【声劇台本・3人用】魔法使いの△(さんかく)

“魔法使いの△(さんかく) “
 
ジャンル:現代ファンタジー・ヒューマンドラマ
 
こちらは声劇を想定した台本になります。
よろしければお読みいただけると幸いです。
 
◆内容
魔法使いになるため、娘は母の元を離れ学園へ向かった。
残された母は、子を思うたびに溜め息が漏れ続ける。
 
※こちらは「魔法使いの〇(まる)」の続きの話になります。
 
◆登場人物
原エルトロッテ(エルトロッテ):お母さん。魔法使いだが落ちこぼれだった。敬語で喋るあわてんぼ。
原マリエル(マリエル):娘。13歳の元気な少女。現在魔法学園に入寮中
原真一(真一):お父さん。市役所に勤める優しい男性。
 
・声劇・朗読等で使用される際は作者名をどこかに表記またはどこかでご紹介下さい。作者への連絡は不要です。
・性別・人数・セリフの内容等変更可です。また演者様の性別は問いません。
・自作発言はセリフの変更後でもお止めください。
・アドリブ可。好きに演じて下さいませ。

(以下本文)
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▼回想 メールのやりとり

エルトロッテ:拝啓、マリエル。今頃はもう学校の寮についた頃でしょうか。メイガス魔法学校はとても大きな学校です。その大きさに圧倒されるかもしれません
ですが、マリエルならやれます!汽車での長旅で疲れたでしょうから、まずはゆっくり休んでくださいね

マリエル:うん!お母さんありがとう!立派な魔法使いになれるように、私頑張るね!

エルトロッテ:拝啓、マリエル。そろそろ入学式が終わった頃でしょうか。学校の規則で入学者本人以外は式に参加できないのが悔やまれます。マリエルはきっと立派に参列できたんだろうなあ
寮の皆とは会いましたか?お友達はできましたか?そこにいる子たちはライバルであり戦友!大事にしていきましょうね

マリエル:うん!おかあさんありがとう!入学式楽しかったよ!

エルトロッテ:拝啓、マリエル。学校にはもう慣れましたか?魔法学校の授業はどれも特殊で、今までの勉強したものが通用しないかもしれません。ですので、授業をしっかり聞いて
教科書を読んで、細かくノートをとって、精霊の声を意識して、頑張って学園ライフをエンジョイしてください!敬具

マリエル:分かった!ありがとう!

▼自宅 リビング

エルトロッテ:…ぼーーーー…

真一:エル

エルトロッテ:……ボーーーーーーーーー…

真一:エル!

エルトロッテ:ハッ!ええと、なんでしょうか、真一さん!

真一:エル、なにをしているんだい?

エルトロッテ:え?ええと、リビングの掃除ですけど

真一:それ、庭用のほうきだけど?

エルトロッテ:へっ?あ、ああ!私ったら、なんという間違いを!道理で今日は落ち葉がないなー、なんて思ってたんですよ!ホホホ!

真一:普段は家の中では掃除機を使うからね。ほうき、床を傷つけちゃうから、物置に戻してもらえる?

エルトロッテ:は、はい!そうですね!ごめんなさいでした!ハハハ…

真一:…ふむ

エルトロッテ:ほうき、戻してきました…

真一:お疲れ様

エルトロッテ:こ、今度こそ掃除しますね!ええと、掃除機掃除機、あ、ありました!これで、ついーっとね!

真一:それ、デッキブラシだけど

エルトロッテ:え?あ、あれ!?なんでこれがここに!?ううう、こんな間違いをするなんて…

真一:ふふ、お風呂場から持ってきたの?すごいなあ

エルトロッテ:うう…すごいって、真一さん、馬鹿にしてます…

真一:してないよ。どうしたの?さっきから上の空って感じだけど

エルトロッテ:ううう、ええと、その、あの…マリエルの事で

真一:やっぱり

エルトロッテ:やっぱり、って

真一:マリエルがメイガス魔法学校の寮に行ってから、もう一か月。その間、君はボーっとしてたり、そわそわしていることが多かったからね

エルトロッテ:だって、マリエルはまだ13歳なのに!それなのにもう住み込みで、一人暮らしなんて!

真一:一人暮らしじゃなくて寮で生活するんだけどね。魔法学校は浮遊大陸の上にあるから、家から通うのは難しいって

エルトロッテ:分かってます。分かってるんですけど、でも、もしかしたら一人で心細いんじゃないか、寂しい思いをしてるんじゃないかって思うと、気になって気になって
勉強はついていけてるでしょうか。お友達はできたでしょうか。もしかしたら一人になって寂しい思いしてたり…そんな事ばかり頭の中でぐるぐるして

真一:心配性だなあ

エルトロッテ:だって!真一さんは心配じゃないんですか?

真一:心配だよ。でも考えてても仕方がない。そうだ、メールしてみたらいいんじゃないか?

エルトロッテ:してみました。でも

真一:でも?

エルトロッテ:これ、見てください

真一:どれどれ。あれ、君、メール文に拝啓って入れるのかい?三通目には敬具も入れてる

エルトロッテ:それは、なんていうか緊張しちゃって

真一:どうして?マリエルにメールするのは初めてじゃないだろう?

エルトロッテ:だって、それまではお野菜買ってきて、とか、いつ帰るの、とかだったので、こういうお手紙みたいな文は初めてというか、入れないと失礼なのかなーって

真一:なるほど。エルはけっこう長い文を送っているね。で、マリエルの方は

エルトロッテ:ご覧の通りです…

真一:なんというか、淡白というか。まあ、あの年頃の子ならこんなものじゃないかな

エルトロッテ:でも、肝心のマリエルの生活の様子が伝わってきません

真一:確かにね。電話してみたら?

エルトロッテ:でも、もし勉強の邪魔をしてしまったら…

真一:心配性だなあ

エルトロッテ:それは、うう、はい、その通りです。どうせ、どうせ私なんて、私の気持ちなんて…
…マリエル…早くまた、会える日が来ないですかね…

真一:うーん、これは重症だな…そうだ!

エルトロッテ:え?

▼数日後 自宅

エルトロッテ:ただいまです…

真一:おかえり、どうだった?

エルトロッテ:う…

真一:だめ、だったかな

エルトロッテ:ごめんなさい…

真一:気を紛らわせるために、習い事でもどうかと思ったんだけど。効果なかったみたいだね、書道教室

エルトロッテ:うう、墨をこぼすは、筆を落とすは、紙を破るはで…とても皆さんにご迷惑をかけてしまいました

真一:集中できなかったかな?

エルトロッテ:いや、あの、真一さんの提案はとてもいいと思うんです!でも、その、やっぱり

真一:マリエルの事が頭から離れない?

エルトロッテ:はい…まあ、落ち込んでてもしょうがないですよね!私、今からご飯作っちゃいますから!今夜はマリエルの事を忘れて、腕によりをかけちゃいますよ!

真一:忘れられる?マリエルの事

エルトロッテ:はい、もちろん!

真一:そっちは台所じゃなくてトイレだよ?

エルトロッテ:はっ…!いけないいけない。い、いや、先にトイレットペーパーを補充しておこうかなと

真一:それはキッチンペーパーだと思うけど

エルトロッテ:はあっ!私ったら、私ったら…どうしてこう…

真一:はは。まあ、あわてんぼうな所も可愛いけどね

エルトロッテ:はあ…私って、ダメな母親ですね…

真一:どうしたの急に

エルトロッテ:だって、こういう時、母親ならドンと構えているものじゃないですか?それが私ときたらマリエルの心配ばかりで、ドジばかりで、全然頼りなくて
こんな姿、マリエルが見たら失望されちゃいますよね…

真一:そんな事ないよ。マリエルが心配なのは、君がマリエルを本当に愛しているから、だろう?

エルトロッテ:世の中の母親たちは、子供をどうやって送り出してるんでしょうね…。どんな、気持ちで、耐えられているのでしょうね…

真一:それは、んー、他と比べることではないと思うけれど

エルトロッテ:はあ…マリエル…

真一:うーん、他にいい案はないかなあ…

エルトロッテ:こうなったら…!

真一:え?どうしたの?どこ行くの?

▼エルトロッテの部屋

エルトロッテ:こうなったら、私の部屋にある秘密道具で…!

真一:秘密道具?

エルトロッテ:よいしょ…こ、これです!この、魔法の丸鏡!

真一:これは、結構大きな鏡だね。これは何に使うんだい?

エルトロッテ:のぞき見です

真一:え?

エルトロッテ:空間を司る精霊にお願いして、遠くの景色や風景、人々の様子を、鏡に映す魔法道具です
これを使って、マリエルの魔法学校の様子を見せてもらうんです!

真一:ちょ、ちょっとそれは

エルトロッテ:無論、メイガス魔法学校も無策ではありません。こういう魔法に対しての防壁を張っているはずです。
しかし!今の私ならできる!万年落ちこぼれだった私だって、マリエルのためなら!例え火の中水の中!

真一:まって、まってエル!

エルトロッテ:集中…集中…!マリエル、今、扉を開きます!さあ、あなたの姿を見せてください!

真一:エル、お願いだ、僕の話を聞いて!

エルトロッテ:さあ、いきます!はあああぁ…円を描き、空間の聖霊、頼みます、私の願いを…

真一:エルトロッテ!

エルトロッテ:はっ!

真一:その方法は、だめだ!それは、マリエルの事を無視しすぎている!

エルトロッテ:無視…?

真一:それじゃストーカーとおんなじだよ!

エルトロッテ:なっ!ストーカー…!?

真一:それは、マリエルの事を信用していないと言っているのと同じ事だよ!さあ、その鏡から手を離すんだ

エルトロッテ:真一さん…わかりました…

真一:ふう。ごめんね、強い言い方して

エルトロッテ:いえ…私が悪いんです、その、えっと…

真一:うん、どうしたの?

エルトロッテ:今は、一人にさせてもらってもいいですか…?

真一:…分かった。夕飯は僕が作っておくから、ゆっくりしておくといいよ

エルトロッテ:…真一さん、ありがとう。止めてくれて

真一:いえいえ。今晩はエルの好きな野菜カレーにしよう。楽しみに待っていて

エルトロッテ:…。……。…マリエル。私はダメなお母さんですね。一緒にマリエルといた毎日がとても切なく胸の中に居続けて、はち切れそうです。こういう気持ちって、なんて言うんでしょうね…
…マリエルに、会いたいなあ…

▼リビング

真一:うーん、エル、相当まいってるみたいだな。ここはひとつ、おいしいカレーでもご馳走して
…いや、そうじゃない。エルを元気にさせる事ができるのは、やっぱり、あの子しかいないよなあ…
はあ。家には僕だっているのになあ。妬けちゃうなあ。まあ、自分の娘に妬いてもしょうがないけど
えーっと。魔法学校の電話許可時間は、うん、今は大丈夫だな。よっと。えー、ゼロ、ゼロ、ゼロ…。
あ、すみません、原マリエルの父の真一と申しますが、トール=リトル・クラスの、娘の原マリエルにお願いします

マリエル:おとうさん!

真一:おお、マリエル!一か月ぶり!

マリエル:うん!一か月ぶり!久しぶり!

真一:元気だった?

マリエル:うん、元気!

真一:そうかー。授業はどうだ?付いていけてるかい?

マリエル:う、うん。まあまあ、かなー。

真一:ははは。さすが名門の魔法学校。レベルが高いみたいだね

マリエル:ううう…勉強、今まで学校で習った事と全然違ってて、難しい。

真一:うん、確かエルの話だと、普段の常識が通用しない内容だって言ってたね

マリエル:精霊や昔の魔法使いの歴史とか、魔術のパスを開くための瞑想とか。意味わかんない。でも

真一:がんばる、でしょ?

マリエル:うん!

真一:はは、懸命だなあ

マリエル:あれ?そういえばお母さんは?

真一:ん?

マリエル:先に電話してくるの、お母さんだと思ってた

真一:ああ、お母さんはマリエル大好きだからね

マリエル:うん…もしかして、お母さんさ…

真一:マリエルに愛想を尽かした、なんて事はないよ

マリエル:なんで分かったの!?

真一:それは、君達は親子だから、かな

マリエル:どういう事?

真一:そうだね、お母さんは今、とってもマリエルの事を恋しく思っている。だから、もしかしたら、マリエルも同じように、お母さんの事を考えてるんじゃないかって
二人は、似たもの同士って事

マリエル:そ、そんなには考えてないよ!ただ、お母さんから電話、こないなーって。そのくらい

真一:はは。まあ、そういう事にしようか。で、今回はマリエルに相談があって電話したんだ。

マリエル:相談?

真一:うん、実は今、お母さん、マリエルの事を心配しすぎて困ってるんだ

マリエル:心配しすぎて?なにそれ?

真一:マリエルの事が好きすぎて、家事が手につかなくなってるって感じかな

マリエル:えええ?

真一:だから、マリエル。マリエルが時間ある時でいい。お母さんに電話してやってくれないかな。それで、擦り合わせをしてほしい。

マリエル:擦り合わせ?なにを?

真一:今のマリエルと、お母さんの頭の中のマリエルと

マリエル:うーん?

真一:多分、今、お母さんの頭の中のマリエルは、なんというか、輪郭がぼやけているというか…ともかく、不安になるような姿をしていると思うんだ
だから、学校やそれ以外のマリエルの様子を、こんな事してるよ、とか、こんな事がんばってるよ、とか、教えて、マリエルの姿を明確なものにしてほしいんだよ

マリエル:輪郭…?明確…?

真一:ごめん、難しく言っちゃったけど、要は普段のマリエルの事を教えて、お母さんを安心させてほしいって事

マリエル:なるほど!わかったような、わからないような?とにかく、お母さんと電話で話せばいいんだよね?

真一:そういう事。頼めるかな?

マリエル:しょうがないなー。お母さんのためだし、電話するよ!

真一:ありがとう。もしかして、情けないお母さんとか、思った?

マリエル:ふふ、そう思うと思う?

真一:はは、確かに。マリエルはお母さん大好きだもんね

マリエル:うん!だって私、お母さんみたいな魔法使いになるんだもん!

▼数日後 リビング

エルトロッテ:……もきゅ…もきゅ…

真一:エル

エルトロッテ:…もきゅ…あ、はい…?

真一:フォークでクリームシチューは食べづらいと思うんだけど

エルトロッテ:…あ、ああ…そうですね…もきゅ、もきゅ…

真一:なんだか日に日に暗くなってきてるな。あれから3日か。そろそろ来ると思うんだけど

――リビングの置き電話が鳴る

エルトロッテ:電話…?

真一:噂をすれば、じゃないけど。鳴ってるね。出てくれないか、エル?

エルトロッテ:私が、ですか?

真一:ああ。ぼくは食べるのに忙しいから。頼むよ

エルトロッテ:はあ…まあ、いいですけど…。よいしょ。はい、原です

マリエル:お母さん!

エルトロッテ:っ!ま、マリエル…!

マリエル:そうだよ、マリエルだよ!久しぶりだね!1か月ぶりなのかな?元気だった?

エルトロッテ:はい…はい…!元気、元気でした!

マリエル:ホントーかなー?最初の声は元気なさそうだったけど?

エルトロッテ:そんな、そんなことはありません!とっても元気ハツラツでしたよ!

マリエル:えへへ、そっか~

エルトロッテ:ん?なにか可笑しかったですか?

マリエル:うん、なんか久しぶりにお母さんの声聞いたら、嬉しくなっちゃって

エルトロッテ:マリエル…!マリエル、その…私は、マリエルに…!

マリエル:お母さん!

エルトロッテ:はい!?

マリエル:学校で入学実力テストがあってね!全リトル・クラス31位だった!

エルトロッテ:え…

マリエル:リトル・クラス全員で90人くらいだから、それなりに上の方でしょ?

エルトロッテ:は、はい…すごいです

マリエル:それとね、友達もできたんだ!プライ=マリーっていう、同じクラスの女の子なんだよ!

エルトロッテ:そうなんですか…

マリエル:毎日、予習とか復習とかしたりして、結構頑張ってるんだー。でも、学校の中はあんまり慣れないなー。いまだに迷子になっちゃう

エルトロッテ:あら…

マリエル:それに、最優秀者に与えられるっていうメイガスの杖っていうのがあるでしょ?私、あれを貰って、家に持ち帰りたいって思ってるんだよね

エルトロッテ:メイガスの杖…

マリエル:だって、それを持ってお母さんみたいな魔法使いになったら、お母さんがすごい魔法使いなんだって、思われるでしょ?

エルトロッテ:…!

マリエル:ただ、それを貰うには今以上に頑張らなきゃいけない。なんだか不安になるっていうか、今の勉強やり方が合ってるのかな、とか色々考えちゃって

エルトロッテ:…そうですか

マリエル:お母さん、私、魔法使いになれるかなあ…

エルトロッテ:…大丈夫ですよ

マリエル:え?

エルトロッテ:あなたの、願いは、ちゃんと、叶いますよ

マリエル:…お母さん

エルトロッテ:だって、私の子供ですから。マリエルがやってる事は正しい。自信をもって言えます!だから、どっしり構えて、勉強しちゃってください!

マリエル:…うん!分かった!ありがとうお母さん!私がんばるね!

エルトロッテ:はい!頑張ってください!

マリエル:今日は突然電話してごめんね!お母さんの声聞けて嬉しかった!また電話するね!またね!

エルトロッテ:はい!またね、マリエル

――電話を切り、佇むエルトロッテ

エルトロッテ:…ふう…
…………
…ふ…ふあ…ひっぐ…

真一:エル

エルトロッテ:…あ、あれ…?私、なんで泣いているのでしょう…おかしいですね、おかしいですね…
でも、なんだか、心の中に隙間風が吹いてるみたいで、とても寂しくて、苦しくて、でも、後悔とかじゃなくって

真一:エル

エルトロッテ:おかしいですね、おかしいですね…

真一:それは、エルが今、乗り越えたからじゃないかな

エルトロッテ:乗り越えた…?

真一:マリエルの事をさ

エルトロッテ:…っ、真一さん…!

真一:エル、よくがんばったね

エルトロッテ:私、言いたかった!マリエルに会いたいって言いたかったのに!でも、言っちゃ、いけない気がして、言えなくて!

真一:そうだね

エルトロッテ:マリエルの邪魔になっちゃいけないって、私が甘えちゃいけないんだって、言い聞かせて、言い聞かせて…!

真一:うん

エルトロッテ:真一さん…!乗り越えるって、こんなに胸が苦しくて、寂しくて、辛くて…でも、誇らしくて…!

真一:そうだね。エル、今は、思いっきり泣いていいから

エルトロッテ:はい、はい…!マリエル、大好きです!マリエル…!うわああん…!
うわああああん!うわあああああん…!

真一:(M)その日、エルは一晩中、涙を流し続けた
彼女は乗り越えたのだ。また以前のような元気な姿を見せてくれるだろう
と、思ってたんだけど

エルトロッテ:…ぼーーーー…

真一:エル

エルトロッテ:…ぼーーーーーーーー…

真一:エル、掃除機が逆さまだよ。ゴミを吸う所が上になっちゃってる

エルトロッテ:へ?あ、ああ!

真一:やれやれ、また考え事かい?

エルトロッテ:はあ…実は

真一:実は?

エルトロッテ:マリエルが言ってたんです。お友達ができたって。プライ=マリーって名前だそうで

真一:へえ

エルトロッテ:それって、ガールフレンドって意味なのでしょうか?

真一:へ?

エルトロッテ:もしかして、こここ恋人になる人って事じゃないですよね?

真一:それは…考えすぎでは

エルトロッテ:どどど、どうしましょう!あ、挨拶とか、どうすればいいんでしょう?服とか、お出しするお菓子とかどうすればいいんでしょう!

真一:そんな先の話、今練らなくても

エルトロッテ:あわわわわ、あわわわわ!マリエル、私、恥ずかしくない母親になるため頑張りますからね!あわわ、わわわわ

真一:やれやれ…

真一:(M)人はすぐに変わることは難しいらしい。
まあ、もしエルがまた折れかけたら、僕かマリエルが支えればいい。
エルがマリエルと、ついでに僕も支えてもらって、僕がエルを支えて、そしてマリエルの事も支えて
そして出来上がるのは、魔法使いの家族の、三角

(終わり)
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