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「100日後に死ぬワニ」の‘余韻’をぶち壊された論争

Twitterを始めとするSNSで連日話題となっていた「100日後に死ぬワニ」。私も3日目あたりから追いかけ、約3ヶ月程毎日楽しみにしていた。山なし落ちなし、だけど意味がある四コマだった。

ワニくんの日常は、おおよその人が20代前後に経験する日常だと思う。友達とゲームをしたり、バイト先の先輩に恋をしたり、夜中に集まってラーメン食べに行ったり、就職していく友達に置いていかれた気分になったり―

99日間を通して、誰もが経験したであろう日常を切り取っていく。
しかし、100日目にその命は失われることだけを告知して。


私たち読者はDEATHNOTEで言う「死神の目」を持っているので、ワニくんの日常にもどかしさや切なさすら感じた。

私たちの人生のコマ割りの外には確実にその日が書かれている。その日は50年後か30年後か、ずーっと先の未来だと思っているか、それは100日後かもしれないし、明日かもしれない。

そして、満を持して100日目を迎えた。いつもの19時更新から20分ほど時間を空けて、最後の1話がアップされた。

恐らく死因は交通事故かなと思っていた(作中横断歩道の描写が多かったことと、余命や持病がない様子だったので)。あと、前日に書籍化というフライング情報もあり、まさか「続きはwebで」ならぬ「続きは書面で」になるのか?!とも思ったりした。

しかし、13コマを使い、明示こそしないものの、小鳥を助けるワニくんの半身が映り込み、桜吹雪が舞い散る風景で幕を閉じた。

oh、ブラボー!とスタオベ不可避なまでの有終の美である。死をとり扱ってるだけに声を大にして祝えないのだが、一つの作品として大変素晴らしくまとまっている。

瞬く間に拡散されていき、いいねに至っては180万もの数値になっている。ここまでバズったツイートは今までみたことがない。それだけ、皆、100日間を通してワニくんの動向をきにかけていたわけだ。View数はもっと異常な数値だろう。


さて、本題だが、最終話がツイートされてから1時間半後に「書籍化、映画化、グッズ化」が発表された。

映画化は少し意外だったが、それ以外の2つはさして当然のことのように思う。SNSのコンテンツが本になるのは今やごく当たり前だし、グッズ化も同じくだ。

しかし、ネット上では「せっかく余韻に浸っていたのに台無し」とか「結局金儲けか」という声が噴出していた。


「はぁ?」って感じである。


大好きな雑誌掲載作品がなかなか単行本化に収録されなくて手元に残しておけなかったり、大好きなアニメが最終回を迎えてから二期や映画の告知もないまま数年がたってしまったりしたことがないのかね、君たちは。

もう少し時間を空ければという声もあるが、とにかくView数を稼ぐなら今日がベストだし、万が一明日以降19時に更新してみろ、それこそ意味がないのだ。明日から今まで続いた定期更新は無くなるんだ。なぜなら、ワニくんは死んだのだから。

ピクサー作品の『リメンバー・ミー』の台詞の中に「人には2度死ぬ。一度目は、肉体的な死。そして、二度目は忘却による死だ。」というのがある。

今日ワニくんは肉体的に死んだ。やがて忘却によって死ぬだろう。しかし、彼が生きた証がこれからメディアミックスによって、また語り継がれるのである。

それのどこにイヤらしさがあるのだろう。

また、金儲けという指摘にも疑問だ。これだけのコンテンツなのだから、あらゆる形で評価されて然るべきである。きくち氏が儲けるのが嫌なら買わなければいいし、買った上で金額に見合わなければ文句を言ってもいい。

また、作中に明らかに儲け目的の#prがあったり、作者の意図しない改変が加えられていたとしたら、それも非難してもいい。

そのどれでもなかったではないか。

まったく不思議な論調である。
慈善事業と称して、貧しい国へ耕運機だけを送り付けて、維持管理やその使い方を教えることもしないまま、錆びて朽ち果てるのと同じではないか。

その環境で、安定的な収入を得て、持続可能な豊かな生活を送ることこそが支援ではないのか。そこには、必ず経済活動が発生するだろう。とりわけ、こういったデザインや作品に関する価値を安く見積もりすぎている。

いいではないか!存分に儲けていただいて!

私はまたきくち氏が新たな100日間を紡いでくれたら嬉しい。また、Twitterからこういった作品が生まれたら嬉しい。

乱文散文になってしまったが、とにかくこの「100日後に死ぬワニ」は面白かった。そして大変、意義のある作品だった。

きくちゆうき氏お疲れ様でした。そしてありがとうございました。


※映画化、山田孝之が実写化するとかだったら、またおかしなことになりそうだなとか思ったりした。

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