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私がMAPを立ち上げた理由

はじめまして。株式会社ムービー・アクト・プロジェクト代表の熊谷睦子と申します。
映画の仕事をしています。アルゴ・ピクチャーズという1990年代初頭からインディペンデントな映画を製作・配給して来た会社に2000年から所属し、数々の映画に関わってきました。

そもそもは東北出身で、学生時代から10年間宮城県仙台市にいて、そこでは8㎜フィルムで自主映画を作ったり、上映会をしたりしていました。
最初は自分たちの映画を観て欲しいという気持ちからスタートして「インディペンデント・シネマ・デイズ」という映画祭のような事を始め、それから1997年に【仙台ムービー・アクト・プロジェクト】という団体を作りました。

そこで、東京では上映されても仙台ではかからないような、まだカンヌ映画祭で受賞前の是枝裕和監督や河瀬直美監督の作品を小さな映画祭でかけたり、ドキュメンタリー映画の自主上映などをしていました。

その後、運良く東京の映画会社に入ることが出来、上京。既に20年以上この業界にいる事になります。仙台で立ち上げた団体はその後「ショートピース!仙台短篇映画祭」の母体となり、映画祭は今も実行委員会の形で続いています。

そんな私が、仙台時代の団体名を再度引っ張り出して会社にしたのは、やっぱり日本でなかなか上映されない映画を上映したいと思ったのがきっかけでした。
昨年「ベトナム映画祭2018」を東京、神奈川、大阪、愛知で開催し、これまで劇場公開されて来なかったベトナム映画をまとめて上映、監督を交えてシンポジウムなども行いました。

日本には今や32万人以上のベトナム人たちが生活しています。その多くは、少子化で人手不足になりつつある日本で、技能実習生などとして働いています。
アルゴ・ピクチャーズで2017年に『草原に黄色い花を見つける』を上映した際、劇場に100人以上のベトナム人たちが駆けつけました。私たちが日頃、仕事から解放されて映画を観て気晴らしをするように、彼らも友だちや恋人と一緒に映画で泣いたり笑ったりして楽しみたいのだなと感じました。

また私たちもコンビニや飲食店で、あるいは職場で、ベトナム人など他の国の人たちと出会う機会が増えていく中で、彼らを理解し話をするのに、映画ってとっても良いツールじゃないかな、と思うのです。だからこそ、日本語字幕のついた作品で劇場公開したいと思いました。

それともうひとつ、ここ最近の映画業界で思うところがあります。それは全国で映画館がない空白地帯が出来ていること。
かつて映画は娯楽の王様でした。でもテレビが家で見れるようになり、インターネットで個人で気軽に見れるだけでなく、作品を発表する事も出来るようになりました。体験としての「映画」が、さほど価値を持たなくなりつつあると感じます。

そんな中で映画業界にいて、自分に出来ることはなんだろう?と考えました。
そこで思ったのは結局、自分たちが体験した映像作品による感激や衝動を、少しでも多くの人たちに分かち合い広められたらという単純な思いでした。

それはきっと1世紀を超えた「映画」の歴史の中で、関わってきた全ての人が考えて来たことだと思うのです。そして観て何か救われたとか、癒されたとか、元気になったとか、新しい何かを見つけられたとか…そんな「何か」を届ける事を模索しながら、今はやり続けていくしかないと考えています。


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