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抗ヒスタミン



薬を使う目的

 くしゃみ・鼻水は, 鼻に入り込んだ異物を捕らえて, 外に排出しようとする生体の防御反応です が, あまりに多いと不快で生活に支障を来たします. そのため, 必要以上に増えた 「くしゃみ」 や 「鼻水」 などの鼻炎症状を緩和するために, 抗アレルギー薬を使います. 「くしゃみ」 ・ 「鼻水」 ・ 「痒み」 といったアレルギー症状は主に 「ヒスタミン」 によって引き起 こされるため, 使う薬も 「抗ヒスタミン薬」 が中心です. 「抗ヒスタミン薬」 だけでは 「鼻詰まり」 に効果が不十分なため, 「血管収縮薬」 が配合されていることもあります


基本方針

 アレルギー性鼻炎に対する 「抗ヒスタミン薬」 の効果に, 特別な使い分けが必要なほどの違いはありま せんが, 通常は副作用の少ない 「第二世代」 の薬を使います. 眠気が問題になる場合は, 「ステロイド」 の点鼻薬も選択肢になります 熱や咳もある 風邪の場合は, 抗コリン作用のある 「第一世代」 の薬の入った総合感冒薬を選ぶ 
◆ どれでも構わない 副作用が少ない 「第二世代」 の薬
◆頓服薬として欲しい 速効性に優れた 「第一世代」 の薬 
◆鼻水が止まらない 抗コリン作用のある 「第一世代」 の薬 
◆口が渇くのは嫌抗コリン作用の弱い 「第二世代」 の薬 
◆前立腺肥大・緑内障抗コリン作用の弱い 「第二世代」 の薬, ただし 「メキタジン」 を除く
◆高齢者眠気・抗コリン作用の弱い 「第二世代」 の薬, ただし 「メキタジン」 を除く ( ◆眠いのは嫌眠気の少ない非鎮静性の 「抗ヒスタミン薬 , または 「ステロイド」 点鼻薬  ◆ 自動車を運転する 集中力や判断力に影響しない 「フェキソフェナジン」 ・ 「ロラタジン」 
◆試験勉強をする 集中力や判断力に影響しない 「フェキソフェナジン」 ・ 「ロラタジン」  ◆朝は忙しくて飲み忘れる 1 日 1 回の服用でよい 「セチリジン」 ・ 「ロラタジン」 ・ 「エピナスチン」 など
◆妊娠中 「ロラタジン」 ・ 「セチリジン」 ・ 「クロルフェニラミン」  ◆授乳中 「ロラタジン」 ・ 「フェキソフェナジン」 ・ 「ジフェンヒドラミン」 基本方針 第一世代第二世代 メキタジン以外 フェキソフェナジン ロラタジン 喘息や蕁麻疹を伴っている 鼻詰まりに頭痛を伴っている 㾎点鼻薬を頻繁に使っている 毎年,花粉症がひどい 㾎 2歳未満の乳幼児 禁忌を避ける 病院受診のトリアージ 㾎高齢者(緑内障 ・ 前立腺肥大) 症状・ 目的による使い分け 㾎頓服薬として欲しい 鼻水が止まらない 㾎眠気・ 口の渇きが 少ない薬が欲しい 潜在的なリスクを避ける 5~6 日で改善しない場合 運転手 試験を控えた学生  病院受診 漢方薬の 「小青竜湯」 は軽度の花粉症に効果が報告されている 


薬理作用

 ●抗ヒスタミン薬: アレルギーの原因物質(花粉 ・ホコリ・動物の毛など) が体内に侵入すると, 体内 の肥満細胞から伝達物質 (ケミカルメディエーター) が放出されます. この伝達物質のうち, くしゃみ・ 鼻水・痒みの原因となる 「ヒスタミン」 の働きをブロックすることで, アレルギー症状を緩和します.

●血管収縮薬: アドレナリンα受容体を刺激することで, 鼻粘膜の血管を収縮させ, 「鼻詰まり」 の症 状を解消します. しかし, 効果は一時的で長続きしません. また, 自律神経系にも作用するため, ふる え・不眠・血圧上昇などの副作用を起こす恐れがあります. そのため, 必要最小限の使用に留める必 要があります. ケミカルメディエーターとは, ヒスタミンやロイコトリエン・セロトニン・トロンボキサンなど, 細胞間の情報伝達を担う物質のこ とで, それぞれ異なる生理作用があります. 


使い分け

 眠気の副作用~脳への移行性 「第二世代」 の抗ヒスタミン薬は, 脳へ移行しにくい薬が多く, 眠気や集中力 ・判断力の低下といっ た副作用が少ない傾向にあります1)


. 例外 「第二世代」 の薬でも, 「ケトチフェン」 は 「第一世代」 の薬と同じくらい眠気を起こしやすい2) ほか, 「アゼラスチン」 や 「メキタジン」 も軽度鎮静性 に分類されます1). 「第二世代」 の薬であれば眠気や集中力 ・判断力の低下を 起こさない, というわけではなく, 多くの薬で自動車運転が禁止されている ことに注意が必要です.

●抗コリン作用~鼻水を止める効果と, 口や喉の渇き・前立腺肥大や緑内障への影響 「第一世代」 の抗ヒスタミン薬は, 抗コリン作用も併せもっています). そのため, 鼻水を止める効 果に優れる反面,口や喉の渇き・ 眩しさ・便秘といった副作用が起こりやすいほか, 前立腺肥大 や緑内障 の症状を悪化させる恐れがあります3).

「第二世代」 の抗ヒスタミン薬には抗コリン 作用がないものがほとんどです1) . 例外 「メキタジン」 は第二世代に分類されますが, 抗コリン作用があり, 前立腺肥大や緑内障に禁忌です4) .


●速効性 「第一世代」 の抗ヒスタミン薬は, 「第二世代」 の薬と比べて速効性に優れています5). そのため, 早 く効く薬が欲しい, すでに症状がひどい, 頓服薬として欲しい場合に適しています. 「第二世代」 の薬は, 効果が現れるまでに時間がかかるため, 花粉症では花粉飛散日や症状が現れた 日から, 早めに飲み始めておくことが推奨 


血管収縮薬

 「血管収縮薬」 は鼻詰まりを解消したい場合に, 使用を考慮します. しかし, 副作用や注意点も多く, 「プ ソイドエフェドリン」 以外の薬は効果の根拠も乏しいため, 積極的に使う必要はありません. 鼻詰まり には, 「ステロイド」 の点鼻薬 を使う方が安全で効果的です.
◆ 「鼻詰まり」 は2週間以上続きそう 長期使用にリスクのある 「血管収縮薬」 は避ける

◆大会を控えたスポーツ選手禁止薬物(競技会時) の 「血管収縮薬」 を避ける

◆不眠で悩んでいる 交感神経を刺激する 「血管収縮薬」 は避ける

◆高血圧・不整脈の持病がある 血圧を上げ, 心拍数を増やす 「血管収縮薬」 は避ける 

◆糖尿病の持病がある 血糖値に影響する恐れのある 「血管収縮薬」 は避ける 

◆甲状腺疾患の持病がある 交感神経を刺激する 「血管収縮薬」 は避ける

◆妊娠中子宮収縮作用のある 「血管収縮薬」 は避ける

◆授乳中 どうしても必要な場合は, 全身移行の少ない 「点鼻薬」


病院進める人

 「くしゃみ」 ・ 「鼻水」 ・ 「鼻詰まり」 を訴える人の中から, こんな人を見つける 「喘息」 や 「蕁麻疹」 などと複合的なアレルギーを起こしている人 「細菌性の副鼻腔炎」 「薬剤性鼻炎(血管収縮薬の使い過ぎ)」 「熱性けいれん」 の既往がある乳幼児 


病院進める理由

 喘息や蕁麻疹などを伴っている 鼻炎だけではなく, 喘息や蕁麻疹など複合的にアレルギー症状が出ている場合は, 病院で医師の指 導のもと治療を受ける必要があります. 「鼻詰まり」 に, 味覚・嗅覚の異常,膿のような鼻水,頬や上歯・頭の痛みが伴う 慢性的な副鼻腔炎 (いわゆる蓄膿症) は, 場合によっては外科手術による治療も必要になるため, 一 度病院を受診する必要があります. 3薬を飲んでも 「鼻詰まり」 が治らない 鼻詰まりは 「ヒスタミン」 ではなく主に 「ロイコトリエン」 が関係したアレルギー症状のため, 「抗 ヒスタミン薬」 では十分な効果が期待できません . 鼻詰まりには, ステロイドの点鼻薬 が良い選択肢になりますが, 治りが悪い場合は病院を受診することが勧められます. 点鼻薬を頻繁に使っても鼻詰まりが治らない 点鼻薬のなかでも, 鼻詰まりの一時的な解消に使う 「血管収縮薬」 の点鼻薬を連用している人は, 薬 が原因の 「薬剤性鼻炎」 を起こしている恐れがあります . 点鼻薬の使用をいったん止め, 一 度病院を受診する必要があります. 毎年,花粉症がひどい 花粉症のような季節性のアレルギーでは, 症状が悪化する前から薬を服用しておくことが推奨され ています . 症状が軽い場合はOTCでも対応できますが, 毎年のように症状がひどくなる場合 は病院を受診した方が無難です. 2歳未満の乳幼児 OTCには2歳未満でも使える抗アレルギー薬がありますが, これらの製剤に使われている 「抗ヒス タミン薬」 は熱性けいれんのリスクになる ことから, 使用は推奨されません. 基本的に病院 受診を勧め, やむを得ない場合でも5~6日以内の短期間の使用に留めるよう指導してください. 5~6日ほど市販薬を飲んだが, 症状が改善しない OTCでは改善しないほど重症である可能性や, そもそもアレルギーではない可能性などが考えられ ます. OTCによる治療をいったん中止し, 病院を受診して適切な治療を受ける必要があります. 

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