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人工甘味料「アスパルテーム」に発がん性が指摘

世界保健機関(WHO)傘下の「国際がん研究機関」(IARC)は7月14日、人工甘味料「アスパルテーム」(Aspartame)について、「おそらくヒトに対して発がん性がある」(グループ2B)に分類すると発表しました。アスパルテームは清涼飲料やアイスクリームなどに多くの食品に使われており、今後は摂取を控えるよう呼び掛けるとも受け取れる内容です。一方で、WHOと国連食糧農業機関(FAO)の合同食品添加物専門家会議(JECFA)は、摂取許容量を超えなければ安全との見解を改めて示しています。大量に摂取すればがんのリスクがあるものの、通常の摂取量なら健康に問題はないということです。

相反するような分かりにくい発表が同時に行われたことから、アスパルテームのリスク評価をめぐり、IARCとJECFAの間で水面下で激しいバトルがあったことは容易に想像できます。いずれにしても、発がん性を指摘されればアスパルテームのイメージ低下は避けられず、消費者のアスパルテーム離れが進むかもしれません。

アスパルテームは1980年代から幅広く使われている人工甘味料として知られています。具体的には、ダイエットドリンクやチューイングガム、アイスクリーム、ヨーグルト、朝食シリアル、練り歯磨き、咳止めドロップなどに含まれているということです。ダイエットコークのように、甘さを維持しつつカロリーを減らす目的などで使われているようです。

IARCは発がん性について、がんのリスクが高い順に1、2A、2B、3の4段階で分類しています。1が「ヒトに対して発がん性がある」、2Aが「おそらくヒトに対して発がん性がある」、2Bが「ヒトに対して発がん性の可能性がある」、3が「ヒトに対して発がん性を分類できない」となっています。アスパルテームは2Bなので、発がん性としては上から3番目となります。

日本の食品安全委員会の7月19日時点の資料によると、IARCは1042項目について発がん性を評価しています。1は十分な発がん性がある場合で、喫煙や太陽放射(日射)、アルコール飲料や加工肉の摂取、ディーゼルエンジンの排ガスなど126項目がここに分類されています。

2Aは、夜間勤務やアクリルアミド、65度以上の熱い飲み物、赤身肉など94項目が含まれます。旧モンサント(現バイエル)の除草剤グリホサートも2015年にここに分類されたのをきっかけに発がん論争が巻き起こりました。米国ではグリホサートを使ったらがんになったとして、多数の訴訟が起こされました。

2Bにはガソリンエンジンの排ガスや漬け物など322項目が含まれており、アスパルテームも今回ここに分類されました。3には、カフェインやお茶、コレステロールなど500項目が含まれます。3は、発がん性がないことを示すわけではなく、発がん性の有無を判断するためのデータが不足しているものが主に該当するということです。

お酒や肉など身近な食品に対して発がん性が指摘されていることに少し驚きますが、こうしたリスクを認識した上で摂取しすぎないのが重要なのかもしれません。

一方、JECFAは既に、アスパルテームの1日の摂取許容量として1キログラム当たり40ミリグラムとの指針を示しています。IARCの発表に合わせ、「既に示した摂取許容量を変更する十分な理由はない」との見解を公表しました。アスパルテームに発がんリスクはあるとしても、摂取しすぎなければ健康に影響はないということです。

JECFAは摂取許容量を分かりやすくするために、アスパルテームが200~300ミリグラム含まれるダイエット飲料の場合、体重70キログラムの人が9~14缶が飲む量に相当すると説明しています。ダイエット飲料とはダイエットコークやダイエットペプシなどを指すと思われますが、1日に10缶前後も飲む人はあまりいないと思われるので、普通に摂取する分には問題ないと言いたいようです。

一方、世界各国の飲料メーカーなどでつくる業界団体の国際清涼飲料協議会(ICBA、本部・米ワシントンDC)は、JECFAの発表を踏まえ、「アスパルテームが安全であることが再確認された」とアピールしています。その上で、「アスパルテームが安全であるというJECFAの包括的な結論は、40年以上にわたる科学的証拠の積み重ねと、90カ国以上の食品安全当局の判断の上に成り立っている」と強調しました。

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