花百物語-14 彼岸花
3年前の今日、電車とバスを乗り継いで巾着田へ行った。
木陰の下に彼岸花が咲いている。群れて咲いている。
花言葉を引くと、いい意味のものは少ない。
「悲しい記憶」「孤立」「挫折」色から由来するのか、「情熱」というのもある。
彼岸に咲くのだから故人を惜しんでつけられたのだろう。
仏花のひとつで、天上に咲く花だそうだ。
人の波を避けつつ、ささやかな園内を歩き回った。その後周辺を歩き回り、『小さな美術館』という看板を見つけた。
食事も摂らず、目的地としていた場所にも行けずにいたため中に入る余力がなく、次回となった。
しかし仕事とコロナ禍もあり、その日以降行っていない。
数日前、街路樹の植え込みにその姿を見つけた。ひとりで咲くには寂しく、切ないがそんな人間を他所にシャン、と咲いている。
しかし、今までそこに彼岸花なんて咲かなかったはずだが...
飛び梅のように飛んできたか?
急ぎ足で過ぎって行ったそこを再び通ると、そこにはもう彼岸花の姿は無かった。