見出し画像

最初で最後のプレゼント

弟の誕生日にプレゼントを買った。
20年以上の付き合いなのに誕生日をこんなに意識したのは初めてで、ましてや、何かをあげるなんて考えたこともなかった。彼はもう年をとらないのに。
今までの自分の冷たさがいやになるわ、ほんと。

初めての贈りもので選んだのは弟の大好きなギタリスト、マーシーが初めて出した本。発売日を知ったとき、目を見開いてたと思う。
弟の誕生日だったから。

もしもまだ生きてたら。本が出ることが分かっていたら。自分の誕生日までは生きようと、生きてみるか、と思ってくれたのかもしれない。もう少し、つなごうと考えてくれたかもしれない。
そんなもしもを思わずにはいられなかったし、泣かずにもいられなくてひとりでわんわん泣いた。
ただの偶然といえばそれまでなんだけど、奇妙な運命みたいなものを感じてしまうのは、そう感じたいからだった。

その本は誕生日当日には手に入れられず、さっき届いた。
先に読んだらブーブー言われそうなので、使っていたギターと一緒に並べている。好きだった(とあとで知った)バラの香りのキャンドルを焚きながら。
火が強くゆれたり、ジッとしたり、動いてるのはきっと暖房のせい。
読んでくれているといいな。


母が言った、まさか20数年後こうなってるとは、なあ…という言葉。胸が痛いけど、親になったことがない私には、心の底から分かることはできない。

弟が生まれた日の話を聞いてたら、なにか不思議なことが起こっていたらしく、きっと守ってもらったおかげでここまで生きたんじゃないかな。
そう思わないとやってらんないよね。まったく。
もう、ずっとずっと年をとらんのか。まったく。

誕生日おめでとうね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?