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中国で食料安全保障法が成立 穀物の国内生産を強化

トウモロコシなど穀物の国内生産強化を目的とした中国の「糧食安全保障法」が2023年12月29日、国会に相当する全国人民代表大会(全人代)常務委員会で可決、成立しました。2024年6月1日に施行されます。中国国営の新華社通信は「世界の耕地面積の9%で14億人以上を養うため、この法律は極めて重要だ」と強調しています。食料の輸入依存の増加に歯止めを掛け、自国の食料はできるだけ自国で生産する姿勢を強く打ち出しました。
  
賀栄・司法相の法案説明によると、中国の食料安全保障は全体としては良好であるものの、穀物需要の増加が続く中。耕地の確保や穀物生産の一層の拡大といった複数の課題に直面しています。この法律は、これらの課題に対処する上で大きな意義があるということです。
 
2023年の中国の穀物生産は6億9541万トンと、過去最高を更新し、中国政府は9年連続で6億5000万トン以上の高水準を維持しているとアピールしています。新華社によると、中国の主食自給率は100%を超え、穀物自給率は95%を超えているということです。
 
しかし、近年は大豆だけでなくトウモロコシや小麦の輸入も急増しています。自国の国民に食料を供給するため、決して関係が良いとは言えない米国からの輸入を増やさなければならないのが現状です。中国政府はこうした状況に危機感を募らせ、食料安全保障の強化を急いでいることが読み取れます。
 
糧食安全保障法の原案は2023年6月に全人代常務委員会に提出され、一部の修正を経て、成立しました。最終的には総則で「中国は主食の絶対的な確保と穀物の基本的な自給」を実現する必要があると規定し、トウモロコシやコメ、小麦などの穀物は国内生産を原則とし、主食が手に入らなくなる事態を起こさないよう強調しています。
 
農業生産の拡大に向けては、耕地の保護を重視する姿勢を打ち出しています。森林や草地を含め、農地転用を厳しく制限するようです。耕地から転換した森林を再び耕地に戻す「退林還耕」を一段と推進するのかもしれません。
 
穀物生産に関しては、国による「農業遺伝資源バンク」が設立が盛り込まれました。日本の農研機構の「農業生物資源ジーンバンク」のように、作物の遺伝資源の研究や管理を行う組織だと思われます。優れた品種の栽培や、農業機械技術の向上、災害の予防に取り組むことも打ち出しています。
 
さらに、作物の生産を促進するため、農家の所得を増加させる手段を国が導入することも盛り込みました。食料安保の強化策の一環として、生産から消費までの各段階で食品廃棄を減らす必要性も強調しています。
 
糧食安全保障法は、土地管理や種子、土壌保全、食品廃棄に関する既存の法律とともに、中国の食料安全保障の基盤を固めることになります。全人代常務委員会の委員の一人は「食料安保に関する新法は、中国が近代化を進めるために非常に重要だ。中国が食料安保のシステムや能力を向上させるため、強固な基盤を築くものだ」と意義を説明しました。

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