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インドがコメの輸出を一部禁止、価格が高騰

インドの水田=USAライス連合会のウェブサイトより

インド政府は2023年7月20日、コメの輸出を一部禁じると発表(1)(2)しました。インドは世界最大のコメ輸出国ですが、ロイター通信によると輸出量の半分近くが対象となるようです。多くの降雨によってコメの国内生産が打撃を受け、供給懸念から国内価格が上昇しているため、輸出を減らして国内供給を確保する狙いです。インドの禁輸措置によってコメの国際価格は高騰し、国連食糧農業機関(FAO)によるとほぼ12年ぶりの高値となりました。ウクライナ紛争に続き、世界の食料安全保障にとって新たな脅威となりそうです。

禁輸措置の対象は、高級米であるバスマティ米を除いた白米で、パーボイル米も含まないということです。2022年に輸出した2250万トンのうち、約1000万トンが対象となります。インドで生産される米は長粒種のインディカ米が大半で、輸出はアジア向けが多いですが、アフリカ向けも増えています。来年にも行われるインドの総選挙を前に、モディ政権は食料の値上がりを警戒しているようで、自国優先の姿勢が鮮明になっています。

米農務省(USDA)が7月12日に発表した資料によると、2022年のインドのコメ輸出量は2250万トンで、世界全体(5564万8000トン)の40%を占めました。USDAは、2023年のインドのコメ輸出量は2300万トンと、世界全体(5633万8000万トン)の41%を占めると予想していました。インド政府の発表通りに禁輸が行われれば、インドの輸出が大幅に減るのは確実で、USDAの予測も下方修正されることになりそうです。

一方、FAOは8月4日、7月の世界のコメ価格指数(2014~16=100)が前月比3.5ポイント上昇の129.7と、2011年9月以来ほぼ12年ぶりの高水準になったと発表しました。1年前に比べて19.7%の上昇となります。インディカ米が5.4ポイント上昇の135.4と急騰しており、インドの禁輸措置の影響が早速表れました。

FAOは、インドの禁輸措置について、「季節的な供給逼迫やアジア諸国の購入によって既に生じている価格の上昇圧力をさらに強めることになる」と分析しています。その上で、「世界人口の大部分、特に最も貧しく、所得の大部分を食料の購入に充てている人々にとって、食料安全保障上の重大な懸念をもたらすことになる」と警告しています。

インドがいつまで禁輸を続けるのか、タイやベトナム、パキスタンといった他のコメ輸出国がどこまでインドの輸出減少分を補えるのかが今後の焦点となりそうです。コメ輸入国のインド離れが進み、コメ貿易の構図が変わるかもしれません。

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