大学中退し入団2年目は勝負の年 後期こそ納得できるプレーを!
VOL28.外野手 大村 侑希(おおむら ゆうき)背番号9・2年目
入団1年目の昨年、32試合に出場し、打率.259、打点16、本塁打1本の成績を残した。「1年目は前期に左足の肉離れを患い、後期からの参戦みたいな感じでした。ですからこの成績には満足などしていません」。彼は2年目こそ飛躍するんだと、強い気持ちでシーズンに臨んだ…はずだった。
2年目の今年前期、彼の出場は1試合のみだった。打席に立ったこと自体1回だけで、結果は三振。彼の成績表にはゼロの表記が並ぶ。「当然不本意です。前期は感想を話しようがありません。守備はそんなに悪くないと思うので、バッティングの調子が上がらなかったため試合に出られなかったのだと思います。自分の力が足りないのです」。かつて松山聖陵高で4番を打ち、春の甲子園では複数安打を放った。高校3年時のみで公式戦11本の本塁打を放つパワーヒッターでもあった。そんな彼にとってこの前期は忸怩(じくじ)たる思いだったに違いない。
彼は1年目、変化球に手こずった。リーグの投手が投じる変化球のキレは学生時代の投手とは比較にならなかった。そのため今年は「バットを寝かせて、引き付ける意識の打ち方」に変え、オープン戦から新打法で投手に向かった。しかし、思うような結果は得られなかったという。彼はスタートダッシュにつまずく格好になった。「それが響きました」。また、今年のチーム作りは例年以上に脚力、守備力に重きが置かれ、脚力を備えたミート力やコンタクト力の高い新入団選手の押し上げも目立つ。レギュラーメンバーの顔触れはややもすると固定化の様相を見せ、それが徳島ISとの激しい前期優勝戦にも繋がった。それをこじ開けるのは並大抵ではないだろう。彼はそれを熟知しながらも決して腐ることなく練習に励んでいて、前期終了後もオフを返上し練習グラウンドに通い、懸命にバットを振り込んだ。
自分のバッティングを披露したい
「自分を試合に出して欲しい」「僕は打てる自信がある」…これが彼の胸の内にある本音だろう。ただ、そのためにも「先ずは練習からアピールすること。そして(試合に出たら)1打席1打席を大事にして結果を出すこと」と強く自分に言い聞かせる。踏ん張りどころであるのは言うまでもない。聖陵高卒後進んだ松山大を中退し、NPBを目指してパイレーツに入団したが、その際、「2年勝負」を心に決め、両親にもそれを伝えて中退の許しを得た。「大学でいえば今年が4年生の年であり、最後の年。シーズンはあと3ヵ月、納得のできる形で終わりたいと思います」。この生真面目で心優しい青年の、懸命な奮闘にエールをおくりたい。