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わたし的四種の神器とポテトサラダ

だいたい2年ほど前、夫が言った。

「食洗機買わない?」

もともと家事・育児はお互いがやるものという合意があったものの、勤務時間の短いわたしが主体となりがちだったけれど、このころのわたしは心が完全にやられていて家事・育児から遠ざかり気味だった。

「もったいなくない?手洗いの方が綺麗になりそうだし、水道代も電気代も上がっちゃうよ」
と否定的な意見を述べたわたしに、夫は「食器洗いは俺の仕事になりがちだから、自分のお金で買うから買ってもいい?」と畳み掛けた。

実際そのころ娘は食事をあまり食べてくれず、毎日の残飯と対峙する洗い物は特に辛い家事で、夫に頼むことが多かった。そのようなわけで、それ以上NOという理由もなく、我が家に食洗機がやってくることになった。

現在の我が家では、食洗機は手放せない存在になっている。一度壊れてしまったので、慌てて買い換えた。
食洗機が我が家に来たことの成果はめざましく、食後にキッチンに立つ時間が1/3になった。当然、出勤前や寝る前のバタバタが減った。夫が出張でいない時、もし娘と寝落ちしてもキッチンが汚れていないという安心感は大きかった。
一方で洗い物が増えることにストレスを感じないので、もともと好きだった料理もはかどった。
金銭的な面でも特に負担になることはなく、当初のわたしの否定的な考えは、完全なる危惧に過ぎなかった。


さて、我が家には洗濯乾燥機がある。ロボット掃除機もある。どちらも食洗機と同じように夫が提案し、わたしが渋り、結局購入に至った。夫からの口説き文句はこうだった。

「家事で時間がなくなってイライラするより、家電に外注しようよ」

そして結局、わたしもその便利さとありがたさを認めずにはいられなくなっている。大人が2人しかいない上、家にいる時間も限られている共稼ぎの我が家。家電に戦力となってもらって何が悪い。

と、自分に言い聞かせていたけれど、実は少し後ろめたい気持ちもあった。
ーーわたしに甲斐性がないから、お金を出して家電で解決する羽目になってしまったのかもしれない。わたしがもっとおおらかで、テキパキしていて、家事も育児もホホイのホイとできる人なら、夫はもっと楽だったのではないかしらーー。

数ヶ月前、コロナ騒ぎもまだ聞こえない頃、保育園のママさんたちとの会話で、子どもといると家事が捗らないという話になった。その時、「わたし本当に子どもといると家事ができなくて、我が家は家電に頼ってるの」と打ち明けた。少しだけ自虐的な気持ちも込めて。
すると、1人のママさんが笑いながら言ったのだ。
「当たり前だよー!乾燥機や食洗機なしで育児できないよー!」

目からウロコがポロポロ落ちた。
わたし、手抜きすぎて恥ずかしいと思っていたけれど、なんてことないことだったのね!


いえいえ。もちろん食洗機も洗濯乾燥機も、ロボット掃除機も使わずに家事・育児をこなすワーママがいることはわかっているけれど、出来る人はすごい。自分でするのが好きな人もすごい。心から尊敬します。

でもわたしはキャパがないし、余裕がないとイライラしてしまうので、家電が引き受けてくれてその分ベクトルを家族に向けて過ごせるなら、そっちのほうが向いている。
スイッチ一つで、わたしが洗うより綺麗に食器を洗って乾かしてくれ、寝る前にボタンを押せば朝にはフカフカの清潔な服があり、自力では届かないベッドの下まで掃除してくれる。控えめに言って最高。

わたしの家事スキルだとか、精神的な問題だとか、そういうものを抜きにしたってメリットがあるのだから、遠慮なく使えばいいのだ。

スマートフォン、ロボット掃除機、薄型テレビを平成の三種の神器というらしい。
それなら、食洗機、ロボット掃除機、洗濯乾燥機は育児の三種の神器とわたしは呼びたい。なんなら、電気圧力鍋も入れて四種の神器にしてもいい。カレーを作るためにキッチンにいる時間が半分以下になるなんて、感動的だもの。


世の中には色んな人がいて色んな事情があって、理想の家庭も十人十色。手作りを食べさせたいとジャガイモを蒸して作ったポテトサラダにも、子どものことを考えて買った惣菜のポテトサラダにも、ちゃんとたっぷり愛情は入っているんだよ。
わたしはお惣菜より美味しいポテサラは作れないので、買った方が娘は喜ぶもの。それだって一つの選択だと思う。

ポテサラのネットニュースを読んで、こんなに家電に頼るわたしをみたらそのおじさん(やそのおじさんと近い価値観の人たち)はどう思うんだろうと考えずにはいられなかった。いやいや、件のポテサラおじさんは、きっとこんな記事を読む人ではないんだろうな。
けれど、こういう小さな記事が重なってだんだんイズムとなって、物の価値は人によって違うという当たり前のことがいつか浸透していけばいいのにと思う。

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