米農家所得、23年は大幅減の見通し

米農務省(USDA)は2月7日、収入から支出を差し引いた2023年の米国農家の純所得は総額1369億ドルと、前年比15.9%減との予測を公表しました。農産物価格の下落で収入が減少する一方、金利上昇の影響で支出が増加するということです。金融当局の大幅利上げが農家の収益を圧迫する1年になるようです。ただ、前年が15.5%増と急増したこともあり、過去20年(2002~21年)の平均(物価調整後で1081億ドル)を26.6%も上回っており、深刻な状況でもなさそうです。現時点では今年の農家所得は大幅減が予想されるものの、それでも相対的には高い水準を維持し、経営環境はまあまあ良いということになりそうです。

USDAの予測によると、23年の農家の現金収入は4.3%減の5199億ドルで、これに政府の直接支払い(34.4%減の201億ドル)などを加え、総収入は1.3%減の5964億ドルとなります。これに対し、総支出が4.1%増の4595億ドルとなり、総収入から総支出を差し引いた純所得は15.9%減の1396億ドルということです。

農産物の売り上げによる現金収入の内訳は、作物が3.1%減の2769億ドル、畜産が5.7%減の2430億ドルとなっています。ロシアによるウクライナ侵攻の影響で前年に農産物価格は高騰しましたが、今年はやや下落するとUSDAはみています。

作物の現金収入を品目別にみると、トウモロコシが4.5%減、大豆が8.1%減、綿花が2.1%減と値下がりする一方、小麦は4.0%増と見込んでいます。このほか、野菜・メロンが8.7%減、果実・ナッツが0.4%減、ポテトが7.5%増となっています。

畜産では、乳製品が14.6%減、豚が2.7%減、鶏が7.4%減、鶏卵が24.0%減となる一方、牛は2.4%増と堅調となるようです。

政府の直接支払いは、新型コロナウイルス禍の2020年に過去最高の4560億ドルに増加しましたが、コロナ対策の縮小に伴い、それ以降は減少しています。

総支出は1.3%増の4595億ドルとなりましたが、過去最高の2014年は下回る見込みです。飼料が5.1%減、肥料が0.8%減、燃料が14.9%減、賃貸料が8.2%減とマイナスとなるのに対し、金利が22.4増、人件費が7.3%増とかなり増える見込みとなっています。

当然ながら、あくまで現時点での予測なので、実際にこの通りになるとは限りません。むしろ予測通りの結果にならないことが少なくないようです。米国最大の農業団体ファーム・ビューローのリポートによると、USDAは2022年の農家純所得について、22年2月時点では4.5%減と予測したのに、9月には5.2%増に上方修正し、12月には13.8%増とさらに引き上げました。2月にロシアがウクライナに侵攻し、食料価格が急騰したのが大きく影響しています。

ファーム・ビューローは、「依然として多くの不確実性が残っている」として、2023年も予測通りの結果にならない可能性を指摘しつつ、「事業に影響を及ぼすルールが明確になることが一段と重要になっている」と強調します。新たな農業法の検討作業が本格化していることに触れ、農家にとって使い勝手の良い仕組みになるように、農家が声を上げることも訴えています。

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