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トッププロの七対子読み

Case1 近藤(久)プロのリーチ

 Mトーナメント2023第2試合。坂本選手が南を止めて二万を切った場面です。高目がタンヤオの手牌なので南を打つ人が多いかと思います。見事な放銃回避でした。試合後のインタビューでは「近藤選手は七対子っぽいし、南家の寿人選手にはシャンポンがあるので南を切る選択はなかった」と語っています。なぜ七対子を警戒したのか?ポイントは近藤選手の四筒三筒落としと、直後に通った五筒です。

 「両面ターツ払いに二度受けあり」と言います。良いターツである四筒三筒を払っている理由として、A図やB図のように二五八筒が二度受けだったというケースがよくあります。しかし、場に八筒が2枚飛びなのでB図はなさそうです。A図だとしても、本命である五筒が通りました。そのうえ三筒が3枚見えていますから、A図のように三三四四筒と持っていた可能性がかなり低くなっています。そうなると両面ターツが全く不要な手、七対子が浮かび上がってくるのです。

 三筒が4枚見えて、かつ残っている筋は三六万と三六索と六九筒だけ。この巡目まで来ると、近藤選手のリーチは「七対子っぽい」から「七対子が本線」ぐらいまで疑わしくなってきますね。

Case2 鈴木(優)プロのリーチ

 今度は麻雀日本シリーズ2023の第2節から。2件リーチを受けて、前田プロの選択。四索をチーすれば形式テンパイを取れますが、五筒は優プロに、五索は楢原プロに通っていません。形式テンパイを取るべきでしょうか?

 この局面でも、先程と同じ考え方で優プロのリーチは七対子読みができます。優プロは六七索と五六万どちらも手から切っていますが六万が4枚見えているので五五六六から外したケースが否定されています。さらに1万も通って五八索も通っています。四筒も4枚見えていて、もう面子手ではなく七対子濃厚と考えて良さそうです。

 したがってここは五筒を勝負。優プロの待ちは地獄の發単騎でした。「鋼鉄の岩」の通り名を持つ守備型の前田プロですが、「面子手ならここしかない」という残り筋1本の五筒を通し切るところに雀力の高さを感じさせます。

Case3 勝又プロのリーチ

 次はMリーグ2022-2023シーズン、ファイナルで白鳥選手の選択を取り上げます。最後の手番で五筒を切ればテンパイ。通っていない筋は五八筒と六九筒しか残っていませんが、五筒を切ってテンパイを取りました!

 ここでのポイントは宣言牌の二万です。場をよく見ると二万と三万と四万が全て4枚見えています。もし完全な不要牌であれば、全員に通っていない二万よりも二筒を手牌に持ちそうです。それでは、勝又選手はどのような形で二万を持っていいたのでしょうか?そう考えると

 あるとすれば一一二万でしょうか。しかし、勝又選手はリーチ後に一万をツモ切っており一万とXのシャンポン待ちが否定されています。

 Xが暗刻になって一万雀頭のリーチ、これが五八筒待ちになっているケースです。このパターンを完全に否定することはできませんが、そうでなければ「二万は重なり期待で残した牌、つまり七対子ではないか?」と推理することができます。白鳥選手は五筒を勝負できるくらいまで面子手の可能性は低くなっていると判断したのでしょう。超危険牌に見える五筒を切ってテンパイ料を得ることに成功しました。一見地味ですが、今シーズンのMリーグファイナル屈指のファインプレーだったと思います。

読み通り、軍師のリーチはチートイツだった

Case4 内川プロのリーチ

 最後に、Mリーグ2021-2022シーズンのセミファイナルから。魚谷さんがハイテイで無筋の六万を押し切った場面。内川選手の捨て牌で光っているのは七筒、六筒です。どちらも手出しというのがポイントで、ドラが八筒なので通常なら外すことのないターツです。そして、やはりこの状況でも七筒が4枚見えていますから二度受けを嫌ったパターンは否定されています。となると七対子でしょうか。

 ところがこのリーチには七対子を否定する材料が1つあります。内川プロのリーチ宣言牌は中、これは場に3枚切れの牌です。七対子なら残すはずのない牌・・・面子手もあるのか?

 ここで思考を停止してしまうと六万は通せません。さらに注意深く捨て牌を見ると、中が枯れた直後に内川プロがツモ切っているのは2枚切れで自分が切っている七筒と一万、どちらも七対子で残すにはとても弱い牌です。したがって、「中と入れ替えられるツモが来なかったので安全牌として中を残したのではないか?やはりリーチは七対子だ」と読んでハイテイで六万プッシュ。読みの力はもちろん、ハートの強さがなければなかなか切れない牌だったと思います。

「リーチはドラ単騎が本線だと思った」と試合後のコメント

 高度な読みのポイントとなるのは捨て牌の違和感と4枚切れの数牌。しかし、大きな舞台であればあるほど、七対子ではないかと思ったとしても「もし面子手だったらひどい放銃になる」と勝負しにくくなるのではないかと思います。今回取り上げた4局、いずれも実戦でそう簡単に切れるものではありません。最も大事なのは自分の読みを信じて打ち切る、精神力なのかもしれません。


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