Fate/Staynight Heaven's Feel エピローグを語りたい

Fate/staynight Heaven’s Feel 第三章 spring song エピローグ部分を語りたいのでしばしお付き合いください。
スポーツ報知のインタビューで言うには、第一章は「日常が崩壊する」話、第二章は「選択を迫られる」話、第三章は「罪を背負った上で、日常に回帰する」話。つまり、ある意味でエピローグこそ第三章において最も重要な部分と言っても過言ではないのです(過言)。

まずは簡単にエピローグの流れを。
聖杯戦争終了後、季節は巡りその年の夏。次期部長候補として射場に立つ桜のシーンからエピローグは始まります。第一章冒頭の士郎の部活シーンのセルフオマージュですね。視聴者と同じ姿を思い出したのか、大河の「いつ帰ってくるのかな?」という台詞があります。
部活が終わると凛が外で待っています。ここから凛の語り。士郎を元に戻すべく桜と二人で各地を巡っていました。ここは歩く二人に合わせて背景と服が変わっていくことで場所と時間が移り変わっていく表現なのですが、最終地点のロシアで二人が手を繋ぐんですね。「今までの姉妹の時間を取り戻すように」とは凛の台詞ですが、正に仲の良い姉妹だったあの頃のような仕草。ぐっときます。
記憶が曖昧なのですが、確かここで場面が飛び、更に季節が巡って数年後の春。ロンドン留学中の凛が帰国したことをライダーが桜に報告に来ます。ライダーの肩に影の巨人の小さい子が乗ってます。可愛い。本来はこっちが通常サイズで、桜の正式な使い魔。没設定のサルベージだったようです。桜パンフによるとこれは「桜の良心」とか「桜の弱さ」とかではなく「桜の幼い部分」らしく。つまりあの時桜の服になってくれたのは、桜が困ってるからとかではなく「裸だ!恥ずかしい!」ってなったからなのかもしれません。とても可愛い。
閑話休題。
ここから語り手が桜に変わり、BGMとして『春はゆく』が流れ始めます。二人旅の終着地点、ロシアで謎の女性とすれちがった後、謎の人形を見つけると桜がずっと持っていた鳥かごが光る回想が入り、衛宮邸の台所。何やらお弁当の準備をする桜の隣に「かわらないでいてくれたもの」として背が伸びてちょっと大人びた士郎がやってきます。いつあの約束を果たすべくみんなでお花見へ。その前に玄関先で大事な大事な会話。原作ゲームのラストシーンにして、劇場版でも最後の台詞になりました。
「桜、幸せ?」
「……はい」
ここで歌詞が入り、お花見会場では美綴姉弟、一成、蒔寺、三枝、氷室の陸上部三人娘と合流。再び桜の隣に士郎が並び、二人一緒に一歩踏み出してエンドロールです。

続いて気になったところ、細かく語りたいところをピックアップしていきたいと思います。

・青崎橙子と士郎の人形
ロシアですれ違ったオレンジ色の髪の女性。青崎橙子さんといって、FateシリーズひいてはTYPE-MOON作品には欠かせない超重要人物なのですが、すれ違う時に三人のうち桜だけは会釈をしています。あの人形をどういう経緯で手配したのかは分かりませんが、橙子さんの方はおそらく依頼人に興味なんかないし、凛は関わりたくなかったのではないかと思います。凛が橙子さんの顔を知らなかったとは考えにくいんだよな。有名人だし。
桜が持ち歩いていた鳥かご。今回は直接的な描写がなかったので、あの中には鳥になった士郎が入っていると思った方もいたようですが、原作ゲーム通りならあれには何かの植物の芽が入っています。大聖杯の中でイリヤが見つけてくれた士郎の魂ですね。青崎橙子という人は天才的な人形師で、生身の自分と全く同じ人形を作るに至っているのですが、現在「青崎橙子」として行動している個体が元の本人なのか人形なのか本人にも分からないというレベル。そんな人が作った人形に第三魔法で物質化した魂をぶち込んだのがこれ以降の士郎です。つまり人形なの?となるんですが、ほぼ生身と変わらない、風邪も引くし、病院にもかかれるし、薬も服用できる、とかそんな風にゲーム内で言われてた気がします。

・桜の目の色
前回も書きましたが、桜の目の色が青みがかってましたね。更にこっちは気付かなかったんですが、いままで描かれていなかった瞳孔が入っていたようです。やっぱり遠坂寄りに戻ってきてるということらしいです。髪も伸びて、色味も戻り、表情も穏やかになり、すっかり間桐の呪縛からも解放されたようにも見えますが、そう簡単にハッピーエンドにならないのが桜ルート「Heaven's Feel」という物語です。

・「幸せ?」に対する答えと桜の視線、そして『春はゆく』
凛に「幸せ?」と問われ「……はい」と笑顔で答える桜。桜らしい穏やかな、それでいてここまでで一番の(『月姫』でよく出てきた表現をするならこれ以上ないってくらいの)笑顔ではあるのですが、この間が切ない、辛い。これに即答できないのが「罪を背負った上で」ということなんですね。『春はゆく』の歌詞に「いつもわたしは幸せでいると 優しい夢を届けて」とあるように、桜パンフレットでも言及されていたように、桜は今後「幸せ?」という問いに「はい」と答え続けないといけない。もちろん、今の桜が幸せであることに変わりはないのですが、なんの引っかかりもなく幸せを享受できるわけではない。お花見に向かう道すがら、満開の桜より落ちてくる桜の花びらの方が先に目に入るくらい俯いて歩いていることも、このへんの表現なのかなぁというのは深読みしすぎでしょうか?たとえば凛ルートで、同じように士郎と一緒に何かを見に行くシーンがあったとしたら、角を曲がった途端目の前に広がる花畑とか、丘を登りきった瞬間目に飛び込んでくる海とか、遠くに見える桜並木に駆け寄っていくとか、そんな演出になってたと思うんですよね。
初めて『春はゆく』を聞いたとき、「これはトゥルーエンドではなくグッドエンドの曲なのでは?」と思ったんです。桜ルートグッドエンドは、最後のイリヤによる第三魔法の行使がないまま物語が終了、当然士郎はそのまま消えてしまいます。その士郎を桜が一人衛宮邸で待ち続ける、という流れなのですが、「わたしは幸せでいる」ことが「優しい夢」ということは周りも自分も騙しだまし生きていく桜の歌詞なのではないか、というのが最初の印象でした。「あなたの側で笑うよ」とはいってもその「あなた」は本当に物理的に側にいるのか?と。桜よ、大丈夫か?と。なんだったら劇場版では最後の歌詞が変わるサプライズでもあるのかとまで思っていましたが、さすがに考えすぎでした(笑)。

・二人で越える白線
満開の桜を見上げる桜の隣にまた士郎が並びます。二人の足下には道路の白線。なんでもない、日本のどこにでもあるただの白線です。そんなただの白線が一緒に越えていってエンドロールを迎えます。なんの捻りもない「一線を越える」演出ですが、二人で同じ方向を見て、横に並んで、というのはこの二人にとって凄く大切だったりします。キービジュアルでは手を繋いで扉の向こうへ歩いていく二人が描かれていましたが、ここでは手すら繋ぎません。他人の為に生きてきた士郎と自分の為に生きられなかった桜が、それぞれ自立した上で、向かい合うのではなく、どちらかが先導するのでもなく。改めて考えてみるとめっちゃいいラストシーンじゃないですか。前回も書きましたが、原作ゲームの最後のスチルは士郎、凛、桜、ライダーの四人の後ろ姿で(第四週&第五週入場者特典はおそらくこれが元ネタ)、桜が大切な人たちに囲まれていてこれはこれで素敵なのですが、やっぱりHeaven’s Feelのラストシーンは士郎と桜のツーショットがいいなと思いました。
白線の演出といえば、イリヤがアンリマユの説明をするシーンでも、イリヤと士郎、凛の二人を分けるように使われていましたし、第二章『レイン』の後、士郎と桜が凛アーチャーのコンビとすれ違うところでも使われていました。Zeroアニメの葵さんと雁也おじさんの決別シーンを思い出しました。あれは照明の色で分けられてましたが。
こちらも『春はゆく』の第一印象の話になるのですが、「しんしんと降り積もる~」前の間奏部分、無音のパートも含めてやけに長いなとは思っていたら、やっぱり映像ありきでの編曲だったみたいです。

・服装のこと
ここからは趣味が強すぎる内容になるのですが、本編同様桜の服装が変わっていました。原作ゲームでは白のブラウスに紫色のロングスカートだったのですが、今回は白いシャツワンピに黒のカーディガンを羽織っていました。ブラウスとワンピースの特徴的な袖の形は共通なのでカーディガン不着用時のシルエットには大きな差異がないのですが、カーディガンでそこは隠れてしまう上にモノトーンなのでかなり印象が変わっています。この辺はラグラン袖にラグラン袖を重ねた士郎や赤コートの凛が色味まで含めた全体的な印象を変えないようにデザインされてたこととは一線を画しますね。喪服のイメージなのかなぁ、とも思いますがこれも結局「罪を背負ったまま」の演出というだけなのかもしれません。
凛の服装も原作ゲームから変更。ブラウスはゲームエピローグと共通、スカートはおそらくUfotable版UBWのエピローグと共通かと。
服装と言えば、本編の桜のワンピース。第一章の頃からずっと言ってるのですが、いくら冬木が温暖な土地とはいえ、真冬にあの格好はしなくない?半袖のどう見ても夏物のワンピースにカーディガンだけ、足下はサンダルって。可愛いけどおかしいよ。そんな格好で夜中に寒い土蔵を訪ねてきて「寒い…」とか言われましても…。「あざと」としか思えないんですが。あまつさえ一章ラストシーンではそんな格好にコートだけ羽織って(つまり靴はサンダルのままで)雪の中待ってるとか。桜の一途さ?とか健気さ?とか表現したかったんでしょうけど、やっぱりあざといという感想しか出てきませんでした。ここは桜へというより、制作陣への不満ですね。あそこで桜ががっつり着込んでいたらその一途さや健気さは損なわれていたのか?そんなことないだろ?そんなもんじゃないだろ桜さんは、と。第一章の舞台挨拶の時かな?ランサーの中の人も「靴を履け」って言ってましたけど、あざとさばかり感じるのは同姓故でしょうか?
更にもう一点。お花見のシーンでの同級生組の服装。ばっちり確認しましたが全員『hollow ataraxia』での私服でした。hollowアニメ化きますかね。アンリマユの説明もばっちりしたし。

・桜の墓参り
ほぼ余談。桜が一人で墓参りをするシーンがありました。あれは一体誰のお墓だったのか。思い切り日本風の墓地だったので、間桐家のお墓にしては違和感がある。衛宮家のお墓の可能性はありますが、そこに桜が一人で行くか…?行くか、嫁なら。あ、解決しました(笑)

・大河の台詞
こちらも余談。桜の勇姿を見ながら「いつになったら帰ってくるのかな?」と呟く大河。ゲームでは、凛が帰国した時に買い物に行っていた士郎に言っただけなのに、プレイヤー的には「もしかしてあのまま帰ってきてない…!?」と思っちゃう、みたいな台詞でした。劇場版のこの台詞のタイミングでは、士郎はまだ鳥籠の中なのでおかしくはないのですが、違和感があるというか、無理矢理な感じがするというか。

・鐘ちゃんのこと
マジで余談。陸上部三人娘の一人、眼鏡っこの氷室鐘ちゃん。薪寺が凛の背中をバシバシ叩いてるところで大笑いしてましたが、彼女あんな風に笑うんですね。『氷室の天地』未履修なんです、すみません。


他にも劇場で思ったことはたくさんあったんですが、いざ書こうとするとなかなか形になりません。穏やかなのにどこか不穏それでいて前向きという、桜ルートのひいてはFate/Staynightの最後を飾るに相応しいエピローグだったと思います。本当に三章全部良かった。スタッフさんキャストさん本当にありがとうございました!hollow期待してます!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?