉体改造・体質改善を図ろうと、体脂肪中心に10㎏減量し、その分筋肉量を増やした。そのため寮での自炊による食生活を改善し、「脂肪が付き易い食べ物を減らし、野菜を積極的に摂り、ビタミン摂取の料理を心掛けました。食生活を変えれば体も変わります」。併せて体幹を鍛え、走り込みや筋トレを徹底した。自らを節制し、よりハードなトレーニングを推し進めたことで「体は確かに強くなりました」と話す。直接的にはNPB入りを睨んだものだったが、「僕は入団以来毎年何かしら体の故障に悩まされており、それがこの前期故障が全くありませんでした。オフに取り組んだことがよかったんだと思います」。野球人としての自覚やプロ意識が高まった証でもあった。
前期は29試合でマスクを被った。名実ともにパイレーツの正捕手だ。打率は.271の5打点・本塁打1・四死球12。「もっとやれたという反省はありますが、打率は過去3年間2割前後だったので、それを考えるとまずまずでしょう」。OPS(長打率+出塁率)も昨年の.598から.745に向上している。オフにバッティングフォームを「ボールに対してラインを作るイメージ」にリニューアルしたことも奏功したとみられる。
「しかし…」と、やや顔を曇らせるのが得点圏打率の物足りなさで、前期は.136に止まった。「僕は力んでしまうんですよ。打順は8、9番が多く、結構チャンスに回ってくるので、1本打ってやろうという気持ちが強すぎるんです」と言って頭を掻く。また、捕手ならではの視点や感覚で打席に立ち、「ピッチャーの配球を読んじゃうんですよ。それが裏目に出る場合も少なくないです」と本音をボソリ。「何も考えず無になって甘いところに来たら3球以内で、いや1球で仕留める、そんなバッティングがもっとできると得点圏打率は上がり、打率も3割に届くと思います」。
後輩選手に積極指導も
2塁への送球タイムの最高は1.79秒だという。「常時1.8秒台前半をキープしています」と付け加える。いずれも公式戦での測定だ。投手や打者との兼ね合いがあるため単純比較は難しいが、NPBの捕手と遜色ない数値だろう。キャッチング等を含めたディフェンス面のテクニカルな成長にも定評があり、練習グラウンドでは新入団の捕手3選手に惜しげもなく諸々のコツを伝授し、レクチャーする姿が散見される。これとてチームリーダーの1人としての自覚に違いない。「自分の中では今シーズンがラストイヤーだと思っています」としていて、後期に打率3割を達成し、チーム優勝と念願のドラフト指名に繋げるシナリオを描いている。