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言葉の威力に完敗だった

そろそろ第2子が1歳を迎えるので、職場復帰が決まった。
通常時から「家庭保育できる日は預けない」という決まりごとはあるのだけれど、コロナ禍でルールの厳守を求めるメールが来ている。
わたし自身としても、保育園などでのクラスター発生というニュースも目にし、仕事さえなければ家でみることに異論はない。

ただ。

コロナで登園できなくなってから、ずっと我慢し通しの娘に何かねぎらう時間を作ってあげたい。
息子と3人の生活で、お母さんを弟に譲ってあげなくてはいけなかったお姉ちゃんを、甘えさせてあげたい。
土日でもいいのだけど、「それなら4人で」というだろうし、結果的に満たされないかもしれない。
どうしても、慣らし保育中に娘とデートしたい!


と、息子の保育時間が長くなったところで、娘だけ保育園を休ませることにした。

「慣らし保育中は体調が良ければ、基本的にはコンスタントに通園して慣らすので休まないほうが良い。
だったら息子を預けて娘を休ませてもどこにも後ろめたくない!」

実際は何やらめちゃくちゃ後ろ暗い気持ちになりながら、自分に暗示をかけるように正当化して強行した。

娘は母を独占できること、「抱っこ」といえばしてもらえること、「ちょっと待ってね」を言われないこと・・・
そんな「お姉ちゃん」になる前は当たり前だったことを、思う存分享受したようだった。
もちろん、デートコース(雨がギリギリ降らず、お客さんも少ない最高の動物園!)も楽しんでくれた。


息子のお迎えに行くと、娘も知っている先生が待っていた。
そしてやっぱり当然、娘は今日の出来事を先生に報告した。
後ろ暗い気持ちは自分の中に残っていたので、「あらら」と思いつつ事情を説明しようとした。

けれど、それより早く、先生は明るい笑顔で「いいですね!」と言ってくれたのだ。
「いいですね!上の子ファースト。素敵です!」

完敗だった。言葉の威力の前に完敗。
わたしのちっぽけな自尊心のために取り繕おうとしたセリフや、自分に言い聞かせていた言い訳なんて、完敗。

実際の生活では、上のファーストなんて全然できていない。
「下の子が生まれたら、上の子のケアを大切に。赤ちゃんは少し泣かせてもいいから、上の子を優先」
と、何度も言われた。目にもした。
でも、赤ちゃんの泣き声は心をかき乱してくるし、心がけていたって自然に上の子の我慢が増えた。
やっと作れた今回の機会だって、これで良かったのか不安があった。
ましてや、この世界的に不安定な時勢に、行楽地へ連れていくなんて・・・

それが、先生の一言で「やってみて良かった」と完全な肯定感に切り替わった。
満足感と疲労の混じった娘の顔も、自然と報酬になった。

たった一言。
その一言が、いつも萎縮しているわたしの母親意識を、大きく膨らましてくれた。
たった一言だった。
言葉の威力に敬意を示して、優しくて強い言葉を自分の中にも貯めていこうと思った。

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